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Posted by ブクログ
坂東玉三郎の歌舞伎を見たのは、2020年10月のことだった。
演目は、夢枕獏作の楊貴妃。まさに、玉三郎は、楊貴妃になっていた。
その舞台を見ながら、美しいとは、こういうことだと思った。女形であるという境界を超えて、神々しいほどの美しさ。
楊貴妃の姿の凛々しさとキラキラと輝く髪飾りと伸びやかな黒髪が、しずしずと幻想的であり、繊細な動きを伴って歩き舞う。歩いているのと舞うことが混然一体となる。あぁ。玉三郎を見ておいてよかった。
本書は、真山仁が、1993年のインタビューの出会いから始まる。じっと、玉三郎をインタビューして、その中から本書が生まれた。確かに、星の王子様が言うように「大切なものは、心でしか見えない」
真山仁は、玉三郎の見えないものを心で見ようとし、言語化する。言葉がもはや生れ出ないほどの苦闘の上での本書の構成。
真山仁はいう。
玉三郎の舞踊は、立ち姿から一挙手一投足に魂が籠もっている。肉体のみならず、衣裳の端々までが、生を得たようにその場を支配する。やがて、それは劇場を飲み込み、その時空をまるごと無我の境地に誘う。
玉三郎はいう
「美を感じる器は、魂だと私は思います。自らの醜さを自覚した上で、魂のあり方で美を感じる必要があります。」
真山仁は「美とは現象の一片を切り取って誇るものではない。もっと人間の根源的な部分=魂で感じ取ってこそ、美は輝きを放つ。 美を追求する人は、己の醜さを自覚している。 それは、辛いことではないのだろうか。 「辛いですね。だから、何かに憧れたり、ひととき、我を忘れる時間を作ろうとする。それによって、醜い自分や居心地の悪さから飛躍できる」 芸術家は、己の醜さからの解放を求め、結果的に美を生み出す。
自分自身の醜さを認め、自覚することで、美は解き放たれる。
「地球上の生物の中で、人間だけが醜い」と玉三郎は続ける。「自らが醜いから、美しいと感じる」のだという。
玉三郎は、「本当は、魂は自由なはずなんですが、日々の拘束によって魂も縛られていく。そこから一瞬飛躍するというか、飛ぶ、あるいは飛ぶことによって解放される。舞踊とは、ある種の引力からの解放なんです」
楊貴妃の美しさは、空間さえも変える。なんという所作なのだ。
確かに、引力から解放された無垢のままの美しさが、目に焼きついた。
見えているもの以上の何かが存在する。それは、恐れに近いものだ。
その静々と歩く姿、そして舞う姿。まさに、風を得て、解き放たれる。
玉三郎の魂を言語化した本だった。
Posted by ブクログ
国宝から玉三郎さんにきました。
玉三郎さんの本ってあまりないんですね。意外。
第二部の「その風を得て」が良かったです。
醜さを自覚してこその美。
自分が何者か理解してこその自分。
現代人への警鐘。スマホで何でもできる現代の危機感。
マツコさんとのテレビ番組でも話されていたけれど、「実」に話すことが大切。私も大切にしたい。
守破離については職場で上司の話で以前学んだ。
何ごともまずは先輩の型を真似るところから始める。
それを完璧に身につけたところで型を破ることができる。自己流。
さらに鍛錬と修行を重ねると新しい流れ、離となる。
こちらも大切なこと。
Posted by ブクログ
玉三郎と真山仁の…、共鳴。
で、ものすごく読みやすくて。
じわり、と、伝わってきます。
第一部
生い立ち。家族。
歌舞伎の世界に入る時、その後。
厳しさ、興味深い。
第二部
それぞれ漢字一文字の章。
ぐっときます。どこまでも、深く、潔い。
そして、魂に繋がる漢字たち。
『醜』から始まります。
〜自らが、醜いから、美しいと感じる〜
〜醜いも美しいも、見分けがつかない〜
『演』
〜自分からの逃避〜
『闇』
〜人は闇から生まれ、闇に死んでいく〜
『妖』『海』
〜自分自身の思考や感覚に海の存在〜
スキンダイビング⁉︎
『情』
〜人間同士が対峙しないと生まれない〜
『粋』
ー東の粋。西の雅。ー
ー粋が過ぎたら下品。雅が過ぎたら野暮。ー
〜粋を磨く〜
〜相手に恥をかかせない配慮〜
〜本質を探求する作業〜
『伝』
〜守破離〜
『花』
〜人を惹きつける存在〜
〜魂を揺さぶる力が色気〜
『風』
ー他者からの評価を風ふうと呼ぶー
世阿弥の風姿花伝ー風を得てー
『老』
ー死に向かって生きるー
ー老いてこそ花ー
『桜』
〜花びらの色〜
『夕』『食』
〜自然なまま〜
『美』
〜移ろっていくものにこそ、美しさが宿る〜
ー羊にまつわる語源 美、善、義ー
終章
司馬遼太郎
ー街道をゆくー
真新しい気づきに、出逢い。
優しい言葉での導きを感じます。
Posted by ブクログ
シンイチは幼い頃から感受性豊かな子で、幼稚園も1日でやめてしまったくらいだった。幼少期にポリオにかかり、足の動きが悪くなる。両親は心配して日本舞踊を習わせた。5歳で初舞台。6歳で守田屋の内弟子になり、坂東喜を名乗る。次に坂東玉三郎を名乗る。坂東弥五郎と坂東田門が教育係としてつく。
光の魔術師である玉三郎は、何より照明に力を入れる。魂を孤立させないための道筋を照らすのが闇だ。
海に魅せられるのはそこに豊穣の無があるから。玉三郎にとって海は想念を存分に解放する世界なのではないだろうか。
東の粋、西の雅。粋が過ぎたら下品になる。雅が過ぎたら野暮になる。経験を積まないで無闇に粋になろうとすると、無礼になってしまう。無礼や下品になったら粋ではない。その塩梅が難しい。
玉三郎の食へのこだわりは独特で、いかに自然であるかを重視する。日本の食材は今やすっかり季節感を失った。農作物は工業生産物になった。
長年、日本像の探究を続け、国内外を歩いた司馬遼太郎さんの視点に共感している。自国を愛するというのはどういうことか、教わった気がする。
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