【感想・ネタバレ】管絃祭のレビュー

あらすじ

有紀子の同級生の夏子や直子は、「広島」で爆死した。夏子の妹は、4人の肉親を失う。皆、その後を耐えて生きる。沈潜し耐える時間――。事物は消滅して初めて、真の姿を開示するのではないか、と作者は小説の中で記す。夏の厳島神社の管絃祭で、箏を弾く白衣の人たちの姿は、戦争で消えた「広島」の者たちの甦りの如くに見え、死者たちの魂と響き合う。広島に生まれ育った作家が「広島体験」を描いた、第17回女流文学賞受賞作。

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Posted by ブクログ

タイトルは宮島で陰暦6月17日に行われる管弦祭からとられているが、それは小説の末尾にのみ現れ、それまでの回想の物語に対する鎮魂歌となっている。小説全体は有紀子を一応の主人公としつつも、彼女の周縁のさまざまな人々の戦中、戦後史が編年体風にではなく、自由な時間軸の中で語られてゆく。特に戦前、被曝前の広島の地名が限りない愛着のもとで語られるが、そこに共感できれば(たとえ広島の地を知らなくても)しみじみとした物語として受け止めることができるだろう。これというプロットがないのだが、そこがまたこの小説の価値なのだ。

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2013年10月10日

Posted by ブクログ

ずっと前から気になっていた作品。

選び抜かれたような日本語が心に響きます。
最後の章の幻想的な管絃祭の描写が悲しみを一層深くします。

大切な人と厳島神社、そして管絃祭を一緒に見に行こうと思います。

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2012年07月22日

Posted by ブクログ

淡々と綴られる人々のことばやしぐさの連続に心を打たれる。それがあるとき突然、不連続になることの苦しみ。簡単に不連続になる、というより、連続することを閉ざされた、止められた、といってよい。止められた恨み、止められたと思ったら、そうではなくて、続いていかされる生のなかで、生きろ、と無理強いされる苦しみ。「苦しみ」と書いてみるのは簡単だが、その心持ちがわかるためにどうしたらいいのだろうか。ただ毎日が何もなくすぎていくことの重みを考えよう。

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2011年09月26日

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