田中ひかるの作品一覧
「田中ひかる」の「血契のアナスタシア」「明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
NHKの朝ドラ「風、薫る」の原案。
明治時代、日本初の看護婦となった女性たちを描いたもの。
大関和(ちか)は、幕末の1857年、下野国の黒羽藩(現在の栃木県)の国家老の娘に生まれた。
藩主とは縁戚だったが、その藩主が誼の長い会津を攻撃することになる前にと自害してしまう。
父は国家老を辞し、明治9年に病没。その前に同僚だった家老に求められて、娘の和の縁談をまとめていた。30も年上で、妾が複数いる男性だったのだが。
二児をなしたのちに離婚。妾とは別れるという約束を果たさないのが理由だった。
この辺は、商家の嫁になり一女を生んだが夫が酒乱だから別れたドラマとは違いますね。
現代人が朝見るのにはきつ過ぎる点を略し、当時の身近な女性の境遇なども要素として混ぜたような感じです。
離婚後、裕福な家庭の女中に入り、英語の勉強を始め、キリスト教にも関心を持つ。
英語ができるという理由で鹿鳴館の慈善市の手伝いに出向いて、大山捨松と出会い、英語講師と通訳として働く。
3年目に、牧師の植村正久に、看護婦養成所が出来るので入学するよう勧められた。
看病婦は卑しい職業とされていたのでためらうが、ナイチンゲールの偉業を熱く語られ、真心で人を助け神の慈愛を示すべきだと言われて感銘を受け、入学を決意する。
看護学校の新入生は8人。同じ28歳なのは、長身で断髪の鈴木雅だけでした。
英語が堪能で理性的な雅は、感情的な和とは好対照だった。
ドラマの直美さんのモデルですが、モデルの方は孤児ではなく、女郎の子でもなく、独身でもなく、二児のいる未亡人。
大関和がモデルのりんさんとは違うタイプにするためと、廃娼運動との関わりなどをこういう形で表現したのかなと思われます。
日本で看護婦というものが初めて登場し、看護学校がだんだん増えていく。そのいきさつも非常にややこしいので、かなり簡略化されているのは理解できます。
明治時代前半の差別やいじめは、想像を超えて、強烈。
個人の問題でもあるけれど、そもそも法律がね‥
でも、変わっていく時代でもあったのです。
新潟の女学校の舎監になるのは史実だけど、その前に病院を辞めた理由は違う。ドラマのは突っ込みどころ満載の行動でしたものね。
とはいえ大関和さんもなかなか大胆なところがあり、その分、人間的な魅力に富んでいたようです。
そのひたむきさ細やかさ、人の心を開く態度に、看護婦の評価は上がっていきました。
伝道者的な献身を重んじる大関和と、教育を受けた技術を提供し、女性の仕事として確立することを重んじる鈴木雅。
考えの違いは最後まで変わらなかったが、何年も両輪のように活動し、看護婦の普及や制度の改革を進めた。
仕事を離れても、友情は変わらなかったそうです。
こういう人たちが、強い意志を持って、実績を積み上げ、声をあげ続けたのだと。
感動を覚えずにはいられません。
小説仕立てということで。
仮名にしたところがあったり、想像される感情ややり取りを補っているからということですが。
自分なりのカテゴリでは「自伝・評伝」に入るかも。
「歴史もの」というカテゴリは、フィクションかどうかを問わないので、こちらにしておきます。
Posted by ブクログ
素晴らしい。朝ドラは観てないけど興味が湧いて読んでみた。それにしてもこの時代の多くの日本人女性の頑張りには感動する。男女差別に苦しみ、人として当たり前の権利を獲得するための社会的必要性に迫られてのことだろうが、各方面でのこの柔軟で優秀でガッツのある女性陣の活躍ぶりよ。大関和(チカ)は不満のあるダンナを離縁し、子供を連れて婚家を飛び出し、実母の協力を得ながら看護学校で知り合った生涯の友となる鈴木雅と手を取り合って職業としての看護婦の立ち位置を確立していく。女性が働いて自立することも看護婦人という職業も何もかもが当時としては新しいことだったのに、和はどっちも体当たりで挑んでいく。信念と慈愛の人。働きながら英語を身につけ、ナイチンゲールが書いた原書を翻訳し、手探りで看護技術を学び、伝染病の看護や性的搾取されていた娼妓の支援などキリスト教の信仰心を胸に弱い人に寄り添い続け、なおかつ多くの看護婦人を育て上げ世に送り出す。2人の子が若くして亡くなってしまう不幸に見舞われたチカが、仕事をすることに全力を注ぎすぎてあまり育児に関われなかったことを悔いて悲しみに暮れる姿には涙が溢れた。これほどまでに生涯にわたって世のため人のために身を削り、多くの人と関わりながら社会を変えていく仕事をこなして後世に繋がる多大な業績を残した女性たちのことを私は最近まであまりにも知らなすぎたと反省しきり。本当に勇気をもらえる。多くの女性に読んでほしい本。