【感想・ネタバレ】ムーンナイト・ダイバーのレビュー

あらすじ

慟哭の夜から救済の光さす海へ。
3・11後のフクシマを舞台に、鎮魂と生への祈りをこめた著者の新たな代表作。

ダイビングのインストラクターをつとめる舟作は、秘密の依頼者グループの命をうけて、亡父の親友である文平とともに立入禁止の海域で引き揚げを行っていた。
光源は月光だけ――ふたりが《光のエリア》と呼ぶ、建屋周辺地域を抜けた先の海底には「あの日」がまだそのまま残されていた。

依頼者グループの会が決めたルールにそむき、直接舟作とコンタクトをとった眞部透子は、行方不明者である夫のしていた指輪を探さないでほしいと告げるのだが……。


巻末に著者によるエッセイ、「失われた命への誠実な祈り(文庫版あとがきに代えて)」を収録。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

フィクションなの現実の福島の人たちの気持ちをしっかり伝えていると感じた。そして、同時に励ましているとも。著者による解説、あとがきから作品に対する想い、責任感、素直な迷いが伝わってきて、再び感動する。福島の再生には、気の遠くなるような時間が要する中で、引き続き書いて欲しいと願う。

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2021年05月08日

Posted by ブクログ

震災ものは重くて自分自身が押し潰されてしまいそうになるため敬遠していたけれど
内容を知らずに偶然手に取った本とはいえ最後まで丁寧に読み遂げることができたのは僥倖だった。危険と隣り合わせの使命みたいなものに尽き動かれながらも、答えのでない疑問を胸に抱き、自問自答を繰り返しているのは主人公だけだはないだろう。
文章の重みをどっしりと胸に感じつつ、私も物語にどっぷり浸かり深い想いにとらわれたひとりだった。

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2020年03月06日

Posted by ブクログ

2020.01.15~01.29
あとがきを読んで、泣いた。
作者がどんな気持ちでこれを書いたのか。それがわかったら、自然と涙が溢れた。
生き残った私たちが生きること、それがどんなに大変なのか、どんなに重要なことなのか。
考えて残りの人生を生きていく。

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2020年01月30日

Posted by ブクログ

天童荒太『ムーンナイト・ダイバー』文春文庫。

主人公自身が震災で生き残ったことへの贖罪への訣別と新たなる未来の光を感じた素晴らしい震災小説であった。

震災から四年半が経った地で月夜に海に潜り、被災者たちの遺留品を回収するダイバー・瀬奈舟作。彼は或る人物の依頼で、金品目的ではなく、震災で大切な人を亡くした人びとのために海に潜り続ける。

書下ろしエッセイ『失われた命への誠実な祈り』も収録。

あれから8年余りが過ぎようとしている。東日本大震災の津波により沿岸地域は壊滅的な被害を受けた。国道に無惨に転がる家屋、海から打ち上げられた船、建物の上に持ち上げられた自動車、流された多くの人びと……誰があのような地獄の光景を予想しただろうか。生きること、生き残ることは決して罪ではない。

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2019年01月11日

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ネタバレ

東日本大震災から4年半、海底に沈んだままの遺留品を回収するために夜の海に潜る舟作が、遺族の一人、透子と出会い、彼女の元夫の結婚指輪を探そうとする。

海水の放射能汚染のリスクや、夜の海に潜ることのリスク、さらには見つかったら罰せられるかもしれないリスクがあるなか、ダイバーとして協力する舟作も、会費を払ってでもこの取組を進めたいと考える遺族たちも、津波の被害者である。それだけでも理不尽なのに、それぞれが、遺品が見つかってほしい気持ちと、見つかるとその持ち主の死を認めざるを得ないから、出てきてほしくないと思う気持ちの間で揺れている様子には、心を揺さぶられた。

そして、物語自体もよかったが、文庫版あとがきに代えて著者自身が書いている"失われた命への誠実な祈り"を読んだときが一番泣けた。
大切な人が亡くなったり行方不明だったりすると、自分だけが幸せになっていいのかと、自責の念に駆られる人がいるが、「生きている人たちは幸せになっていいし、むしろ、幸せになることこそが、失われた命に向けての、誠実な祈りになる、と思っている」という著者のメッセージに、どれだけの人が救われただろう。

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2021年09月18日

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思ったより内面の描写が濃くてびっくり
重いテーマだからこそだとは思うが、難しく時間がかかってしまった。

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2021年06月10日

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明記はされていませんが、3.11から4年半後の福島を描いた作品です。

そろそろ震災から10年を経ようとしています。この間、震災をテーマにした沢山の物語を出版されましたが、これまで積極的に手を出しませんでした。そんな本は多くないと思いますが「ブームだから」とか「売れるから」なんて思いで書かれた本だとすれば辛いだけですから。
この本はテーマを知らずに借りたのですが、10年を経て生き残った本なら今後は読んで行こうかと思います。

サバイバーズ・ギルト(生存者の罪悪感)がメインテーマです。ただそれをシンプル・ストレートに表すのでは無く、罪悪感と違和感の中間の様な、普段は表面に出ないのだけどある瞬間に急に湧き出す様な、そういう微妙さを上手く表現し、ありふれたテーマかもしれませんがリアリティーを感じます。
「悼む人」のイメージからもう少しスピリチュアルな方向の話かと思いましたが、そうでも無く。
最後は再生に向かう一歩で終わる、きっちりと震災の一面を描いた作品でした。

