今日の帰りの長~い乗車中(台風15号)に読んだけど,やきもきしてて細かいとこはちゃんと追えなかった…。「バイオロギングサイエンス」の成果で古生物の常識を覆す!みたいな。
生物の生態を研究するのに,各種センサを搭載したデータロガーを個体に取り付けていろんなデータをとることが行なわれるらしい。最初は観察の難しい水生動物を調べる目的で,それが空飛ぶ動物にも有効になってきた。最新のは加速度センサもついてる。
しかし前フリが長く,なかなか翼竜の話にならないのはじれったい。まえがきでも断ってはいるが。二乗三乗の法則やそれが水生動物には成り立たないこと,ウミガメ,マンボウ,ヨーロッパヒメウ,オオミズナギドリなどで200ページを費やした後,いよいよ翼竜の話に。
空を飛ぶ動物は,大きくなればなるほど飛ぶのが難しくなる。重力と筋力の関係で。だから翼長10メートルもあるようなケツァルコアトルスみたいのは普通に考えて自力で飛ぶことはできないと結論する。一般に推定体重70キロとされているが,これは著者にとってあり得ない数値だからだ。
自力で飛べないなら,強風を受けて上昇すればいいかと思うとそうでもない。自由に離着陸できないようでは生き残れないと著者は言う。それならどうやって飛んだか?二つの可能性を挙げている。揚力と重力。
飛行するには揚力と重力が釣り合っていなければならない。揚力は空気の密度に比例するので,翼竜のいた時代の大気の密度が今より大きかったら重力にうちかつ十分な揚力が発生できたのではないか,という。もう一つは重力が昔は今より小さかったのでないか,というが,さすがにこちらは自分でもトンデモない説だと言っている。でも,大気密度にしたって,揚力だけでなく空気抵抗にも比例するんだから,抵抗が増えたぶん余分な推力が必要になるので,違うんじゃなかろうか。余計な筋力がいるよな…。
化石から翼長を推定するときに,現生のトリとか参考にしてるのが間違いのもとという話の方がしっくりくる。10メートルもなくて,もっと小さいと考えれば,推定体重が軽いのも案外納得いくのではないだろうか。
著者の研究遍歴が面白い。長らくウミガメ研究をしてきたそうだが,水産学科だったため,食べられないウミガメを研究するのに技巧的な説明が必要だったとか。「ウミガメが網にかかって死ぬような水産業ではダメ,持続可能な漁業を模索する為ウミガメ研究が必要」なんだって。
そのあと極地研に移るが,ウミガメはむしろ小笠原とか熱帯の海にいる。そこで「新装置をいきなり南極にもっていくのはマズイ。装置のテストにウミガメはもってこい。」という言い訳がいったとか。東大海洋研に移った今は,そういう心配がなくなったそうだ。