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Posted by ブクログ
誉田哲也の幸せの条件を読みました。
就職に失敗して何とか小さな化学会社には入ったけど仕事も恋も中途半端な梢恵がヒロインです。
突然社長からバイオエタノールを作るためのコメを作付けしてもらえるように農家を説得して契約を取ってくるよう指示されます。
右も左もわからないまま長野の穂高村に来た梢恵ですが、訪問した農家に軒並み門前払いをくらってしまい、意気消沈してしまいます。
翌日、農業法人「あぐもぐ」でも門前払いをくらった梢恵ですが、社長の奥さん君江さんから暖かい言葉をかけてもらい、「あぐもぐ」で農業の手伝いをすることになってしまいます。
都会育ちの梢恵には初めてのことだらけですが、だんだん農業の仕事が面白いと感じられるようになってきます。
日本の食糧自給率などの話題もあり、面白く読みました。
Posted by ブクログ
昨年は米価が高騰しました。
原因は、猛暑による精米の供給減に加え、インバウンドなどによる需要の急増や、災害リスクを背景とした買いだめなどが重なったためのようですが、減反政策も無関係とは言えないと思います。
米は安価なものだと勝手に思い込んでいましたが、この作品を読み、思っていた以上に農業に従事されている方々が努力されていることを知り、改めて敬意を表します。
今年は、新米の流通や高値を受けた農家の生産意欲向上などにより品薄感が解消され、需要が一巡したことで市場も落ち着き、米価は安定しています。しかし、昨年のことを忘れてはいけないと感じました。
宮城県沖地震を思い起こさせるような悲惨な場面もあり、私自身も会社の応援で2か月弱、現地に赴いた経験を思い出しました。
好人物ばかりが登場するため、安心して読める作品であるはずですが、自然災害、農業政策、エネルギー政策など、さまざまなことを考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ
誉田哲也さんにこういった作品のイメージがなく、ちょっと意外に思いながら手に取りました。泥臭くも爽やかなお仕事小説でありながら、日本の農業の問題提起もされていて、読み応えありました。
無気力で鈍臭くて要領悪くてマイナス思考(言い過ぎ)な、今どきの若者っぽい梢恵ちゃんに勝手ながらシンパシーを抱き、事務からいきなり現場に放り出されて文字通り泥臭く働くことになる展開にこちらも不安を覚えつつ……
出会った人たちと与えられた仕事に向き合い、その中で確かな自分の居場所を見つけて、農業やエネルギーの問題、自分自身や社長達との関わり方も変わっていく姿が素敵でした。見習いたい。
浅学にして、食料自給率はカロリーベースなので当てにならないという話を知らず生きていました。
農業、エネルギー、自然災害。私は知らないことばかり、知ろうともしていなかったことばかりだなと痛感しました。
Posted by ブクログ
私に何かクリスマスプレゼントを買いたいと考えていたらしい息子が、なぜか本屋さんでこれを買ってきた。誉田哲也さんを読んだこともなかったし、タイトルからしても自分では買わないと思う。でも初めての、息子からの100均ではないプレゼントなので(笑)ちゃんと読みましたところ・・・
とても面白かったです。そして、泣ける箇所もありました。
まぁ、だいたい先が読めてしまうところはありましたけど。
主人公の梢恵は、大学の理学部を出たものの、希望の会社には就職できず、小さなメーカーで社長の雑用のような仕事をしている。特にやりがいも感じないし、社長から必要とされているようにも思えない。だれでもできるような仕事しかしていない、と感じている。彼氏とは学生時代からなんとなく続いているだけで、それもマンネリ状態。はっきりと、「きみのどこが良かったのかよくわからない、距離をおこう」みたいなことも言われてしまう。
そんなとき、元々ワンマンタイプの社長が思いつきで、梢恵に長野出張を命じる。農家に行って営業をかけ、休耕田にバイオエタノール用の米の作付けを依頼してこい、契約を取れるまで帰ってくるな、というけっこう無茶な命令。そのときに、おまえは会社に必要ない人間だ、というようなことも言われ、傷つき、落ち込む。
促されるまま長野へ行く梢恵。
当然、大事に育てた米が燃料になるなんて、そんなことしようと思う農家はいない。そもそも梢恵は農業のことをほとんど知らない。しかも農家のつながりは密で、梢恵が何をしにこの集落にきたのか、半日で何軒もの農家に伝わってしまう。
無力感を感じる梢恵・・・。しかしそこに、一軒の農家(の奥様)が救世主として現れ、梢恵の話を聞き、この集落一帯の耕作地を請け負って農業法人として経営している夫に取り次いでくれる。
ここまでが序盤。その後は、梢恵がその農業法人「あぐもぐ」で、一緒に働き、農業について知り、東京ではわかり得なかった価値観に目覚め、成長する物語。農業がいかに大変な重労働か、でもどんなに魅力的で、命の根本に関わる尊い仕事なのかがシンプルに描かれている。ありそうでなかった小説なのではないかな、と思いました!
息子が何を根拠にこの本を私に選んだか知らないけど、いつも食事のときに「感謝して食べよう」とか、「食べ物があることを当たり前と思わないで」とか、食料自給率の話とかをしている私にぴったりの本を選んでくれたっぽい笑。
食料自給率についても、私は仕事で教えることもあるので正しく理解しなければならないけど、色々と参考になった。「日本は食料自給率が低い」なんて一概に論じるのはまやかしである(これはカロリーベース計算だからで、野菜などはたいてい国産のものを食べている、このことは知っていた)。食料自給率が40%以下だとか聞くと、外国からの食料輸入がストップしてしまったら日本人が飢え死にする、というイメージを抱く人が多いが間違いで、外国からの食料輸入が仮に完全にストップすると、日本の食料自給率が100%になる。なるほど。
そうなったとき、自国の農業生産で日本人に必要な食料をまかなえるだけのポテンシャルが、実は日本の農業にはある。(この説明はわかりやすく、あぐもぐの社長が梢恵に語るという方法で示されていて、興味深かった)。
などなど、すごく勉強になる内容でした。文庫の最後についている参考文献もできるだけ読みたいと思った。
梢恵がまだ雪がつもっている2月頃から、一夏の農業体験を経て、秋に収穫するようになるまでをあぐもぐで過ごし、読者にも「梢恵はもう、ここで生きていくのでは?」という感じがし出して、もとの会社の社長と話し合う場面のところは泣けました。そして、社長の話も深かった。
「会社に必要とされる人間」なんていない、どんな仕事だって、例えば社長である自分の仕事だって、代わりになる人はいくらでもいる。会社(仕事)から必要とされるのではない、自分がその仕事を必要だと思えるかどうかだ・・・。自分はこの仕事をするのだ、と、思えるかどうか・・・。
私の仕事もまさにそれ。私の代わりは、いくらでもいる。私にしか務まらない仕事をするのでは、逆に迷惑になる。組織の一員として、国が決めた学習指導要領にそって教育をしなければならない。異動もある。私がいなくなったら、次の人が引き継ぐ。でも、私自身がこの仕事を選んで、私自身がこの仕事を必要としているのだから、精一杯やるしかないのだ。
梢恵の外見は、小説ではもちろんわからないのだけど、想像するしかないのだけど、小説を読み進めると、彼女の外見が変わっていくのが手に取るようにわかる。農作業で体力がつくだけでなく、表情やしぐさ、自信の表れなど・・・最後に社長と話す場面、彼氏と話す場面でも、梢恵は変わったんだなって、その様子が思い浮かぶ。
この後、この著者の他の本を読むか、この本の後ろに紹介されている農業関連の参考文献を読むか・・・うーん。
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