Posted by ブクログ
2018年12月22日
めっちゃおもしろかった。
一般向けにかかれているが、かなりの専門性にも耐えられる。
これだから依存に関わる神経生理学のハナシはやめられないw
そして、そこここに見受けられるこのセンセイの「バッサリ感」がステキです。
P30
ではA10に刺激を送っているのはどの場所でしょう。それこそが私...続きを読むたちの脳のなかで快感をコントロールしているところです。それは2つあります。
1つは前頭連合野、つまり知的活動の中枢です。(略)
もうひとつは側座核というところで、これはまさに快感の中枢です。
(略)ここでいう快感はマッサージを受けたときの気持ちよさやおふろに入ったときの解放感とは違うもので、なにかを達成したり夢中になったりしたときのも野です。それらには感覚神経から直接来るものではないものも含まれます。なにか喜ばしい体験・けいけんがあったとき、それは前頭連合野でうけとられ、その反応がVTA(ふくそくひがいや)に延びる神経を活動させ、VTAを活性化させます。VTAではA10神経をつかって前述の脳の各部にドーパミンを送り届けます。これが快感を生むのです。
(略)特に側座核がどー羽明を受けとることが快感の中心だと考えられています。
(略)さらに、この好ましい経験はどー羽明を受け取って活性化された脳のメモリーー海馬に蓄えられ、次に同じような状況が来たときにより速いドーパミンの放出が起こるようになります。これが期待の快感、です。
ドーパミンが過剰になると
1興奮状態になり、ときには攻撃的になる
2アルコールやタバコ、過食などある種の行動がやめられなくなる
3幻覚を見たり、妄想を抱いたりする
不足すると、
1意欲や興味、好奇心が減退し無気力な状態になる
2パーキンソン病
2章 脳内麻薬と薬物依存
快感を支配する脳内の回路「報酬系」は、私たちのかラだが生存のために用意した「自分へのごほうび」です。
(略)本来の設計とは違う方法で「ごほうび」を得ようとする病気「依存症」です。
P49
依存症には大きく分けて、次の3種類の依存対象があるとされています。
・物質への依存(ニコチン、アルコール、薬物、食べ物など)
・プロセスへの依存(ギャンブル、インターネット、セックス、買い物、仕事など)
・人間関係への依存(恋愛、カルト、DV,虐待)
アルコール依存
実はアルコールは(略)報酬系をじかに活動させるのです。
報酬系が活性化されるとヒトが快感を覚えることはすでにのべた通りですが、前述したようにこの報酬系には、ふだん、GABA神経というブレーキがかかっています。
アルコールにはこのGABA神経を抑制する働きがあるのです。
つまり、アルコールが他の飲み物に比べて特に好まれるのは、味がいいからでなく「ごほうび」のブレーキを弱らせて、ドーパミンをたっぷり分泌させるからなのです。
コカイン
コカインはこの掃除機(トランスポーター)の働きを妨害します。つまり体にコカインをいれると、ドーパミンが分泌されっぱなしになるわけです。その結果、脳は興奮しっぱなしになり、「爽快な気分」などと表現される独特の快感が得られるのです。
覚醒剤の働きはコカインとにていますが、より強力です。(略)強烈な不眠、食欲不振、血圧上昇、幻覚・被害妄想が起こる
ストレスと摂食障害
食事はいきるために重要な行為ですから、食欲のコントロールには様々な神経伝達物質やホルモンが関係しています。慢性的なストレスによってそれらのバランスが乱されると、いわゆる摂食障害になると考えられています。
つまり、摂食障害とは人間関係から来る心理的ストレスを受けたときの耐性の不足、社会適応性の未発達、周囲とのコミュニケーションの不全などが引き起こす依存症の一種なのです。
レプチン
脳は脂肪細胞から分泌されるレプチンの濃度を知り、高すぎれば食事の量を減らして代謝を上げ、低すぎれば食事の量を増やして代謝を下げるという方法で体重をコントロールしているのです。
満腹・空腹の判断にはレプチンの量も影響しており、例えば脂肪が少ないときはレプチンの量が少なくなり、それを関知した脳は判断をより空腹側に片寄らせます。こうしてリバウンドが生じるのです。
