Posted by ブクログ
2015年10月03日
ブラック企業専門家(?)である今野晴貴氏と、リクルート出身の毒舌系コメンテーター常見陽平氏による、ブラック企業批判の本です。
タイトルに「IT企業」とありますが、IT企業にフォーカスしているのは第1、第2章であり、第3章は"ノマド"批判、第4、第5章は巷のブラック企業に関係する...続きを読むいろいろなトピックについて、雑談を交わすという内容でした。
第3章までは、SPA!あたりの特集を思わせる「ブラック企業のひどい話」が続きます。正直言って退屈です。おもしろいのは第4章からの対談です。
"「ブラック企業」と世間で評判の会社は「普通でいること」を徹底的に嫌悪し、敵視します・・(中略)・・「自分の生活のことを考えること」すらも、「罪」であるかのような社会に、日本全体がなっていないか・・(中略)・・「能力のあるもの以外は必要ない」。これも、社会全体にまん延すると、まさに優生思想、差別思想です(P.149)"という今野氏の指摘は、わたしが常々思っていることをそのまま言ってくれています。
また「意識高いけど知識低い人」の根っこは「ヤンキー文化」がある、という指摘がおもしろい(P.174)。もちろんそんな単純な人たちばかりではないだろうけれど、以前読んだ斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら』(角川書店)の議論、またそこでわたしが感じた「ヤンキー的なるものへの嫌悪感」、また「わたし自身のヤンキー性」を思い起こし、本書の指摘を重ね合わせると、いろいろなことが腑に落ちてくるように思いました。
最近は常見氏に限らず、「意識高い系」を揶揄するような本が書店でちらほら並び始め、一方でそれに対する激しいバッシングが主にネット上で展開されていたりと、「働き方」を改めて考えようとする機運が若い人たちのあいだで盛り上がっているようです。
わたしは"やらされたことに熱くなれるのも、サラリーマンの醍醐味です(P.202)"という常見氏の言葉を、素直に受け入れられたころの生活に戻りたいです。
(2015/10/03)