矢川澄子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
好きなところは書ききれないけど、ささやかなところでいえば、ハイジが夢遊病になったためにフランクフルトから帰るとき、クララがハイジに白パンをたくさん持たせてあげたこと。そして後日、クララのおばあさんが「のみものも入用でしょうから」とコーヒーも送ったというクララからの手紙。
なんてことない書き方なのに、この部分を読んですごくコーヒーが飲みたくなった。
それはアルム山の人々にとってコーヒーや白パンが貴重で有り難いのがわかるからでもあるし、クララとハイジの優しさがよく伝わるからでもある。
そのコーヒーは、作中に登場するアルムのハムやチーズと同じぐらい食欲をそそるのだ。
アルムの風景の美しさはおそらく -
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ネタバレ長いこと積読してたけど読み始めたらびっくりするぐらい面白かった。魔術師名称ギルドに加入するための試験にはるばる山を越えてやってきた主人公アダムとしゃべれる犬のモプシー。しかし魔術師名称ギルドは魔術師とは名ばかりの手品師が所属するギルド。ほんものの魔法が使えるアダムはその予選で行った演技について周りからトリックを教えて欲しいと詰め寄られたり(ほんものの魔法なのでタネも何もない)、黒魔術師!危険!と狙われたり…というストーリー。アダムからしたら魔法は当たり前のもので、オタマジャクシがカエルになること、種が木に育つこと、私達が目を閉じて頭で想像すれば楽しかった場所や過去、未来へ一瞬で行けることも魔法
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Posted by ブクログ
昔々読んで、ものすごく影響を受けた作品。再販されたとの情報に喜び勇んで再読した。
盲点を突かれたようなすてきな設定で、ワクワクするというよりはハラハラする展開で、気がつくと主人公たちを心から応援している自分がいる。主人公が語る「ほんものの魔法」がとても魅力的で、若い頃に読んだのと同じように心を持っていかれた。
優しい語り口で美しく理想を描き出してくれるけれど、一方で現実に対する風刺も鋭く、自分自身がどちらかと言えば敵役や俗物の部類ではないかと思うと、読んでいてつらくなる。そういう点では、ドジな魔法使いの若者の存在が、一番僕にとっては身近で、ラストにほっとさせられ、もう一度旅に出ようと思わせ -
Posted by ブクログ
ネタバレ魔法の都とよばれる都市マジェイアにストレーン山脈を越えてグリモアからアダムという青年がやってきます。
アダムはマジェイアの手品師や奇術師が加入する魔術師名匠組合に加入する試験を受けるつもりでした。
百人の魔術師が受けて合格するのは3名のみ。
そこでアダムはマジェイアの市長にして魔術師の統領のロベールの娘で11歳のジェインと知り合い仲良くなります。
ロベールは息子のピーターを後継ぎにしようと可愛がりジェインのことは放っておいていました。
そしてアダムは無二無双ニニアンという下手くそな魔術師を助けてやります。
その時の魔術があまりにも鮮やかでロベールはアダムに手品の種を教えて欲しいと言い出します -
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Posted by ブクログ
アルムに滞在するうち、クララは健康になり、ついに歩けるようになる。このあたりの過程は、アニメより説得力がありそうだ。
(とはいえアニメ版の「クララのいくじなし!」という言葉は、記憶に残る名せりふ)
話は収束に向かっていて、クライマックスはやはり上巻にあったように思う。
今気づいたが、「お金持ちの病弱な子どもが、友だちと環境に恵まれて歩けるようになる」「そのことはお父さんには内緒」「お父さんは、前触れもなく旅先から帰ってくる」「子どもが歩くのを見て、びっくり!」という流れ、『秘密の花園』と同じである。だからといってどちらの評価も下げるものではないが、当時の流行だったのだろうか、などと考えてしまう