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Posted by ブクログ
すごく良い話だった。
11歳の"おれ"こと拓人と、友だちの忍、宇太佳の3人はスケボーが大好き。ある日神社の前でスケボーの練習をしていると、管理人さんである田中さんに出会う。スケボーをやってみて怪我をした田中さんの為にお手伝いをしに行くこととなる拓人たち。そんななか、田中さんが11歳のときに戦災で家族も家も失ったことを知る。
すごく優しい田中さんと11歳の男の子3人との友情。田中さんのことを慕い、他のみんなにも田中さんの人生を知ってもらいたいと思う拓人たち3人の一生懸命さがとても素敵だと感じた。
自分たちの街に爆弾が落とされたこと、その犠牲者が24人だったと初めて知ったときに拓人たち3人が咄嗟に「意外と少ないな」と感じてしまったこと、その後犠牲者のなかに田中さんの母と妹が含まれていたことを知り、被害を身近に感じるシーンが胸に迫る。
…二十三人という人数が、妙にリアルに迫ってくる。二組のクラスは二十四人だ。たった一人を残して、みんな死んでしまったということだ。
「そのとき、わたしは十一歳だった」
おれたちは、また三人で顔を見合わせた。自分たちと同じ年だ。心臓がどくどくと音を立てる。
(p.73)
田中さんの話をみんなに知ってもらいたいと動く拓人たち3人の姿も良いが、六年二組の他のクラスメイトたちも田中さんに取材したり、戦争について調べたりと一生懸命になるところが良いなと思った。最初の話し合いで、「人がたくさん死んだ戦争の話なんて聞きたくない。そんな怖い話をわざわざ聞きたくない。悲しい気分になるし」「戦争は昔のことで、今のわたしたちとは関係ない」と言いはる女児の存在も戦争に関して人々がもっているひとつの考え方としてリアルだなと感じた。
田中さんと拓人たちの絆にグッとくる小説だった。
最後の森絵都さんの解説のなかの一節も考えさせられた。
…過酷な人生を生きてきながらも、毎日にこにこと笑顔をたやさない田中さん。チョコバナナ一つにも輝くそのみずみずしい好奇心や、今ある世界を尊ぶ菩薩ぶりは、私たちにとても大事なことを教えてくれる。過去に悲しいことがあったからといって、今も悲しく生きる必要はないと。 (p.193)
Posted by ブクログ
小学6年生の拓人たち3人と神社の管理人をしている85歳 田中さんとの友情、子どもの成長を描いた作品。
ひょんなことから田中さんと関わることになった子どもたち。いままで意識したことのない神社のこと、田中さんのことを知っていく。
管理人としてひっそりと暮らす田中さんにもたらされた子どもたちとの賑やかで和やかな交流。
優しくニコニコ子どもの話に耳を傾ける田中さんと、その日あったことを田中さんに話して聞かせる子どもたち。その光景がとても微笑ましくて優しいほんわかした気持ちになります。
それにしても子どもってすごい勢いで成長していくなぁ。やっぱり経験て大事。
我が子の成長を感じて母親がニマニマする気持ちがわかる。
田中さんが好きな食べ物について話すシーンでは私まで胸がいっぱいになりました。
椰月さんの作品は鋭い切り口のものもあれば、本作のようにじわりと沁みるものもあり幅広くておもしろい。
気になる作家さんの一人です。
Posted by ブクログ
とあることがきっかけで友達とも言える関係になった小学生とおじいさんの話。
主人公は小学六年生のスケボーが大好きな男の子。けれど、公園も道路もスケボーで遊ぶことは禁止されてしまい、遊べる場所を探し求めてとある神社の前の道路はどうかと思いつく。穴場を見つけた、と喜んで同じクラスの友達と三人でスケボーをしていたところに現れたのは、神社の管理人をしているおじいさん。怒られると思った三人だったけれど、そのおじいさんはスケボーに興味津々で――。
小学生の男の子の目線から見た、言葉にしきれないもやもやや葛藤、悩みや決意、誰かを大切にしたいと思う気持ちがいっぱい詰まった良作でした。
きっかけはスケボーに興味を持ったおじいさんが足をふらつかせて転倒した時に手を骨折してしまったこと。初めは嫌々、渋々お世話をしに行ったようなものだったけれど、ただにこにこと話を聞いてくれる相手がいるということは、思った以上に救いになるものだと思います。お父さんやお母さんはゆっくり話を聞いてくれる余裕がなく、二言目には「じゃあこうしたら」「こうしないからいけないのよ」のようにすぐに口を挟んでくる。そうではなく、どんな話でも聞いてくれる人というのは、普段のもやもやや上手く表現できずもどかしい思春期の複雑で傷つきやすい心を守ってくれる。友達と言うには年が離れすぎているけれど、少年たちとかつて少年だった老人は確かに心を通わせているのだと感じさせてくれるあたたかさがありました。
田中さんのことを知って欲しい、戦争の悲しい話をしたいんじゃなくて、ただ田中さんがどういう体験をしてきたのかを知って欲しいんだ、と思う少年たちの気持ちがなんだかとてもじんわりきました。子どもの頃にこんな優しい経験をすることができた彼らなら、きっと大人になっても人に優しくできる人になれると思います。願わくば、頻繁に通うことがなくなったとしても、彼らとおじいさんの友情が長く続かんことを。
思春期の少年たちと、大らかに包み込む老人の、心通う優しい物語でした。
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