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いくつものなんでもない一日の物語、完結!
『国宝』をはじめ、数々の名作を世に送り出してきた著者による、もう一つの代表作「横道世之介」シリーズの三作目。
「ドーミー吉祥寺の南」に暮らす横道世之介、39歳。
世之介を慕う後輩カメラマンのエバには人生上の重大事が起き、下宿仲間の谷尻くんはどうやらカフェ店員に恋をしているらしい。図々しくて、お人好し、調子がよくて、だけどなんだかいい奴で、いつもみんなの近くで笑ってる。そんな世之介はもちろん誰のことも放っておけず、あれやこれやと世話を焼く。
少しずつ変わっていく周囲を全力で支えようと奮闘する世之介のもとにも、小さな変化が訪れては、やっぱり最愛の人を何度でも思い出している。
死ぬときは、いっぱい笑って、いっぱい働いて、いっぱいサボって、そんでもっていっぱい生きたなーって思いたい。
光に満ちた、“なんでもない一日”みたいな男の物語。
(本書からお読みいただいてもお楽しみいただけます。)
単行本 2023年5月 毎日新聞出版刊
文庫版 2026年6月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
下巻は後輩エバの子供が生まれることを軸に、世之介の過去の恋愛、世之介誕生の瞬間、ドーミーの住人たちのささやかな変化などが描かれる。吉田修一さん、世之介を存在させてくれて、ありがとう。いやー、宝物のような本だ。だったら文庫になるまで待つなという話だが、いいことはわかっていたので、とっておいたのだ。
映画かも楽しみ。もちろん高良健吾さんだよね。年もちょうどだ。想像するだけで、泣けてくる。
以下、ぐっときたとこの抜き書き。
「「だからリラックス。この世の中で一番大切なのはリラックスできてること」ソーダバーを齧りながらではあるが、世之介は胸を張っている。」
「自分ではなく、誰かのことを思えるということが、どれほど恵まれていて、贅沢なことなのか。きっと二千花は気づいていたのだと。」
「いいか、人って本当にそれぞれなんだよ。心配のし方、喜び方、怒り方、悲しみ方……、本当に人それぞれなんだよ」
「なぜか、ずっと彼女を待っていたような気がした。咲子から子供ができたと告げられた時よりももっと前、咲子と出会った時、いや出会う前、カメラマンになると決意した時、いや、そのもっと前から、ずっと待っていたような気がしてならない。」
「……私なんて恵まれた人生じゃないんだろうけど、それでもこんな人生の中に今日みたいな、こんな夜があったんだと思えば、なんかそれで満足かも。そんな夜だな―今日は」
「二千花ちゃんがそこにいた世界と、最初からいなかった世界ではやっぱり何かが違う。それがね、一人の人間が生きたってことですよ」
「私の人生なんてさ、わりと平凡なほうだと思うけど、でもそんな中に今日みたいな日があったと思ったら、きっと満足だな。自分の人生に大満足。そんな一日かも。今日は」
Posted by ブクログ
横道世之介シリーズ堂々完結。泣いた。寂しい。
本っっっ当に素敵なタイトル。横道世之介読んだことがある人全員に読んでほしい。
今回もすごく優しい気持ちになれた。心が浄化された。
私のような人間ですら横道世之介読んでいる時とその後一週間くらいは人に優しくしようと思える。継続したいもんだね。
これまでのシリーズでは世之介の現在にスポットが当たりゆるゆると春夏秋冬が描かれていたけれど、今回の作品は時代を遡り、世之介の周りの人の誕生、生い立ち、その両親にまでスポットが当たり描かれていた。亡くなった世之介の元恋人との生活も描かれ、シリーズ最終章とあってかなり死生観に触れた内容になっていたと感じた。
死生観や、登場人物の背景や考え方がこれまで以上に描かれているのもあり、登場人物たちに対し「この人も誰かが命懸けで産んだ人なんだ」と思った。これは小説だしフィクションだけれど、現実もこの小説とそう変わらないと思った。
世之介は「なんでもない一日みたいな人」という一節がある。
なんでもない一日は、平等に訪れ、穏やかで、そして大切さになかなか気付けない。
思い返すと大満足日って意外と沢山あるじゃん、とか、リラックスしている時に永遠を感じることができる、とか
横道世之介シリーズは人生の中の意外と気付いていない、普段の生活の中では見逃してしまうような瞬間を思い出させてくれて、自分の人生が少し愛おしく、素敵なものに見えてくる。
横道世之介シリーズは終わってしまったけれど、横道世之介は私の中に永遠に生き続けるだろう。
Posted by ブクログ
横道世之介シリーズがついに完結。ついに、とはいっても第一作の時点で世之介の結末は示されていたし、続編があるとも思っていなかったので、第二作、そして今回の第三作と続きが読めたこと自体、思いも寄らなかった幸運という感覚です。今回も読み進めて終わってしまうのがもったいなくなるような多幸感に溢れた読書時間を楽しませていただきました。
今回は世之介39歳ということで、今年40になった私としては時代設定はやや異なるもののほぼ同世代の話として自身へ重ねたり重ならなかったりしながら読めたのも楽しかったです。
「なんでもない日常に幸せはあったのだ」と、そう書くとなんとも陳腐になってしまい、この小説と主人公世之介の魅力を言葉にするのは難しく感じます。シリーズ全編を通して人生讃歌であることは間違いないのだけど、今作は特に病で亡くなった恋人であるニ千花とのシーンや、後輩のエバと咲子が子を授かることであったり、世之介の人生観というか死生観のようなものが言葉にされる部分も多く、人生の幸せをより明示的に感じさせやすい作品になっています。「永遠と横道世之介」というタイトルの回収も素晴らしく、シリーズの締めくくりに相応しいあたたかな終わりであったかと思います。映画化も進んでいるということでどんな作品になるか今から楽しみです。
それにしても今作の地の文もなかなか独特ですよね。ナレーション風の『国宝』ほどにはわかりやすくはないし目立ちもしないのだろうけど、時にメタ的な記述も含む独特な三人称視点の地の文が本作の雰囲気全体を支えていて、さすがの吉田修一でした。
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