好きなところは書ききれないけど、ささやかなところでいえば、ハイジが夢遊病になったためにフランクフルトから帰るとき、クララがハイジに白パンをたくさん持たせてあげたこと。そして後日、クララのおばあさんが「のみものも入用でしょうから」とコーヒーも送ったというクララからの手紙。
なんてことない書き方なのに、
...続きを読むこの部分を読んですごくコーヒーが飲みたくなった。
それはアルム山の人々にとってコーヒーや白パンが貴重で有り難いのがわかるからでもあるし、クララとハイジの優しさがよく伝わるからでもある。
そのコーヒーは、作中に登場するアルムのハムやチーズと同じぐらい食欲をそそるのだ。
アルムの風景の美しさはおそらくグーグルアースで旅するよりずっと、作中の文章のほうがより深く味わえるし、その美しいアルム山で食べるソーセージやチーズがいかに美味しいかということはハイジたちのセリフを通じて、念入りに書かれている。
それなのにさらっと書かれた「コーヒーも送りましたから」というおばあさんの言伝が、それに匹敵する芳しさなのだ。
作者のシュピーリがいかに天使の心の持ち主だったかがわかる、今の時代にぜひとも読みたいお話。