全員、いつか、必ず死ぬ(なんかそれも覆りそうな気配だけど、現時点では、まだ)。そして、どう死ぬかを決めなきゃならない事態もありえる。だから、哲学者の論考も大切だけれど、みんなが手にとれるポピュラー・哲学みたいな本もあっていい。これは、そういうニーズにうまくはまる本だと思う。
医学って、残酷だ。患者
...続きを読むにとってもそうだけど、それ以上に、死なせるか死なせないかを決めなきゃならない医師の方の心のケアってどうなってんだろう?あと、遺族のケアは??制度として安楽死が設定されてなくても、尊厳死は(患者の精神力次第では)今の日本でもできる。死ぬ本人はいい。納得ずくだし、後がないから。たぶん。でも、そうさせた医師は?遺族は???疑問が残る。
あと、スイスに行けば安楽死ができる。それは事実だけど、ずいずんと安直な発想なのだとこれ読んで思った。向こうは向こうで裁判とか大変らしい。そして、ケアもけっこう雑だし、英語でタフな交渉もしなきゃならないらしい。じゃあオランダは?ベルギーは?って言ったら、そっちもそっちで「すべり坂」が発生してて、まだその対策は追いついてないらしい。
「欧米」なんてものは、日本人の頭の中にしか存在しない。それをさも尊いもののようにありがたがるのは、もうやめたほうがいい。日本は日本のやり方で行くしかない。安楽死がどうの、っていうよりも、舶来物をありがたがる習慣から変えた方が良さそうだと思った。
そして、QOLの決め手は周囲の人との関わりと経済状況なんだと思った。本書の登場人物のユカさんにしてもYくんにしても、伴侶に恵まれ、医師に恵まれ、地域のシステム(地域の保健室というものがあるらしい)に恵まれている。経済的にもある程度の余裕がある。
究極の贅沢品。
それが安楽死なのかもしれない。