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江戸歌舞伎の大作者、三代目桜木治助の孫で現在は大学に奉職する桜木治郎は、その知識と審美眼で役者や裏方から厚い信頼を集めていた。昭和八年四月。女優となった姪・澪子と陸軍軍人・磯田との見合いの席が木挽座で設けられた。舞台では歌舞伎界の「女帝」荻野沢之丞が舞う中、澪子は真向いの席の男女に違和感を抱く。その翌日、木挽座そばで右翼結社「征西会」大幹部・小宮山正憲と芸妓・照世美の惨殺死体が発見された。治郎は警察から協力を要請され、澪子も自身が目撃した二人の奇妙な様子を治郎と磯田に打ち明け、それぞれの立場から事件の真相に迫っていく。歴史の歯車が戦争へと大きく動いた昭和八年を鮮烈に描く圧巻の歌舞伎ミステリー!
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Posted by ブクログ
渡辺淳一文学賞から
日中戦争間近の昭和8年東京。
歌舞伎の殿堂木挽座を舞台に巻き起こる殺人事件を追った劇場時代ミステリ。
2021年に出版された小説ですが、普段時代物に慣れ親しんでいない身には「本当にこれは現代に書かれた文章なのか」と思うくらい初めて見る熟語や比喩表現が多く。
久しぶりに読書初心者気分を味わうというか、文字の上を滑っていってしまう目線と格闘しながら読み切りました。
でも、それでも読み切れたのが「面白い」ということなんだろうな。
歌舞伎という伝統芸能の、役者だけでなく裏方やお得意様まで含めた歴史あるしきたりが築かれている特殊な世界。文明開化、西洋化の波の中で浮き彫りになる階級社会。戦争へと向かう社会の、ともすれば洗脳とも紙一重になるような若者の危うい思想。
時代の空気と伝統の格式が融合された中で展開されるミステリ、自分は全く触れたことのない作風だったからとても新鮮でした。
もうひとつ、この1冊を経験したことで吉田修一さんの『国宝』を読んでみたいなと思えたことが大きな収穫。
映画は本当に傑作でしたが、あの世界を、歌舞伎の舞台を言葉でどう表現しているのか。気になります。
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