作品一覧
ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
現在のところ最新の翻訳で、最良のものだと思う。昔のベルクソンの翻訳は主に仏文学者がやっていたことが多く、そのせいか良質の仏文学を読んでいるような感覚があったのだが、最近の(主に哲学者による)翻訳ではその香りがなくさみしく感じていたところだった。ところがこの本にはその感覚があり、やはりそれはもともとベルクソンが持っているものだったのだと改めて思った。
解説も内容の的確な要約など適切。ちなみに、p.377に「最近の「純粋想起」という翻訳は(略)致命的」とあるが、それはちくま学芸文庫の合田正人訳と白水社の新訳全集の竹内信夫訳の二つを指している。
最近のものとしては岩波文庫の熊野純彦訳もあるが、こちら -
Posted by ブクログ
私たちは普段、何かを感じ何かを考えながら生きている。その思考によって成果を出すことは今の社会においては頻繁に求められることだろう。そして、私たちは創造的な思考を求められるが、同時にその思考は現実を捉えていなければならない。
では、考えるとは実際どういったことなのか。私たちの思考はどのようにして働いているのか。その一つの答えを出すのが19世紀から20世紀の哲学を代表するこの本の著者アンリ・ベルクソンである。
「どんな抽象的な思考も、その出発点は常に知覚です。」
私たちの思考は知覚から得たものを配列し直すことはできるが、その材料は知覚から得るのである。そしてこの知覚とは、ただ目の前のものを見るこ -
Posted by ブクログ
たいへん示唆的な哲学書である。しかも、訳文が読みやすい。「産業的」「優勝的」など意味不明な言葉が少しあるが、岩波版より論旨は追いやすい。結局、この著作のポイントは、すべてを生命の流れ、つまり「純粋持続」のもとにみるということだろう。また、進化の観点からみれば、知性は行動するために生命がつくったものなので、必然的に限界があるのである。ダーウィンやアイマー、ド・フリースやラマルクなどの進化論思想の読み解きも面白い。進化には結局、生命の意志があるのだ。思想の映画的メカニズムをもとに、科学思想を検討するところもみごとである。カルノーやクラウジウスなどの熱力学にも少しふれているが、アリストテレスの科学論