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天明三年春。 家族と穏やかに過ごしていた磐音は、関前藩の江戸留守居役兼用人・中居半蔵から呼び出しを受ける。 藩の物産事業は、新造船が就航、長崎から異国の品を買い付けるなど、軌道に乗りつつある、しかし、その利益を横領しようとする不穏な動きがあり、なんと磐音の父で国家老の正睦が疑われている、というのだ。 釈然とせぬままに、探索に手を貸すことになった磐音の前に、思いもかけない人物が現れて……。
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Posted by ブクログ
「居眠り磐音」40巻は、おめでたにて開幕です。 天明3年(1783)の春、磐音とおこんの間に2人目の子が誕生。女の子で、睦月ちゃんと名付けました(そういえば1人目の男子空也が生まれたのも正月でした)。年の瀬には、南町奉行所定廻り同心木下一郎太と瀬上菊乃の祝言もあったので、この年末年始はおめでた続き...続きを読むでありました。 さて、本巻の一大事は、磐音の生国豊後関前藩の江戸との藩物産取引きにおいて、不正が行われているかもしれないという疑惑が浮上したこと。磐音は、関前藩の江戸留守居役兼用人となった中居半蔵からその話を聞かされ、調査を頼まれます。その不正は、幕府に知られれば〈豊後関前藩にお取り潰しの沙汰が下されても致し方ない、それほどの大罪〉でした。なにしろ殺人事件まで起こっていたのです。 ラスト、船倉の暗闇の中での死闘は、あまりの緊張感にハラハラヒヤヒヤドキドキ、手に汗握りました。南町奉行所の年番方与力笹塚孫一の登場には、うれしくてニヤニヤしちゃったけど。 ところで、磐音夫婦の第一子空也が成長し、言葉をよく覚える年ごろに。磐音に手を引かれて「父上、どこに行くんだい」と言ったのにはぶっ飛びました。竹村武左衛門(磐音の友)の娘早苗(尚武館道場で奉公中)が、「空也様、お話し相手は父上様でございます。参られますか、と申されませ」と正してくれたから良かったけども。 空也のこの発言は、おこんの父金兵衛(空也にとっては祖父)の下町言葉に影響されたものです。磐音が「わが家は、舅どの、今津屋のような大商人から武家方となかなか多彩な人士との付き合いがある一家ゆえ、幼い折りに言葉が混在するのは致し方なかろう」と言うように、この時代は言葉づかいにその人の身分や職業があらわれるのですね。現代にはない、言葉の彩りの豊かさを感じ、これぞ時代小説の味わい、と読書の喜びに浸るのでした。
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