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私たちが労働の対価として受けとる給料。では、その額は、あなたの市場価値の反映なのだろうか? 私たちはみずからの生産性と職種によって、給料の額は客観的に決まると考えがちだ。だが、果たしてそれは本当だろうか? ならば、弁護士のほうが教師より価値ある仕事なのか? 警官や大学教授、記者の仕事を公平な基準で正しく評価できるのだろうか? じつは、多くの人が「誰がいくらをなぜもらうのか」を知らないまま、神話にとらわれていると著者は述べる。本書は、アメリカの社会学者がさまざまな企業・業界の実態調査に基づき、常識への反論を試みる書である。給料を決定する4つの要因(「権力」「慣性」「模倣」「公平性」)を手がかりに広く信じられている誤解を解き、給料を上げるための方策と真に公平な賃金制度への道筋を示す。コロナ危機を踏まえた「エピローグ」を収録。
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給料を決める四つの要因(権力、模倣、慣性、公平性)
私たちの自意識や価値観は、多くの場合、賃金や給与に包まれている。だから、給与明細を人に見せるのに抵抗があるのだ。この世では1場合によってはあの世に行っても1給与の額が、深いところでその人の価値を表しているという考え方は、アメリカでは昔からあって、脈々と受け継がれてきた。だが、今こそそれに疑問を投げかけるべきだ。給与は、個人の成果や職業の特性によるものではなく、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンが言うように、「単純に需要と供給によるもの」であると同時に「社会的な力と政治的権力によるもの」であると定義しなおせば、自分の能力が足りないと嘆く必要も、自尊心を傷つけることも、幸運にもたくさんもらっている人が優越感を持ってうぬぼれることもなくなるだろう。
さらに重要なのは、給与を理解して、それが権力の力学に根ざすこと、労働者間の公平性の問題の原因となること、給与水準が私たちとその仕事につきまとっていること、そして給与を決定するときに企業が互いに模徴していることを認識することだ。そうすれば、現在の給与分布についていくつか根本的な疑問が生じるだろう。まず、上位層の桁外れの報酬である。大物経営者や一流の資産運用者は、いまや普通の人が10
0回生まれ変わっても使いきれないような金額を稼いでいる。怒りを高額所得者に向ける必要はない。向けるべきは、ごく一部の人に報い、大多数に報いない歪んだシステムだ。それから、必要不可々な仕事に一生怒命に取り組みながら、わずかな賃金しかもらっていない人が大勢いることへの疑問も生じるはずだ。最後に、世界でもっとも豊かな国で働いているにもかかわらず、この数十年待遇が改善されていないアメリカ人労働者は、問いかけずにいられなくなるだろう。なぜだ。なぜ給与が上がらないのか。早急に取り組もう。
私たちはそれを実現できる
Posted by ブクログ
どちらかと言うと「あなたの給料はなぜ安いのか」というタイトルの方がしっくりきます。賃金が決まる要素は、その労働者の生産性や市場価値だと思われがちですが、著者はそれを否定します。実際は、権力、慣性、模倣、公平性の四つの要素が大きく影響しているからです。そのほぼ全ての要素が、賃金格差を拡大する方向、貧しい人をより貧しくする方向に作用しています。本書はそのメカニズムと現状について、アメリカの多くの業界を実例として紹介しつつ解説してくれます。
みんなが給料の額を共有してると交渉材料になって給料が上がるというのが面白いです。だから会社は秘匿する。でも他人と比べることで幸福度が下がりそうな気もします…
生産性は多くの社員との関係や外部要因で社会的に決まるので、定義出来ないし測定できないというのは目から鱗です。言われてみればそうだよな、と。そこで安易に測定可能な指標を作って成果主義にすると、それだけを追求して非効率になり、さらに社員同士で足を引っ張り合うようになるというのもあるあるです。
その他、株主資本主義、労働組合の弱体化、派遣労働の増加など、給料を下げる方向性ばかりで読んでで暗い気持ちになります。
対抗策は、最低賃金アップと労働組合という、地味ですが地に足のついた提案でした。
結局は年功序列が一番マシな制度かも、というのも皮肉です。
Posted by ブクログ
アメリカの事例ではあるが、介護や小売、飲食、運輸などの業界が押し並べて給与が低いという現実は日本もあるのではないか。生活の基幹を担ってくれているのにも関わらず。
給与は属人的なものではなく、単に政治や社会的な指標である。しかし、当事者にとっては生活の掛かっている死活問題である。労働者の団結と、政府による制度改革が打開策になるのだな。あまり踏み込めない領域ではある。
給与について深く考えることがなかったしがないサラリーマンですが、公平性の原理は職場内でもろに感じている。でもやはり、労働者個人個人では昇給にはスキルや実績というものが反映されるのではないかと考える。マクロ的な論述だという理解で、その視点が開かれた意義は大きいと個人的な学び。
Posted by ブクログ
仕事の価値と、成果で賃金が決まると言うのは間違いだ。業界の横並びや、慣習で決まり、賃金は情報が開示されないから、労働者は選択肢が見えない不公平な状態だ。
最低賃金の大幅な引き上げと、労組の組織率の向上や経営への参画が必要である。
介護士や、保育士と言った規制職種であっても、レントがないどころか家族の維持すらできない社会は、成立不可能だ。自分が介護施設に入った時にどのような扱いを受けるのか、低賃金のままでは心許ない。
政治家は票欲しさに雇用維持を名目に中小企業の保護策ばかり打ち出すが、最低賃金でしか雇用を維持できない経営者を保護する必要があるのか疑問だ。
Posted by ブクログ
現代(2025)において、資本主義を是とする世界の機軸となり国や経済、そして個人に至るまでその多大な恩恵と負債を与えられている。新自由主義的(「個人の自由」と「市場原理」を最優先とする思想)は世界的に1970年代以降に潮流し、個人が経済を回していく時代となり、その思想主義は改変されながらも現代まで生き続けている。
さて、本著では、「賃金が高い=社会的に価値のある人」「賃金が低い=努力が足りない人」では無いと批判的主張をしている。その時の時代であり、経済であり、労使関係であり、運とも述べている。別に給与を他者に言う必要もないし、嫉妬やマウントをとっても仕方がない。時間の無駄である。賃金が低いには個人というよりその組織や会社の財務や経営思想の影響が大きい。違う見方をすると、売上が低い会社は信用がないかと言われると、答えは業界によるになる。
著者は「個人で努力すれば報われる」という新自由主義的な価値観の危うさを批判し、むしろ社会的・政治的な「仕組み」や「制度の選択」が、個々人の報酬や幸せに強く関係すると示唆しているが、別に社会主義や共産主義を推奨しているわけではない。資本主義を是とする経済社会の中での視点と向き合う姿勢を提案する本である。
本著の視点は、雇われ労働者も経営者も含まれる。労働者であれ、経営者であれ、お金を稼いだからといって選民的思想になってはいけない。その時の時代や運や社会情勢など複数の機会と運と努力が結んだ結果であり、完全な再現性はない。
本著では、お金を稼ぐことは悪とは言わない。が、同時にデメリットもあると示唆し提案し、賃金が低いのはあなたの能力のせいではないということを示唆する内容の本となる。成長し、行動し、失敗し、反省して、立ち上がり、汚泥を啜りながら前へ成長していくの繰り返しなのだ。
給与から紐解く、労働者や経営者から富裕層に至るまで様々な視点で思索を与える良書である。
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