竹西寛子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昭和の短編集だったかな。その一篇に竹西寛子『人馬』があり、好みだったのでこちらを拝読。
さすがにすべて同著者だと好みがわかれる作品もありましたが好きな作品は以下のタイトルです。
『兵隊宿』
兵隊が戦地へ出兵する前の数日、その将校や兵隊に寝床を提供した宿の話。
その宿の子ども「ひさし」と「将校」が馬を通じて少し心を通わす。でも決して近付きすぎることはないような。戦時中、敵地へ赴く人間と残る人間の心の機微が伝わるような心持ちで染み入った。
『虚無僧』
ひさしは虚無僧が怖い。
歩いているのはまだまし、じっと立っている虚無僧と歩いていて急に立ち止まった虚無僧がとても怖いと思っているお話。
同級生2人と帰宅中、おもわず虚無僧のあとをつけることに。
そこでひさしは昔を思い出す。
朝早く家から出て行く者が居て、誰だかを確かめるべくあとを付けたことを思い出すが…。
得たいの知れないものに対する怯え。たとえばそれは「怪談・お化け・幽霊」だったり「暗闇」もそうか。人によっては自分の信じない「信仰」が恐怖対象になる。
ひさしがつかみどころのない、自身の心に湧く複雑な恐怖。
きっと自分に降りかかってくるものならそこまで難しい心境にはならないんだろう。ここにあるのは自分では解決できそうにない事象への恐怖、自分が必要とされないことへの恐怖、自分と違う世界を生きている者への恐怖がある。
『神馬』
とある島にある神社の入り口。厩舎に1頭だけ「じんめ→神馬」と、少女。
ある日、赤ら顔の中年男が自分の娘にせがまれるまま人参皿を買い神馬に与える。食べてる最中に「お廻り❕」と指示。左に廻る馬。他の客も二、三と人参を与え「お廻り❕」。
少女はそれをみて悲しくなる。
馬、人参はもういいもとばかり寝転んで休憩。
人集りがなくなり、一組の母子が見えて人参を与える。馬がまた廻る。
「お廻り」も発してないのに。
母子顔を見合わす。
少女、悲しいというわけでも怖いというわけでもなく、馬と一緒にいた時間のなかで、一番不仕合わせに感じているに気づく。人生の気重さ、後ろめたさ。それを感じるのはまだ先のこと。
長くなりそうなので3作くらいで。
全体的に悲哀を帯びた中に人の暖かみを感じる作風が好ましかったです。 -
Posted by ブクログ
筑摩書房 日本詩人選
竹西寛子 「 式子内親王 」
内親王の作品解説の本
内親王作品の特性を「透明な複雑さ」「静の中の動」「すべては 途中という時間感覚」「夢の歌人」という表現で示している。このイメージでよむと 歌の理解が進む
内親王の詩境の推移は、人生を幻と見ることから始まり、後白河院の死を契機に、微かに移りゆく自然から秩序を観るに至り、「夢の歌人」として、闇に誘われ 闇に親和する人間への悔いと怖れを 深い夜の夢に託した
見しことも見ぬ 行末もかりそめの枕に浮かぶ まぼろしの中
*まぼろし=幻影〜人生を幻と見た
*見てきた現実も、まだ見てない現実も、かりそめの枕に浮かぶ幻
*まぼろしの中のかりそめ=二重の間接法→非永続性、流動性を強める
*この世の事物の定めのなさ、運動の途中でしかない人生
浮雲を風にまかする 大空の行方も知らぬ果ぞ悲しき
*内親王が多用する「まかす」「行方も知らず」が同時に使われている
斧の柄の朽ちし昔は遠けれど ありしにもあらぬ世をもふるかな
*後白河院の死にちなむ歌
*ありしにもあらぬ世に生きる〜院と死別して 皇女として表明
山深み春とも知らぬ松の戸に絶え絶えかかる雪の玉水
*透明な複雑さがひろがり続ける
*「静中の動」としての玉水の動き*水(移りゆく自然)を見ることに徹すれば、世界の秩序を見ることができる
尋ぬべき道こそなけれ人知れず心は馴れて行き返れども
*心は馴れて行き返れども=自分一人の思いの行き返り
*道こそなけれ=逢う手段もないまま、一つの面影にひかれては戻る心
しづかなる暁ごとに見渡せばまだ深き夜の夢ぞ悲しき
*深き夜の夢=煩悩の夢、この世の迷い
はかなしや枕さだめぬ うたたねに ほのかにかよふ夢の通い路
*ほのかにかよふ=動の相(静かに動き続けている)
*うたたね=粗雑な目や耳なら気付かない微かな動き
暁のゆふつけ鳥ぞあはれなる長き眠りを思う枕に
*深き夜と静かな暁の対置
*闇に誘われ、闇に親和する人間への悔いと怖れを 深い夜の夢に託した
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竹西寛子 「 山川登美子 」 明治時代の女性歌人の評伝
人生の紆余曲折を歌に変換している感じ。著者は 山川登美子を 死と直接向き合っている挽歌歌人とし、式子内親王の系譜として位置づけている
人生の紆余曲折
*上流階級に生まれ、厳格な女学校に通ったお嬢様
*与謝野鉄幹、与謝野晶子との愛憎
*結婚、夫の死を経て 女子大入学
*父の怒りと 女子大退学
*父の死や自分の死と向き合う日々
父と死別後、数ヶ月で自身も亡くなったとのこと
辞世の歌は印象的
父君に召されていなむとこしへの春あたたかに蓬莱のしま
*辞世の歌
*亡き父と蓬莱の島で共生を願う
名言「求める人に容易に逢えないのも人生なら、偶然に近い好機から自分でも思いがけない自己開発に進むのも人生」
君は空にさらば磯回の潮とならむ月に干て往ぬ道もあるべき
*夫と死別した妻の悲しみ
*潮の満干は月の満ち欠けと共にある〜現身で会えないなら磯回の潮となって空への道を辿りたい
引用が多かった歌
あたらしくひらきましたる詩の道に君が名讃え死なむとぞ思う
帰り来む御魂と聞かば凍る夜の千夜も御墓の石いだかまし
鳥籠をしづ枝にかけて永き日を桃の花かずかぞへてぞ見る
待つにあらず待たぬにあらぬ夕かげに人の御車ただなつかしむ
今の我に世なく神なくほとけなし運命(さだめ)するどき斧ふるひ来よ
山うづめ雪ぞ降りくるかがり火を百千(ももち)執らせて御墓まもらむ