脳の中にドーパミンが溢れている状態にするとラットの食欲はなくなり、(略・逆にすると)ラットは餌の量を増やすこともわかりました。(略)
A10神経にはレプチンの受容体もついていて、レプチンが多い状態になるとドーパミン放出の量が減ることもわかってきました。
ここからわかることは、過食・拒食はほかの依存症と同じくA10神経を中心とするほう集計の以上からくるものではないかということです。
実際に太りやすい体質のラットとそうでないラットに同じ量の餌を与えると、太りやすい体質のラットのほうが、脳内に放出されるドーパミンの量が少ないことがわかってきました。つまり過食というのはドーパミンの量が満足できるレベルになるまで食べ続けることからくる症状のようなのです。
P94
空腹のヒトが最初の一口を食べるときに、ドーパミンの量が最大になり、食事が進むにつれて減っていくこともわかりました。
P95
肥満の人はドーパミンの放出量が少なく、しかも需要体も少ないためにドーパミンの刺激がいつも少ない状態=いつも満足できない状態にあるのです。そして、ドーパミンが満足できるようになるまで食べ物を食べると、カロリーのとりすぎになってしまうから太るのだ、ということになります。
しかし、もともとドーパミンの量が少ないのに、どうやってその人は食べることの快感を覚えたのでしょうか。(略)ごほうびが少ないとそもそもやる気がでない。しかし多すぎると少ししか働かないという矛盾です。
人の脳はこの矛盾を巧妙な方式で解決しています。肥満の人の脳の活動を注意深く見ると、ミルクセーキを飲む前や、まさにのもうとするときに報酬系が大きく活動しているのです。
つまりこの人の脳は、眼前に大きな報酬をちらつかされながら、実際に飲むという行動をとったときには少しのごほうびしかもらえないのです。
(極端な食事制限というストレスフルな状況中はもちろん、解除後も食事の量が増えたり、糖や脂肪の多い食事を好むようになる現象)
まず、かんのうししょうかぶがCRH(満腹ホルモン)をだし、脳下垂体がそれをうけとります。そこから副腎皮質刺激ホルモンが放出され、全身に広がりその刺激を受けた副腎からコルチコステロンというホルモンが分泌されます。
この物質が脳に戻ってきて脳のストレス反応を引き起こします。このストレス反応の中には、報酬計に変かを起こすものがあり、それが原因で摂食障害が起こっていくのです。
<セックス依存・恋愛依存>
P102
結果としてセックスとそれに関連した活動からくる時間や人力の浪費は、おそらく人類の、いわゆるまっとうな生産活動をかなり低下させているでしょう。子孫を残す行動に結び付かない、文字通りの非生産的な、快楽を得るためだけのセックス依存症にかかっているのは、実は、人類という種そのものだと言えるかもしれません。
P105
(セックス依存と恋愛依存とのちがいは)言い換えれば、対人関係の希薄さからくるストレスを恋愛とセックスのどちらでまぎらわすかによって、別れるとも言えます。
ただ、セックスには恋愛の確認と、性欲の発現という2つの目的があります。恋愛感情と性欲は、脳のなかではどうやら区別されているようです。
P106
(カップルの片割れに、いままさに恋愛中のパートナーの画像を見せると)まず、脳の中で判断能力を担っている部分と、社会性を司っている部分(前頭連合野)の活動が停止したのです。これはいうならば、恋人の顔を見るときには客観的・社会的な判断は飛んでしまう、ということです。さらに視覚情報を処理する部分、注意・雲藤・体性感覚器のなどを司る部分である大脳皮質については、広範囲に活動が見られました。
これらの結果を考え会わせると、どうも、恋人の顔を見るときには、客観的に判断することはストップして、ただ相手の姿を見ること楽しもうとしているかのようです。
P114
オンラインゲームにハマる理由
ゲームが写真や音楽と違う点は、この”熱中を生むように設計された人工の趣味”である点です。実はゲームは巧妙に報酬計を刺激し、ドーパミンを分泌させるように設計されているのです。
