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慟哭の夜から救済の光さす海へ。
3・11後のフクシマを舞台に、鎮魂と生への祈りをこめた著者の新たな代表作。
ダイビングのインストラクターをつとめる舟作は、秘密の依頼者グループの命をうけて、亡父の親友である文平とともに立入禁止の海域で引き揚げを行っていた。
光源は月光だけ――ふたりが《光のエリア》と呼ぶ、建屋周辺地域を抜けた先の海底には「あの日」がまだそのまま残されていた。
依頼者グループの会が決めたルールにそむき、直接舟作とコンタクトをとった眞部透子は、行方不明者である夫のしていた指輪を探さないでほしいと告げるのだが……。
巻末に著者によるエッセイ、「失われた命への誠実な祈り(文庫版あとがきに代えて)」を収録。
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Posted by ブクログ
明記はされていませんが、3.11から4年半後の福島を描いた作品です。
そろそろ震災から10年を経ようとしています。この間、震災をテーマにした沢山の物語を出版されましたが、これまで積極的に手を出しませんでした。そんな本は多くないと思いますが「ブームだから」とか「売れるから」なんて思いで書かれた本だとすれば辛いだけですから。
この本はテーマを知らずに借りたのですが、10年を経て生き残った本なら今後は読んで行こうかと思います。
サバイバーズ・ギルト(生存者の罪悪感)がメインテーマです。ただそれをシンプル・ストレートに表すのでは無く、罪悪感と違和感の中間の様な、普段は表面に出ないのだけどある瞬間に急に湧き出す様な、そういう微妙さを上手く表現し、ありふれたテーマかもしれませんがリアリティーを感じます。
「悼む人」のイメージからもう少しスピリチュアルな方向の話かと思いましたが、そうでも無く。
最後は再生に向かう一歩で終わる、きっちりと震災の一面を描いた作品でした。
Posted by ブクログ
途中苦しくて、ページをめくる手が進みませんでした。
「喪失」とか「死」とか、物理的な苦しさじゃない。ただ起こったことのあまりの大きさに、自分がこれからどう生きればいいのか、その出来事にどう接すればいいのかわからない。今こうして存在していることすらも、わからなくなってくる。
それが、8年前のあの日以降、東北の人々が背負った苦しみだったのではないか。あるいは、災害、テロ… 大切なものを突然失った人が負う苦しみなのではないか。この本を読んで自分なりにそんなことを考えました。
でも、荒れる海がいつかは凪ぐように、悲しみにも明ける日が来ます。忘れるんじゃなくて、風化じゃなくて、起きてしまったことを受け止めて、自分の身体の一部として、先へ進む。生きる。生かされている。
「失われた命への誠実な祈り」まで読んでほしい。この後書きをもって、物語は完結します。
Posted by ブクログ
東日本大震災後、立ち入ることすらできなくなった区域の海に潜るダイバーの話です。
主人公は、東日本大震災で両親と兄を亡くした男性。あの震災から四年半という時間が過ぎて、彼はダイビングショップでインストラクターとして働いている。ただ、彼は月に一度か二度、特殊な依頼を受けてとある海に潜る。陸上では検問が設けられ、厳密に滞在時間も制限され、捜索も重機による片付けも行えず、周囲に置き去りにされた地域。月の明るい夜にだけ、彼は船に乗って海から近付き、そこに潜る。沈んだ家屋、ひっくり返った自動車、まるで誰かが集めたかのように同じ場所から見つかるたくさんの靴、そして指輪――数々の品を持ち帰り、時には写真に収め、そうして潜りながら彼は自らの中にある問いへの答えを探していく。
暗い夜の海の深淵を覗くような、静かな物語でした。あの震災の前と後では決定的に違ってしまった人生を、生き残った人たちが生きていくこれからを、考えさせられるお話でした。あの日ニュースで流れた光景は、忘れることはできません。あの時見た景色が、まだ海の中に残っている。そう思うと、静かな調子の文章が、ただ静かなだけではないように感じられて、ゆらめく深い海を覗いているようでした。
私はダイビングの経験もなく、海での漁がどういうものかもよくは知りません。ですが、丁寧な描写と細かな手順まで淡々と書いて下さっているため、人が海に潜るというのがどういうことなのか想像することができました。
身の竦む恐怖、身が引き裂かれんばかりの悲しみ、煮えくり返るような怒り、やみくもに叫びたくなるのに、その叫びがどこにも届かない虚しさに崩れ落ちそうになって、何故だ、何でだ、と思わず零れる言葉と涙。これは、あの海辺の町にいた人々の、リアルな感情なのだろうと思うと胸が苦しかったです。物語全体の文章は感情を揺さぶるような情動的な描き方がされていないからこそ、深く、重く、そのことが刻まれていることが伝わるようでした。
この物語の人物たちが、この後どういう終着点に向かっていくのかは多分に想像の余地がある終わり方でした。それでいいと思いますし、それがいいとも思います。生き残ってしまったことに罪悪感を覚えながら必死に毎日を生きている人がいる。それはきっと今でも。それでも目を逸らさずにいれば、いつか答えが見つかることもある。そんなことを思う一冊でした。
静かな月に照らされた夜の海で生きることについて考えさせられる物語でした。
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