ダン・シモンズの作品一覧
「ダン・シモンズ」の「ハイペリオン」「雪嵐」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ダン・シモンズ」の「ハイペリオン」「雪嵐」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
アメリカのSF作家。『ハイペリオン』、『ハイペリオンの没落』をはじめとするハイペリオン四部作、『イリアム / オリュンポス』など多くの作品を手がける。『ハイペリオン』では第26回星雲賞海外長編賞を受賞している。
小説・文芸
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Posted by ブクログ
銀河を覆う転移ネットワーク“ウェブ”が支配され、200以上の惑星が次々と崩壊していく。宇宙の命運を懸けた戦争は、ついに終盤へ──シリーズ第4作目。
これまでの旅で出会った数々の星が、無惨に滅びていく光景は胸を打ちます。それでも巡礼者たちは、人類のためではなく、友のためにそれぞれの道を選び、時間・宇宙・データの彼方を駆け抜けながら、自分なりのやり方で宇宙を救っていく。その姿は、まさに彼らの旅の集大成と呼ぶにふさわしいものでした。
特に鮮烈だったのは、AI=テクノコアの正体と陰謀です。彼らのサーバー(本体)は“ウェブ”そのものであり、転移ゲート間の隙間に隠されていた。そしてゲートを通過する人間のシナプスを演算資源として利用する事で、動力として利用する。さらにシュライクを解き放ち、人類抹殺による下剋上を狙う──1作目から示唆されてきた「ウェブ」「AI」「シュライク」という要素が、ここで見事に収束していく構成に唸らされました。
そして圧巻は、世界中の転移ゲートを破壊するという決着です。これはディストピア作品の王道ともいえる「支配の仕組みを壊す」展開でありながら、“ウェブ”を失うことは即ち、人類が1000年以上かけて築いてきた文明そのものを巻き戻すことを意味します。その代償はあまりにも苛烈でした。ゲート通過中の人間は細切れとなって絶命し、数多の人々が宇宙の片隅に取り残され、家族とも再開できず生きる術を失う。世界中の人類が地獄に突き落とされる、この凄惨な描写は、今年読んだ中で最も衝撃的なものでした。
さらに、テクノコアの真意を掴めず操られていた間は崇められ、彼らの手から世界を解放した途端に、暴徒により惨殺されるCEOの末路も、人間社会の残酷さを突きつける象徴的なエピソードでした。
最後に、巡礼者たちが再び集まり、領事は宇宙の彼方へと去ってゆくラスト。
もはや“ウェブ”は存在せず、今度の別れは永遠のものとなる。しかしそれでも、自らの宇宙船で少しずつ宇宙を切り拓いていこうとする姿は、人類が開拓者としての強さを取り戻したような終わりで、清々しくて良かったです。
人類の栄華と崩壊、そして再出発。その全てを描ききった壮大な結末に、ただ圧倒される一冊でした。(もっとも、物語自体はまだ続いていくのですが。)
Posted by ブクログ
銀河連邦と蛮族アウスターの戦争がついに本格化し、舞台は人類最後の未踏地・ハイペリオンへ。壮大な銀河叙事詩も第3作目に突入します。
本巻では、巡礼者たちと未来から送り込まれた怪物シュライクとの対峙が描かれ、シリーズ全体の大きな転換点となります。
科学が頂点に達した末に、衰退の道を辿る人類。蛮族と蔑んできたアウスターにさえ後れを取り、滅びへと傾いていく人類ですが、そんな中で社会に居場所を失った巡礼者たちが、人類最後の切り札として世界を駆けてゆく。銀河連邦と巡礼者、マクロとミクロの視点を往還させながら描かれる衰退と再起の構図が、強く胸を打ちました。
そして、連邦CEOが巡礼者達の故郷を次々にワープしながら、彼らの行く末を案じるシーンが好きでした。
本作が特に異彩を放つのは、「神」という存在を徹底的に物語に落とし込んでいる点です。AIが凝縮した知性によって創造された上位知性体UI。未来から現れ、裁きを下す処刑者シュライク。そして、自然発生した究極知性体。科学が神を不要にするほど発展した世界に、なお複数の「神」が示唆される。それらは“デウス・エクス・マキナ”の異なる側面として機能し、ご都合主義として語られがちな概念をここまで鮮明に具現化した作品には、これまで出会ったことがありません。
