川添節子のレビュー一覧
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大リーグの弱小チーム オークランド・アスレティックスを低予算でも統計を駆使することで割安なプレイヤーを集めることでプレーオフの常連にした『マネーボール』で有名になった野球データを分析したセイバーメトリクスPECOTAを開発。大統領予選について統計的に予測をしてWebサイトに発表した結果がほぼ的中したことでも有名。
著者は一時期、オンラインポーカーゲームにもかなり熱中していたらしい。第10章に詳しいが、カモがいると勝てる理論は納得。自分の経験でも、フリー麻雀で点5の東南では余裕を持って勝っていたけど、点10の東風では勝てなかった。この結果は、おそらくはカモがいるかどうかに依存していたんだと思う。カモは時間を掛けて楽しむのが目的なので東南に行き、腕に覚えがあってスリルやお金を求めていくと東風になる。そうなると余程でない限り場代分は確実に沈んでいく感じだった。
そのほかにも、選挙結果予測、天気予測、巨大地震予測、経済の統計的予測、プロスポーツ選手の成績予測、パンデミック発生予測、コンピュータによるチェス、ポーカーゲーム、金融市場予測、地球温暖化、テロ発生、についても統計や確立論をベースに分析していく。ノイズを取り除いて、シグナルを取り出していく。それは実に難しくて、時に人の直観に反していることもある。ベイズ理論についてもしっかりと理解しておくことが必要だし、アウトオブサンプルの影響にも意識を持つことが必要である。情報が多くなればばるほど予測の精度が上がるべきだが、実際には情報の扱いが正しくないことで、そうでないことも多い。予測の自己充足の効果だって甘く見ない方がよい。著者の論は、非常に理知的。最初の方に出てくるが、テレビに出てくるような人の予測は当たっていないことの方が多い、なぜならそれらの人は立場を持って発言をするからだと。だよね。
長いけど、面白い。いろんな意味で著者の性格があらわれているんだと思う。統計学の本がたくさん出ているがその中でもおすすめできる部類の本だと思う。 -
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■予測
A.予測する際は、もっと確率と不確実性を受け入れねばならない。この点において役立つのが、条件付き確率を導き出す「ベイズの定理」だ。1 つのアイデアを違う角度から考える必要性を理解し、検証する方法を得る手がかりとなる。
B.ある心理学者によれば、専門家は「ハリネズミ」と「キツネ」の2 つのグループに分類できる。
・ハリネズミ:大きな考えを信じ、社会には基本原則があると信じている。大胆な予測をするのでよくメディアに登場するが、予測する能力はキツネより劣る。
・キツネ:これといった原則を持たず、問題に向けて様々なアプローチを試みる。より良い予測を行うが、メディアにはなじまない。彼らは多くの問題は予測困難だという信念を持つため、自信なさ気に見えるからである。
C.学者の中には、積極的に表に出たがる人がいる。彼らは自信たっぷりにドラマチックな変化が起こると言いたがる。そうすれば注目される。つまり、ハリネズミのように大胆な予測をすれば、テレビに出やすくなるのだ。
D.キツネはテレビやビジネス、政治の世界になじまない。多くの問題は予測困難であり、不確実性には率直に向き合うべきだとする彼らの信念は、自信のなさと受け取られてしまうからだ。 -
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欲望することは、重力のようなもの
人の欲望の根源は真似ることにある。
それを解き明かした社会科学者ルネ・ジラールの入門書的な立ち位置にあるのが本書。
著者はシリコンバレーで起業家として活躍していた人で、まるでメンターと話しているような気分になる。
ジラールの模倣の理論によれば、人間は真似ることを通して他の人が欲しがるものと同じものを欲しがることを学ぶということ。それは文化や技術を生み出す原動力にもなってきたし、最終的には手に入らないものを追い求めてしまうという悲劇も生み出している。
本書はその欲望に打ち勝つことではなく、コントロールすることを説く。これに関して美しい喩えがあった。
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模倣の欲望は重力のようなもので、ただ存在する。
重力は常に作用している。
それは人によって絶え間ない痛みの原因となる。
