Posted by ブクログ
2021年08月08日
楠木教授と各業界、特に経営者として活躍される第一人者との対談をまとめたもの。
ネスレ日本の高岡さんが面白かった。
・宮内義彦
「経営者というのは、事業へのミクロの精通と、企業のトップとしてのマクロ観、この2つを持たないと間違える危険性があると思いますね。ミクロはともかく、マクロ観を培う勉強というと...続きを読む、何もわからないわけです。ものすごく茫洋として幅が広い。実際には興味のあることの積み重ねでしかないと思いますね。」
・玉塚元一
「…『玉塚君、君は何をやりたいんだ』と聞かれて、僕は『経営者です。商売人になりたいんです。』と答えました。すると、『経営者や商売人なんて、コンサルタントがなれるもんじゃない。なけなしのお金を出して、場末にお店を開いて、一生懸命考えてやったんだけど、シャッターを開けてみたら、誰も来ない。なんで来ないんだろうか。1人来て、2人来た。けれども、何も買わないで出ていってしまった。商品が魅力的じゃないのか、価格が高すぎるのか。それを悩み続けながら、胃の痛む思いをしながらやらない限り、経営者にはなれないんだ』と言われました。」
・高岡浩三
「このカギは、アンバサダーの方に当社は謝礼を払っていないことです。『オフィスでおいしいコーヒーを飲むための世話係になる』という人の善意が、どれだけビジネスモデルとして機能するか、最初の頃は手探りでした。ところが意外や意外、アンバサダーをやってくださる方は非常にモチベーションが高かったし、同僚の皆さんにも歓迎された。
プラスの効果としては、そこでコミュニケーションが生まれたことです。PCとモバイルフォンの時代、オフィスで会話する機会が少なくなってきています。あっても喫煙所くらいですが、スモーカーは減少傾向にある。ところが、コーヒーマシンが置いてあると、そこにみんなが集まってちょっとした話をする。オフィスの雰囲気が良くなるし、モチベーションも上がるということがわかってきたのです。」
「私たちにとってのヒット商品の定義は、新しいセグメントを作ることです。たとえば、『ネスプレッソ』『ネスカフェ ドルチェ グスト』は、一杯ずつ抽出するカプセル式のコーヒーマシンというセグメントです。…レギュラーコーヒーのなかで、新しいセグメントを作ったということです。現在、日本でのシェアは90%ですが、最初はセグメント自体存在しなかったのですから、ゼロです。ゼロから作って、競争相手がいないなかでシェアを大きくしていくと、利益率が圧倒的に高くなります。」
・仲暁子
「ダイバーシティの定義を、自分の都合の合うように言っていますよね。ゴールドマン・サックスってすごいダイバーシティのある会社だったのです。でも、そのダイバーシティのなかで、みんなが持っていた価値観というのは一緒で、みんな競争が大好き、お金が大好き、自分が死ぬ気で働くのが大好きという。その中に、黒人とかヒスパニックとか、女性とかがたくさんいたというダイバーシティなのです。」
(楠木)
「それは大切なことですね。要するに、経営の本質は多様性よりも統合ですからね。仕事の組織として成果を出す以上、経営において一義的に大切なものは統合に決まっている。パッとしない会社は、共通の価値観で人々をしっかりグリップできない、すなわち統合能力がないところ。それができないのを正当化するために、ダイバーシティとかいう人がいますが、これもう最悪ですね。」