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合コンで出会った彼女は「猫ファースト」。付き合い始めて半年、やっと会わせてもらった愛猫は……(「エンパイアライン」)。濃い味と濃い感情が苦手なふたりが、それぞれ冷凍庫に隠しているもの(「わたしたちは平穏」)。名前の付けられない、でも誰もが共感できる感情の綻びに寄り添い、心を解放してくれる6つの物語。
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Posted by ブクログ
六の物語からなる短編集。
六の中の『あなた』が気に入った。
娘を出産するまでは夫の転勤に一緒について行った妻の妙子。娘を妊娠してからは、夫の哲郎は単身赴任することに。定年を四年後に控え夫は戻ってきた。
裸眼の夫を見た瞬間、妙子は違和感に襲われた。両目の目じりと目頭。不自然に切れ込んで、薄ピンク色の粘膜が覗いていた。この人、前からこんな目してたっけ。
夫への整形疑惑が浮上する。でも直接聞くことができない。
「あなた整形した」と聞けば良いのだけれど、離れていた時間の長さがストレートに聞くことを躊躇させる。そんな妙子のもやもやした気持ちが、手に取るように伝わってくるところが読んでいて楽しかった。
最後に書かれている妙子の気持ちを表した『ああわたし、この人にずっと会いたかったんだわ、とその時やっと思い出した。』この一文にたぶん、恋しい という気持ちが表れているように思った。
六の物語どれも『たぶん、恋しい』というたぶん感が表現されていて、敬服しながら楽しく読みました。
Posted by ブクログ
一穂ミチさん、初めて読んだスモールワールズが衝撃的で好きすぎたけど、これはソレにも劣らないくらい。短編の名手だなあ。よくこんな設定考えられるなって思うし、その組み合わせもすごい。一番良かったのは、すげえ泣くじゃん。めっちゃ泣くやんとの違いの感覚は、関東の人にはわからんかも、と言いながら僕も関西ネガティヴじゃないけど。妻がスモールワールズの魔王の帰還の姉さんを思い出したと言ってたが、ベクトルは違うけどインパクトは同じくらいだった。こういうのがお母さんだったら、子どももこんなふうに育つだろうなって、感じた。こういうお姉さんの話を軸にしながら、彼女との関係を組み合わせてくるのが、本当天才。アマゴンのエピソードも、アドベンチャーワールドも、それぞれのキャラクターを描きながら、物語に色を添えていてすごい。
Posted by ブクログ
"静かに頑固"笑 「自分もそんなところあるな」と。クラスメイトだったあの子やその子の、表に出ない気持ちを覗かせてもらった気分。
題名の、ストレートに恋しいと言わない"たぶん"が、それぞれの主人公にぴったりだな。
表紙絵の危うい絶妙なバランスはストーリーや可愛いもので成り立っていて、読後コレはあの主人公かな?と遊べた。
ここからはネタバレの好きなフレーズ
・エンパイアライン その一言で「もう一度会いたい」から「何度でも会いたい」になった。
・わたしたちは平穏 たぶん、大多数の人には共感してもらえない。でも、わたしにとってちょっとした食べ物や生活のこだわりで通じ合えることは、容姿やファッションの好みなんかより遥かに重要だった。
たぶん、うっすら不幸になってほしいと祈って、それを見届けるために私との付き合いを切らない(友達について)←コレ、ツボにはまった!
・月を経る 始まりたての人生に用意された沢山の扉は、いつしかぱたんぱたんと閉じられていく。自分で閉めるときもあるが、ほとんどはタイムリミットによって問答無用で。
・たぶんそんな感じ 言いたくなければ言わなくてもいいんです。言わない事で伝わるものもあるでしょう。知らなかった悔しさはあなたのもの。言葉にしない痛みはそれを抱えた人たちのもの。
Posted by ブクログ
一穂ミチ、絶妙な温度感が上手いなぁ。
まず目次を見て、「たぶん、恋しい」というお話がないことに驚き。短編集は大抵表題作があるものだから、あえて短編を総じて題名をつけたのかと。
どのお話も突飛な部分はありつつ、だけど、登場人物たちの言わんとしていることがなぜかわかるような不思議な内容だった。恋愛物は基本苦手なのだが、一穂さんの作品がいつもすんなり読めてしまうのは、恋愛そのものよりも恋愛を通した物の見方や考え方のお話だからかもしれない。
そして、題名。「恋しい」という感情は案外自覚するのが難しいのだと気がついた。嬉しい、楽しい、寂しい、悲しいなどの分かりやすい感情に囚われがちだが、結局のところその根っこ、もしくは大枠には「恋しい」があるのではないか。恋しいからこそ生まれる感情たちに我々は振り回されているのかも。恋しいを自覚することは、自分や世界を知ることの第一歩になるのかなと思わされた。
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