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戦国期の古城を撫でる作家の眼は、そこに武将たちの慷慨を見る。松平清康の勇姿と理想、若き日の家康の逞しい気概、並外れた本多忠勝の武勇と知略、大久保一族の至誠と剛胆。今川一族の血塗られた宿運、勝頼の短慮と武田の末運。──三河、遠江に散在する城々を訪ね、清冽犀利の筆致で、その柔軟な想念と深遠な歴史観を自在に重ねる出色の城塞紀行。単行本3、4巻を合本して文庫化。
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Posted by ブクログ
古城の風景2巻。 本棚に1巻が登録されていないということは、それだけ積読にしておいたということか。 ただ、積読にしていた時間の間に「逃げ上手の若君」と「新九郎、奔る」が始まったおかげで、収録の徳川の城・今川の城に関しての来歴がすんなり頭に入ってきて楽しい。地元の静岡という土地勘もありますね。主に今川...続きを読むの系図です。 朝日山城の冒頭、歴史に触れる際の小説と史料・文献の違いを述べているのが興味深い。というか、肝に銘じておくべきことなのだろう、と思います。長文ですが以下引用。 『史料や文献を読む事よりまえに、歴史上重要な氏姓が頭に入るようにしてくれるのが小説であり、そこに小説の効用があるとはいえ、じつは小説は毒にも薬にもなるというべきで、小説を読んで歴史がわかってしまったような錯覚におちいるのが怖い。私は司馬遼太郎氏の小説を読む以前に、吉川英治氏、山岡荘八氏、海音寺潮五郎氏、柴田錬三郎氏、早乙女貢氏などの本の愛読者であり、それらの本から得た知識で歴史を頭の中で構築してきた。ほとんどの読者がそうであろう。小説的世界を歴史にかさめあわせて、実相をみぬいたつもりになるが、それは著者の史観を仮借しているにすぎず、あくまで歴史と小説は別の物である』 小説を他の創作物に言い換えてもいいですね。どうしても、エンタメ性の高い作品であればあるほど、自分に与えるインパクトは大きいので、それこそが事実真実としてしまいがちです。それはそれとして楽しみながら、実際のところはどうであったのか、と客観的に探求することが必要なんでしょうね。 これは、多くの歴史ファンが抱えている課題でしょうね。まず、史料・文献に触れる機会よりも創作物の方が多いですし。 歴史を後世の視点で見ることができるという恵まれた立場であること。それを利用しまくって、エンタメも実相も楽しむことができるのが理想ではないでしょうか。 自分がそこに達することができるのか、は果てしない道のりです。
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