「余談になるが、パリの近郊のアンドレ・マルローの邸に招かれた時、私の『美の呪力』を仏訳した『 L esthétique et le sacré』という本を進呈した。彼は興味深そうにその場で頁を繰っていたが、中で組紐紋について書いた章の口絵に目をとめた。そこにはケルト美術とならべて、縄文土器の部分の写真がのせてあった。マルローは、「ああ、ケルトだね」と言う。「いや、こっちは日本の原始芸術、縄文土器です」「ふ ーむ。縄文の土偶は知っていたが。こんなのがあるのか」 とびっくりしていた。西欧人に珍しく、日本美術にあれほどの関心と教養を持つ彼でさえ、見分けがつかなかったのだ。」