ハイペリオンという最後の未踏地。その旅の果てに待つのは人類の終焉か、それとも新たな夜明けか──。
圧倒的なスケールで展開する物語を前に、続く下巻への期待を高めずにはいられない一冊です。
Posted by ブクログ
「読むのが早すぎた」という感想に尽きる。自分には、本作を味わえるだけの文学的教養が足りなさすぎた。しかしそれは、以後再読した時により解像度を上げて物語を味わえるという楽しみが残されているということでもあるので、悲観しないようにしようと思う。
ネタバレが絶対にイヤだという人にはおすすめしないが、上巻を読み始める前に、下巻の物語完結後に収録されている「訳者の物語:時の過ぎゆくままに」を読むことを強く勧めたい。その方が挫折する危険性が少ないと思うからだ。設定をある程度理解できていないと物語に入り込む前に匙を投げたくなる、というのはSF小説あるあるだと思っているが、私としては本作もそのカテゴリーに属する作品と言わざるをえない。しかも、本作の場合、大抵のSF小説では作品の骨格を成すSF的設定は物語全体の中核にはなっていないからそれがまたややこしい。逆に、そうしたSF的設定を気にせず、入れ子構造で語られる登場人物たちの個々の物語を純粋に楽しむという姿勢で読んだ方が楽しめるのかもしれない。しかるに、どのような「態度」で読めば本作を楽しめるのか、という部分で「解」を見出せなかったことに、私自身が本作を心から楽しめたという気分になれなかった要因があったと自己分析している。読み進めても物語の全体像がなかなか把握できないからなのかもしれないが、全体としてはSFというよりファンタジーの要素が強いように感じた。映像化に関してはアニメ向きなのかもしれない。
また、1つの作品の中に多種多様な文章スタイルやジャンルがごった煮にされているところも、自分が物語に入り込めなかった要因だったように思う。著者シモンズのこのやり方が面白いと思えるのであれば話は別なのかもしれないが。
上記のように不満点を書き連ねつつも、本作の評価は個人的には低くはない。好みの問題はあると思うが、登場人物たる巡礼たちが語る個々の物語はそれぞれ面白いからだ。不思議と、思い出してつまらなかったと感じた物語は1つも無かった。とりわけ、「学者の物語」「探偵の物語」そしてラストを飾る「領事の物語」はそれぞれ胸に迫るものがあった。しかし、個々人のミクロ的視点から語られる物語からは本作の全体像は依然として明らかにならない。それは続編の『ハイペリオンの没落』における俯瞰的視点によって明らかになるようだ。少し時間を置いてから、続編に挑みたいと思う。
Posted by ブクログ
『ハイペリオン』シリーズ四部作完結編。多くの脅威が迫る中、ついに明かされる謎。果たして人類の運命は……?
文庫本で全8冊になるシリーズの最終巻である。あらゆる要素がてんこ盛りな本巻については、多くは語るまい。作者が書きたいことをすべて詰め込んだかのような、総決算のラストだった。
パクス、テクノコアの動きを描きつつ、やはりエンディミオンとアイネイアーを主軸として物語は進んでいく。情報を小出しにするアイネイアーの老獪さがもどかしいが、そうせざるを得ない理由もやがて明らかに。知能や精神担当でカリスマになっていくアイネイアーに対し、肉体派、冒険担当のエンディミオン。しかし、「覚醒」とタイトルにあるのは伊達じゃない。あれ……ド◯ゴ◯◯ール?さらに、ここにきてハイペリオンの7人の巡礼たちとのつながりが明かされ、彼らの物語の謎も解明されていく。
結末について、これでいいのかとモヤモヤしてしまったが、巻末の解説にあるとおりに当該箇所を読み直してみると、おっしゃるとおり、確かに納得いくものがあった。なるほどそう考えると、この結末と、アイネイアーの言動のすべても、ストンと腑に落ちる。そして壮大なこの物語が自分の中で見事に完結するのだ。読み切るまで時間がかかったけれど、本当に出会えてよかったシリーズ。いずれ再読したい。