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【和辻哲郎文化賞受賞作】城館にこもったモンテーニュはどのように思索の日々をおくったのか。想像を絶する冬の寒さ、夜の暗さの中、孤独を愛し、病に悩まされつつも、「エセー」初版を刊行する。自然、理性、運命の三要素と正面から向き合う彼の内面劇を緻密に描きつつ、中世ヨーロッパを読者の目の前に現出させる。
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Posted by ブクログ
フランス王室と宗教戦争の行方がますます混迷をきわめるなか、ミシェルはボルドー高等法務院裁判官の職を辞してモンテーニュの塔の一室をわが城とし、いよいよ『エセ―』の執筆を始める。 エセ―とは、随想であり試みの意であるという。ここでミシェルがおそらくヨーロッパ世界で初めて試みたこととは、自らを研究対象とす...続きを読むることであった。「ク・セ・ジュ(われ何をか知る)」というモンテーニュの言葉は「懐疑主義」と一般に言われているが、それは、わたしが本書を読むまで想像していたような、すべてを疑い自らが恃みとする理性の力で「真理」を明らかにしていこうとするような重く暗く硬い思想のことではなかった。それはむしろ、どこまでも明るく軽やかで肯定的な視点だ。身体の喜びを否定せず、矛盾だらけでうつろいやすい自分を面白がり、絶対的な正義の基準をふりかざして他人を断罪したり自らを枠にはめることを避けようとする姿勢(裁判官だったのに!)。それが「中庸」という言葉の意味することなのだった。 あいかわらず16世紀のフランス・ヨーロッパの政治情勢をまるで今起きていることの世間談義のように語りつつ、『エセ―』の中身へと誘ってくれる堀田善衛の筆の見事さ心地よさよ。
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