(スーパーマリオ)旗が上がり、小さな称賛が与えられ、あなたは達成感を得ます。小さな努力と小さな達成感。しかしそれは確実にあなたの報酬系を刺激します。
2面、3面と画面が進むにつれて、次第に難しくなり、それをクリアするには努力と時間が必要になります。その分得られる達成感も大きくなります。この難易度の上昇はドーパミン分泌系が刺激に慣れ、分泌量が減るのを防げます。(略)
このような人工の報酬系刺激装置は、いわば薬物を使わない麻薬のようなものです。
(略。ゲームが報酬系を活性化させるかどうか?ある実験をしたところ)やはり報酬系も活性化していたのです。そして、その活性化の度合いは男性のほうが高かったのです。
(略)オンラインゲームとは、ゲーム内のキャラクターからの称賛や友情という、人間関係への依存をふくんだ、プロセスへの依存症なのです。
<ギャンブル>
報酬系はシロップという「利益そのもの」に反応して活性化するだけでなく、緑の光という「利益の予告」にも反応するということです。
動物は確実な報酬より、リスクを伴った報酬に強く反応するのです。
<脳の非合理な解釈>
ポーカーの手札配りと同じく、自分で操作してもスロットの当たりの確率が大きくなるわけではありません。しかsh、それでも自分で操作すると報酬系の活動が高くなるのは、運命を自分で選んでいるような気がするからでしょうか。
これがギャンブルに対する報酬系の反応です。
ギャンブル依存症になる人は、前述の青い光のような刺激を受け続けることで面白さを知り、ニアミスやジンクスに翻弄されながら楽しむうちに、脳に耐性が形成され、より強い刺激を求めて何度でもギャンブルの場に通うようになるのでしょう。
ゲーム依存症やギャンブル依存症は、依存症としては軽い部類に入ります。予後は決して油断できませんが、ともかく自分で依存症を克服し、社会生活に復帰する人が多いからです。
そして株式や投資の場において、このギャンブルに対する耐性を持った人たちが活躍していることも事実です。
<社会的報酬>
<承認・評価>承認や評価をするときに、効果が高いのが「I」メッセージです。「(あなたは)すばらしいね」「(あなたは)頑張ったね」という言い方は主語があなたであるメッセージで、(略)これは冷静な言い方ですが、感情のこもらない、ある意味で上から目線の言い方だとも言えます。
「(私は)あなたのすごさには毎回驚かされる」「(私は)あなたの作品に感動して涙がでそうになった」ならこれは主語がわたしであるIメッセージです。
IメッセージのほうがYouめっせーじよりも「あなたの価値を認めていますよ」という気持ちが十分に伝わり、社会的報酬としての価値も高いというわけです。
「報酬としてお金を得たとき」と「褒められたとき」の脳の状態を比較しました。
その結果、他人に褒められたときに反応する脳の部位と、金銭をもらったときに反応する脳の部位は、まったく同じ部分(線条体)であることがわかりました。
つまり「社会的報酬」とはことばの上の遊びではなく、脳にとってはまさしく「報酬」そのものであることを示しています。それだけでなく、社会的報酬と金銭的・生理的報酬が脳の同じ部分で評価されているという事実は、これらが交換可能であることを示します。非常に単純化してしまうと「お金」で「友情」や「愛情」が買えるということです。逆に、「愛情」を「お金」に換えることもできます。
P146
単純な作業については、金銭的報酬は強力に作用します。
明確な金銭的報酬というのは視野を狭め、心を集中させるためのものです。それは単純な作業では効果を発揮します。それにたいして平均時間を知るために協力してほしいという要請は相手の感謝と評価という社会的報酬を予想させるものです。こういう動機付けは、答えがあるのかわからないような、知的な課題に向いているようです。
P156
利他行動も社会的報酬を得ようとする行動であり、金銭的報酬を求める経済行動と同じ土俵で考えることができるという立場です。
他者からのよい評判という社会的報酬と金銭的報酬は、ともに報酬系の「線条体」を活性化させます。こうして異なる種類の報酬を比較検討し、どういう行動をとるか決定するときに使われるのが、報酬系が与えてくれる快感なのです。