オルテガ・イ・ガセットのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
原著1930年。
このあちこちでやたらと言及される本について、かつて読んだと思っていたが、所有はしていなかったのでこの岩波文庫の「新訳」を購入してみた。が、読んでみると、どうやら読んだことが無かったようだ。何故か読んだと思い込んでいただけらしい。
解説によると著者のオルテガは観念論的な哲学者のようで、社会学者でも歴史学者でもない。本書は本格的哲学のおもかげはなく、多分にエッセイ的な文明批評である。もともとスペインの新聞に連載された文章なので、こういう書き方になったのだろう。
ヨーロッパに台頭し街に溢れかえるようになった「大衆」について、自分だけは正しく、確実であると信じ込んでいて、遠い -
Posted by ブクログ
スペイン人の著者が、1930年代に、1920年代から30年代のヨーロッパ社会について論じた書。
訳者の要約がわかりやすい。
「…十九世紀は大衆人に恐るべき欲求とそれを満足させるためのあらゆる手段を与えたが、その結果現代の大衆人は過保護の『お坊ちゃん』と化し、自分を取り巻く高度で豊かな生の環境=文明を、あたかもそれが空気のような自然物であるかのように錯覚し、文明を生み出しそれを維持している稀有の才能に対する感謝の念を忘れるとともに、自分があたかも自足自律的人間であるかのように錯覚し、自分より優れた者の声に耳を貸さない不従順で自己閉塞的な人間と化してしまったのである。いうなれば、現代の大衆人は文明