【感想・ネタバレ】講座 人権論の再定位4 人権の実現のレビュー

あらすじ

「人権」を根源的に問い直し、再構築へむけて編まれた『講座 人権論の再定位』第4巻。人権の実現はどのような問題に直面しているのか。そもそもいかなる権利が失われることが人間の生にとって致命的であるのか。実現され保障されるべき内容を批判的、具体的に明らかにする。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

《9章 国際社会における政治的責任》p197- by 押村高

「保護する責任(responsibility to protect)」の概念が示しているように、領土政府のみではなく国際社会もまた一国内の内部の人々(この場合は、抑圧を受け、虐殺を被るおそれのある人々)の「人間の安全保障」に政治的責任を負うという論理が、徐々に了解を得てきている。p199

ポッゲは現下の国際システム、とくに貿易の不公正なルール、先進国に有利な貿易構造、非対称な経済・外交交渉力が、貧困者や飢餓者の自己決定に対して危害にも等しい「制約」をもたらしている点に注目する。p203

ヤングの理論(社会的連接モデル(social connection model)に即して先進国市民の責任を論じれば、次のようになるだろう。
すなわち、先進国市民の消費・投資行動は、途上国の人権状況の悪化の充分条件を構成するわけではないが、途上国の弱者が自力で貧困や飢餓から抜け出せないような「構造的条件(structural condition)」をもたらし、支えてしまっているという意味で不正なのである。
参照:M. Young 'Global Challenge: War, Self-Determination, and Responsibility for Justice (Cambridge: Polity Press, 2007)

かつて各国家がウェストファリア体制の中にいて、ステイト・リベラリズムが全盛であった時代に、主権を保持し、自由で対等な行為主体とみなされた国家とその国民が果すべき明確な義務とは「無危害理論(no harm principle)」といわれるところの「他国を害してまで、自由を追求してはならない」の一点であった。
しかし、今日、実際上、個人でさえ国外にも影響を及ぼさずに行動することが不可能になったといってよいほど、人々は影響という意味で依存しあっている。
大気や海洋の汚染によって国外の人々の生活環境を悪化させる可能性はいうまでもなく、多国籍企業による生産拠点の海外移転、国際商社の貿易活動、国際金融資本の投資活動、買春目的の海外旅行を含めて、他国の人々の人権状況を悪化させる可能性のある活動は多い。p208

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2013年01月17日

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