齋藤純一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ハーバーマスやアレントによって論じられた「公共性」の概念のもつ現代的な意義についてわかりやすく紹介するとともに、著者自身の立場から批判的に検討をくわえ、公共性のもつあらたな可能性を切り開こうと試みている本です。
著者は、ハーバーマスの公共性が言説の政治的なレヴェルに限定されていることを批判し、アレントの公共性の議論により高い評価を与えています。しかしアレントに対しても、フーコーが生権力の問題としてあつかった広大な領域を公共性の空間から切り離し、もっぱら行政権力に預けてしまったことは大きな問題をのこしていると指摘します。そのうえで、公共圏と親密圏がどのようにかさなりあっているのかという問題を提 -
Posted by ブクログ
「公共性」ついて、とても深く新鮮な考察がなされている良書であることは間違いない・・・ただ難解すぎる。
個人のアイデンティティが複数性(家族、会社、民族的共同体、国民国家etc)を帯びていること、そして、それぞれのアイデンティティの「間」が重要で、そこに「精神の生」が宿っているということ。ムムム。
もうちょっと噛み砕くと、家族の一員である自分、会社の社員である自分、日本人である自分、などなど「自分」を形作っているアイデンティティは複数の面を持っていて、例えば、どれかが重要になることはあっても、他が消滅することはない。
この複数のアイデンティティの「間」を移り動くことが、自分の生の真髄ということ -
Posted by ブクログ
ネタバレ《9章 国際社会における政治的責任》p197- by 押村高
「保護する責任(responsibility to protect)」の概念が示しているように、領土政府のみではなく国際社会もまた一国内の内部の人々(この場合は、抑圧を受け、虐殺を被るおそれのある人々)の「人間の安全保障」に政治的責任を負うという論理が、徐々に了解を得てきている。p199
ポッゲは現下の国際システム、とくに貿易の不公正なルール、先進国に有利な貿易構造、非対称な経済・外交交渉力が、貧困者や飢餓者の自己決定に対して危害にも等しい「制約」をもたらしている点に注目する。p203
ヤングの理論(社会的連接モデル(soci -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書の冒頭にもあるように「公共的空間とは、自らの行為と意見に対して応答が返される空間」である。端的にいえば周囲に無視されない空間のことであるが、これは必ずしも自分にとって心地良い空間を意味しない。何故なら自らの行為と意見を真っ向から批判される空間も広義においては公共的だからだ。
上記の観点から、本書は「孤独」を公共性の対義語として位置付ける傾向にあり、主にカント、アーレント、ハーバーマスを中心とした公共性論者の言説を取り上げながら公共性の概念を整理している。私は社会学者のことはよく分からないが、おそらくこの3者が簡潔にまとめられているというだけでも本書を読む価値があるのだろう。
本書での核と -
Posted by ブクログ
言葉の定義とか言い回しとかに慣れていないせいなのか、引用されている文章の翻訳のせいなのか分からないが、読みづらかった。
公共性は複数の位相、複数の参加者から成り立っており、その複数性は公共的空間において議論される物事が「より」普遍的妥当性を獲得することを担保する。更にその複数性を担保するためには排他的であってはならない、というのが本書の骨子であろうか。
最初に公共性を公的なもの(official)、全ての人々に関係する共通のもの(common)、誰に対しても開かれているもの(open)の三つに大別してくれたところはとても分かり易かったのだが・・・
もう少し深く公共性について知りたいのであ -
Posted by ブクログ
『思考のフロンティア』はシリーズものですが、本当におすすめですよ。ページにして100前後ですが、とても内容が濃い。タイトル通り、思考が触発されます。
いつもは気になった箇所を転載するのですが、その数なんと16箇所!!もあるので、今回は本を紹介するにとどめます。
内容としては、本当に簡単に言うと、ハンナ=アーレント、ハーバーマス、カント、フーコーなどの言葉を引きながら、「公共性」について今何が争点になっているかを整理したものです。
いやぁ〜久しぶりに「当たり」の本でした。やっぱし古典に当たらんとダメだなぁと痛感。また、3年間で自分が考えてきたことがいろいろ思い起こされてきて…さらには病気で