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生命は、「生の弾み“エラン・ヴィタル”」を起爆力として、不断の変形を重ねてきた。目的的ではなく、多様な方向に自由な分岐を繰り返す生命の進化の過程―それはわれわれの意識にも通じるものである。時間、意識、身体、記憶―超越論的存在を直観的把握によって解明しようとしてきたベルクソンが、さらに生命の根源へと思索を深める。刊行するや全世界で反響を呼び、生命概念を刷新するとともに、ベルクソンの名を高めることとなった主著。ちくま学芸文庫版オリジナル新訳。
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Posted by ブクログ
たいへん示唆的な哲学書である。しかも、訳文が読みやすい。「産業的」「優勝的」など意味不明な言葉が少しあるが、岩波版より論旨は追いやすい。結局、この著作のポイントは、すべてを生命の流れ、つまり「純粋持続」のもとにみるということだろう。また、進化の観点からみれば、知性は行動するために生命がつくったものな...続きを読むので、必然的に限界があるのである。ダーウィンやアイマー、ド・フリースやラマルクなどの進化論思想の読み解きも面白い。進化には結局、生命の意志があるのだ。思想の映画的メカニズムをもとに、科学思想を検討するところもみごとである。カルノーやクラウジウスなどの熱力学にも少しふれているが、アリストテレスの科学論が類や概念の絶頂、つまり特権的な時間、をみるのに対して、近代科学は特権的な時間を否定し、時間を細分化し、そこに運動をあてはめ、法則をみようとする。だが、どちらも「あらかじめ全てが与えられている」という観点からみれば共通なのである。これらの古代・近代の科学に映画的メカニズムをみたベルクソンは、存在の根本理解として、予見不可能な全てが全てに浸透している純粋持続を語るのである。古代の科学と近代の科学のちがいとして、実験をみるのは間違っているという指摘も面白い。実験は古代人もしていたのである。むしろケプラーの研究などは思弁の産物なのだ。彼の哲学は常識と「直感」を大事にしているが、とくに気になるのは、ベルクソン自身はいっていないが、中国思想との関わりである。王陽明の知行合一や、生命の流れとしての物質観は「易」とよく似ている。生命の哲学は東洋とつながるものだ。なかなか普遍的なテーマである。
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