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何かを断たなければ、生きていけない。
父は、女にだらしのない鍛冶職人だった。物心ついたとき、すでに母はいなかった。綺麗な着物を着せたる、という父の誘うような言葉に乗じて、12歳だった彼女は、気が付けば菜乃葉の名で大阪にて舞妓見習いをさせられていた。
14歳で旦那への腹いせのようにして小指を切り落としたことで世間の耳目を集め、ブロマイドは飛ぶように売れた。花柳界から退いたあとも、社長夫人、映画女優と華やいだ世界に身を置いた。
それでも、彼女の心が定まることはなかった。38歳、仏門を叩いた。
Posted by ブクログ 2022年08月29日
「綺麗な着物を着せたる」
父親の言葉に誘われ騙されて、12歳で花柳界に売られた。高岡智照尼の壮絶な人生を、史実を元にフィクションとして描いた本。
窪美澄さんの本は初めてだが、とても読みやすかった。大人達の思惑に翻弄されながらも、そこで生きていくしかなかった少女。心の機微が痛いほど伝わってきた。
...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年03月07日
高岡智照尼と言う人を知らないままで、読み始めた。
前半は、あっという間に引き込まれてしまった。
後半に入る頃から、よりスピード感のある流れに。
瀬戸内寂聴さんをチラッと思いながら、読み進めたのだけど、高岡智照尼をモデルにした小説もあるらしい。
俳句、文筆業に取り組んでいるころから、取り巻く人たち...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年02月03日
女は強し
ってな事で、窪美澄の『朱より赤く 高岡智照尼の生涯』
高岡智照尼の生涯の史実を元にしたフィクション。
壮絶な人生を駆け抜けると言うのか、幾多の高い壁を飛び越えて行く生き様に感銘を受けるね。
女性にとって生きていくのに非常に厳しい時代に果敢に立ち向か...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年12月31日
大正から昭和にかけての時代、舞妓として親に売られてから波瀾万丈の人生を送った女性の物語。
自分の意思だけでは、どうにもならなかった人生。
実話ベースなので爽快な逆転ホームランもない。
幸せとは言いがたい彼女の生き方を黙って見ていることしかできないとはいえ、切ない気持ちになる。
今はもう昔、の話なのだ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年08月18日
主人公の生涯の濃密さにしては少々急ぎ足。
もう少し丁寧に書いてあったら
もっと感情移入できたかも。
明治の終わり頃からのこの時代、
男は身勝手で女は耐えるという図式のみでは少々物足りない。
男も女ももっともっと葛藤はあったはず。
瀬戸内寂聴さんの「女徳」のモデルとか。
寂聴さんならどう描くか読...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年03月31日
実在の人物を描いている小説。ひとりの12歳の女の子が花柳界に入り、波乱万丈な日々が続き、その後は仏門を叩く所で終わっている。少し物足りないような終わり方でしたが、窪さんは淡々とこの女性の人生を受け止めつつ、極力私情が入らないような書き方だと思いました。もし、本当に高岡智照尼の事を知りたいと思ったら、...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年03月31日
窪さんにしては珍しい、明治から昭和にかけて、実在の人物を描いた小説。人気芸妓を経て、38歳で尼僧になった高岡智照尼、芸妓時代の名は照葉(小説では琴葉)の、子供時分にお茶屋に売られてから、出家して尼僧になるまで、大阪から新橋、そして、米国にも渡った、波乱万丈の人生。なのだけど、これだけの数奇な運命、2...続きを読む
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