Posted by ブクログ
2020年08月29日
読書家の世界では年間約100冊を読むことは少ない方かもしれませんが、とにかく今まで読んできた本、特にノンフィクションの中で最も感銘を受けましたので、より多くの方に読んで頂きたくて初めてレビューを書かせて頂きます。
在日コリアン三世として京都に生まれた著者は、小学生時代に激しいいじめを経験するが、漫...続きを読む画雑誌の懸賞で当たったヨーヨーによって学校では人気者になり、中学生では後に職業となるジャグリングに出会う。家族や様々な人の後押しによって著者を後のプロパフォーマーとして、そして人として成長させる。それだけにとどまらず、人々に勇気を持つことや前向きに生きるきっかけを与えるため、講演家としてその役割を果たしていく。
本書は著者が半生を振り返る笑あり涙ありの痛快サクセスストーリー(特に家族にインパクトがあります)なのですが、この本の真の素晴らしさは、いじめの問題について非常に考えさせられるいじめ対策本。著者の家族の生きてきた時代背景が垣間見える数々の哲学的な言葉から多くの気づきを与えてくれる子育て本とも言える人間育成本。夢や目標を持って努力することの楽しさや大切さを教えてくれる熱血(夢中)系教育本。好きなことかつ自分にできることを仕事にする難しさと喜びを教えてくれるキャリア教育・ビジネス思考本。平凡に生きていては知らない(気づかない)まま人生が終わっていたであろう世界がたくさん見えてくる人権啓発本。どんなに辛い経験をも超人的なプラス思考で学びに変えてしまう自己啓発本。その他、民族や宗教、人間の尊厳や生き方まで、日本はもちろん、隣国や世界で起こっている出来事の本質や問題が見え、現代人に突きつけられている課題がこの一冊にほぼ集約されていると言っても過言ではないはずだ。
昨年はブレイディみかこさんの著書「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」という作品にも非常に多くの気づきを与えて頂きましたが、この本は単なる自叙伝や在日コリアンを学ぶための本ではなく、むしろ民族や宗教や国家といった「属性」という枠組みを超え、「個」の目線で「人間」を今一度見つめ直せる一冊である。
駄洒落とも思えるタイトルの「朝鮮人」をもじった「挑戦人」という表記も、読み終わる頃にはただの駄洒落ではなく、著者が祖父から学んだ哲学であることが分かる。
コロナ禍の中、このタイミングでこの本が世に出たことは何か意味があるでしょう。初めて著者の存在を知りましたが、機会があれば生でパフォーマンスを見たいと思います。