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2020年10月02日

Posted by ブクログ

途中苦しくて、ページをめくる手が進みませんでした。
「喪失」とか「死」とか、物理的な苦しさじゃない。ただ起こったことのあまりの大きさに、自分がこれからどう生きればいいのか、その出来事にどう接すればいいのかわからない。今こうして存在していることすらも、わからなくなってくる。

それが、8年前のあの日以降、東北の人々が背負った苦しみだったのではないか。あるいは、災害、テロ… 大切なものを突然失った人が負う苦しみなのではないか。この本を読んで自分なりにそんなことを考えました。

でも、荒れる海がいつかは凪ぐように、悲しみにも明ける日が来ます。忘れるんじゃなくて、風化じゃなくて、起きてしまったことを受け止めて、自分の身体の一部として、先へ進む。生きる。生かされている。


「失われた命への誠実な祈り」まで読んでほしい。この後書きをもって、物語は完結します。

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2019年07月13日

Posted by ブクログ

震災後のお話。
きっと現実にもまだまだ様々な思いを抱えながら生きている人がいるのだろう。

おそらく福島の海を潜り、誰かの大切だったかもしれないものを見つけてくることを引き受けてい主人公。

生きること、これからのことを考える。

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2019年05月04日

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震災後、そこで生きていく人たちのお話。
静かに、でも確実に人の気持ちを丁寧にすくっている物語だった。

2019.4.29
68

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2019年04月29日

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3.11に真っ正面に向き合って描く、震災後小説。

主人公の舟作はダイバー。遺族からの依頼により立入禁止区域の海に非合法に潜り、遺族の遺品を回収する。
ある美しい女性から震災で行方不明になった夫が付けていた結婚指輪は何故か探さないで欲しいと舟作に依頼する。

震災で両親と兄を失った舟作。強烈なサバイバーズギルトと今を生きていきたいという生物としての強烈な命への執着。
震災で近しい人を失った誰もが感じるであろうそういった感情が、この小説に深く込められている。

震災後小説の代表の一つとして語り継がれていくべき秀作。

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2019年03月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんとも天童荒太らしい本。

震災で生き残った人は、贖罪の日々を送るのだ。すべては自然が起こした抗えようのない事実とはいえ、自分を責めるばかり。
主人公は海に潜り続ける。そこで見つけたものは、希望の光であって欲しい。大切な命、生きぬいて。

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2019年03月03日

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ナイトダイビングというものが本当にあるのかと思ってしまったのだが、検索してみたら結構あって、なんて幻想的なんだろうと。昼間とは違うものが見えて、感じて、そこには昼間には言葉にできない感情が浮き上がってくるんだろう。大切な人の思い出とか、伝えられなかった言葉、踏み出せなかったこれからの一歩。悼む人から続く鎮魂によって、登場人物たちの思いが浮き上がってくる。海底から上がってくる際の水泡の音が大きくなって聞こえるくるような、そんな結界を超えて戻ってくるようなイメージ。息を止めているようなシーンが続いて、話は単調な流れではあるが、結構集中して読めました。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ

震災から4年。立ち入り制限がある地域の海に潜り、遺品を持ち帰ることを被災者の会から依頼されている主人公。
月夜に潜り、そこに住んでいた人たちの生々しい記録が海底に沈殿しているのを見るたびに処理しきれないものを発散したい欲望にかられる。
何故自分はこんなことを引き受けたのか、犠牲になった人もいるのに自分はこんなに幸せで良いのか。
葛藤をしながらも真摯に災害に向き合う。

この作家の特徴だと勝手に思っている、重くて静かな感じ。だが、今回気づいたが、心を描いている分量よりも情景を描写しているほうが多いのではないか?情景描写に心を反映させている面もあるかもしれないが、多少読み飛ばしても差し支えない感じ。

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2021年10月02日

Posted by ブクログ

東日本大震災から4年後。海に沈む遺留品を回収するため、海に潜るダイバー。
潜り続けることで何かの答えを見つけようとするダイバーと遺留品に期待を込める人達。
遺留品を通して、震災を生き延びた人の苦悩が伝わってきて、目をそらしたらダメなんだけど、読んでいて苦しい気持ちになる。

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2021年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ


遺された者の想いを描いた作品。この震災では多くの人が亡くなったが、その遺族は亡くなった人の数倍おり、死者に対する想いも遺族の数だけある。その想いは遺品に現れるが、それを海から取ってくる者にも当然現れる。

実際にこういうことをやってる人はいそうな気がする…月が明るい日の深夜に一回浜通りの海に行ってみたくなった。

地名は全く出てこないが、実際に被災した街が舞台になっていることがはっきりと分かる。舟作が潜っている海は福島第一原発近辺ということは明らか。私の被災地訪問の記憶からの推測だが、文平が住んでいるのは浪江や富岡で有志の会の会合が行われるホテルはいわきと思われる。そして化石掘りの話から舟作の故郷は歌津なのだろう。(違っていたら恥ずかしい)

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2021年07月06日

Posted by ブクログ

妻子ある中高年主人公の性生活の描写は兎も角、中盤にある主人公の職場の後輩女性との恋愛描写には、テンポ感なく中だるみを感じてしまい、
ストーリー展開に必要だったのかと疑問が残った。
邦画化されそうな幻想的なラストは良く、3・11津波後の被災地での風景を反映した小説作品ではあるが、
震災後小説として、語り継ぐべき傑作だとはいいきれない。

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2021年07月01日

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