体幹や背骨まわりの筋肉が発達していない人は、まっすぐに立てず、重力に抵抗するのは難しくなる。
同じ重力を経験して、月に行く方法を発見する人もいる。
>>>本書p17
アメリカが月に行けたのも、大統領が発した欲望を模倣した結果だ。大投資家のピーターティールはこのルネジラールの教え子の1人だという。欲望を学ぶことは、アメリカンドリーム的成功を学ぶことでもあるのではないか、と妄想が膨らむ一冊。
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ネタバレキャッチーなタイトルだけど、「あなたの給料は何によって決まるのか」の方が正確だね。
自分の職業が今の給料なのは、業界のスタンダードによるものだと思っていたけど。
間違ってはいないけど、最低賃金や労働組合の有無などがそこに反映されていたのは驚いたり。
(そしてここらへんは、マイケルサンデルの『実力も運のうち 能力主義は正義か?』に近いものがあるね。給与と能力がイコールになると誤解されることが、どれほど間違っていてどれほど危ういのか、というわけだ)
何かの本で、「経営者が避けなければならないのは従業員が不満を持つことではなく、不満を持った従業員が団結することだ」とあったけど、正鵠を射ていたわけだな。
ただ、筆者が語ったような解決方法(団結する=労働組合を作る)は実現可能性がだいぶ低くてなぁ。超富裕層はお金があるからこそ、ロビー活動などでそういったものを防げるわけで。お金がない人々は、そういった団結する余裕もない生活だから、まぁ机上の空論を感じてしまったな。
もちろん、将来的にそういった方向には進むべきなんだけどね。富める者がより富を得るのが資本主義の行き着く先な以上、どこかで政府が歯止めを利かすしかないんだよなぁ……。 -
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米国のブロードバンド回線料金は欧州などに比べてかなり高額らしい。米国が月額平均66米ドルなのに対して欧州の平均は35米ドル。
自由市場なはずの米国の各種サービス料金は、どんな業界でも高い。この理由を解き明かそうという一冊。
本書の主張としては、市場競争の減少と独占化の進行、勝者総取りの無形資産の影響拡大に原因があり、どちらも大企業によるロビイ活動や選挙資金提供の影響が大きいという。
米国での大企業ロビイ活動が特に熱心な業界は、IT、ヘルスケア、製造業、金融などであり、どれも高額所得企業ばかりだ。
反トラスト法が実質的に機能せず、新規参入障壁が高くなり費用の高止まりにつながっていそう。
こういうところに格差拡大の芽があるのかな。
平均利益成長率が低下傾向なのは、利益を設備投資や給与にまわさず、自社株買いにばかり投じているのも一因か。 -
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未来を予想するための理論としてペイズ定理というのがある。過去の情報に基づいて未来を予想する。しかし、過去の情報には、重要な情報であるシグナルと、誤情報であるノイズとがある。ノイズによってバイアスがかかり、誤った予想がなされてしまう。そこで、結果と照らし合わせて、確率論的に次の予想を行う。これを何度も繰り返すことで、より正確な予想が行えるようになる。これは、気象予想やチェスでは威力を発揮する。正確なフィードバックが得られ、コンピュータの力、特に生成AIの力を存分に発揮できるからだ。一方、地震や経済のように、システムが複雑で、予想が正しかったか否かの検証が難しい場合には、コンピュータでは対応出来ないという。兎に角、複雑な未来を予測するヒントが詰まった必読の書である。
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常に我々は何かを求めている。ただ、なぜその欲望を抱いているかを深く考えたことがない。欲望の大部分は、周りの模倣によって生じる。人間は模倣に長けた生物であり、無意識ながらモデルの影響を受けてしまっている。ただ、モデルという他人の欲望を真似ただけであるから、叶えてもそれほど幸福を感じることはできない。だからこそ、自分の本当に欲するものの傾向(可能性実現、前進、独特、中心になる、支配、完成、理解し表現する、協力、新しい学びを披露、開発、自分を認知させる、理想を経験、確立、探究、卓越、所有、改善、人の行動を変える、影響を与える、正しいことをする、立て直す、基準に達する、習得、難題に対処、組織する、打ち勝つ)を捉えることが大切。