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Posted by ブクログ
『罪の声』『存在のすべてを』などの社会派ミステリーで有名な塩田さんの初期に書かれた短篇をまとめた短編集。
真面目な社会派ミステリーばかり書いていたのかなと思っていた塩田さんが、初期には『小さい上司』や『仮縫い』みたいなユーモアのある作品も書いていたのかとビックリ。
特に『仮縫い』なんかは、私の大好きなバカな高校生男子がものの見事に描かれていながらも、感動してしまうし、『鈍い火』なんかは、最近の作品の原点となるような感じがするし、『起点』は、近い将来、こうなるかもなと思えてしまう。
講談社の「STORY IN POCKET」シリーズは、200ページ足らずなので、ちょっとした出先でも読めるし、何より550円という安さでかなりお得。実家には東野圭吾さんの『小さな故意の物語』もあるので、読まなくては。
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塩田さんに書く物語は、人生の難しさと、ダークな側面、そして希望だ。女性を知らない中学生の男子たちがとるクレイジーな行動、その時期特有の高揚感と期待感。こういうところが塩田さんらしい。それでいて、カツアゲされた男生徒の悩みもまた、親には言えないダークなものを含んでいる。起点になるのは、先生の甲子園に連れて行って試合を見ている途中に、無造作に見える所作で取られてしまった金額をちょっと越す金額の商品券を渡すシーン。その子は泣いた。
ただの見晴らしのいい道路で子供が轢き逃げされた裁判、取材する主人公が違和感を覚える。ほぼ無罪を勝ち取った幸せを壊す男、そして壊された男。その間には、1人の共通の女性がいた。怒りと恨みから幸せを壊し、そしてその笑みを見たことで殺意を確固たるものにした子供の親。最後止めたのは、何の関係もない取材する新聞社の男。殺したらダメだ、人生はまだあるんだ続いているんだ。はやまっちゃいけない。
人生で一番大切なのは、続けることだ。30年を超えて想いを叶えた小学校の同窓の結婚式で、テーラーの花嫁の父親が「服でいうたら仮縫いですが、これから立派な服に仕立てられるよう、ご支援ください。思い残すことはありません。本日が我が人生最良の日です。」と締め括った。素敵だなと思った。そういうふうに人生最良の日を迎えられた人が何人いるのかわからないが、そうありたいと思った。人生で一番大事なんは続けることや。
最後の起点、は秀逸だ。最も短いが、最もインパクトがある。罪の声の作家に取材について尋ねる息子が、無駄な出張や、取材して人の話を聞いて聞いて聞きまくれという時代遅れの感性に触れるシーンだ。これは、ビジネスにも言える。取材して、情報を足で集める時代から、AIが分析して仮説まで立ててくれる時代。それでも僕は人を信じている。だからこそ、ビジネスが好きなんだろうと思う。生き物だから、そして自分が変えられるから、そして人と一緒に作れるから。こうした感性を、起点、は示し、感じさせてくれる。それぞれの起点、後になってみてわかる、意図せず人の人生が変わる瞬間。その奇跡を筆者は大事に、大事に、言葉にして紡いでいるんだろうと思う。人生もそうありたい。
Posted by ブクログ
さえない中年のオッさんについての短編集。第2話の「鈍い火」が好き。永久保存版として売られないことが決まった。これは割と栄誉な一冊である。
第1話 啓太は広報課の新人だった。小山田という小狡いおっさんが係長。ピントは外れているわ、ケチだわ、妙な嘘つくわと困った人だが、病気の家族の面倒を見る優しい一面もあると知る。
第2話 育郎は育ちすぎてデブである。ベスパで移動している。今日は業務上過失致死の判決を聞いて記事を書く。執行猶予がつくかどうかが焦点だ。ただ裁判の場で知ったのは、引かれた子供が育郎の知合いの子供だったということだ。
第3話 若かりし僕たちのマドンナ、高木由美子とリンネンが結婚したらしい。僕は高校教師で子供が2人いる。
第4話 近未来の話。塩田武士が孫に取材されている。
Posted by ブクログ
文庫550円シリーズ。
薄い本だけど、550円以上に楽しめました。
短編なので合間にも読みやすい。
一番、塩田さんらしい作品だなと思ったのは『鈍い火』かな。だんだん嫌な展開に進んでいくけど、後を引かない終わりかたなので、イヤミスみたいにならなくて良かった。
『仮縫い』は冴えなかったはずの旧友の結婚話から主人公も再生していく物語。
『小さい上司』は何か笑えるダメ上司。"小山田"ってネーミングもいい。
↑ここまでは40歳代の冴えない登場人物が活躍している物語。作者自身も40代なので、自身の経験と照らし合わせているのかな~と思った。
『起点』だけは未来設定。
罪の声(2016年出版)から50年後、孫にあたる大学生が祖父(作者)に取材にきた設定の会話。
Posted by ブクログ
講談社文庫創刊55周年!の企画
550円「STORY IN POCKET」
5月の刊行本。
550円というお値段と
初読み作家さん
“入門、作家さんとの出会いに”
という 書店のポップを見て手に取る。
いつか読んでみたいと思っていた作家さん
4篇の短編集
『小さい上司』 『仮縫い』
ライトで少しニヤニヤしながら
だけど、最後はほんわか、じんわり
自分はまだまだなんだと思い
成長する主人公たちに共感
『鈍い火』
50ページちょっとの短編だけど
読みごたえあり、
終始不穏で少しの恐怖を感じつつ没入できた
最後の表題作の 『起点』
わずか8ページの短編
著者の 塩田武士さんご自身の50年後の未来。
孫が訪ねてきて、おじいちゃんである作家塩田さんを取材するという構成。
AIの進化ですごい事になってる50年後
「とにかく現場に行け、人に会いまくれ 会って話を聞け」と孫に言う塩田おじいちゃん。
すでにAIがあふれていている今
人に会わなくてもなんとかなっていて
便利でもあるんだけど
今にも通じる苦言にも聴こえた。
塩田さんの長編
『罪の声』『踊りつかれて』読んでみようと思う。
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