奥村宏の一覧
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ユーザーレビュー
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20年ほど前に学生だった私は氏の著書「企業買収」を読んだ。そんなことを思い出した。当時読んだ書物で覚えているということは印象的だったんだろう。ありきたりな東電批判ではなく巨大株式会社の矛盾点を表している。逆にいうと原発事故を利用して自説を展開しているとったら穿ち過ぎか。何はともあれエスタブリッシュに
...続きを読むはご退場願おう。という意見には100パーセント同意する。日本という社会の持つ矛盾点、問題点は全てそこに通じる。東条英機、マッカーサー、落合博満、そして東京電力。本質は全て同じだ。
Posted by ブクログ
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ピケティに欠けている株式会社という視点、という副題がつけられている書籍で、実を言うともしかして、ピケティを読んでいなくても別の意味で役に立つ本かもしれない。株式会社の成り立ちのいきさつや、日本でたどった特異な歴史に触れられているからである。
読み始めると、株式会社について相当にながい記述が続く。ま
...続きを読むた、著者の前身が記者で、そこで取材されたことや、目にしたことが、書かれる。あれ、と思うのだが、それは、もう、続く。株式会社が産声が上げた頃からの話だ。そして、それが実を結ぶのは、株式会社が、一方で株式会社の実質的所有者である株主の有限責任、つまるところ、株主は、買った株に出資した以上に責任を問われることはない、ということ、に対して、株式会社が引き起こすかもしれない危険と矛盾だ。日本では特に、法人に刑法が適用されるか、は重大な論点になっていた。エンロン事件で、顧客に多大な損害を与えながら、経営者はストックオプションを利用して莫大な利益をあげている、矛盾。アメリカでは、彼らに懲役刑を科したが、日本では福島の地震で引き起こされた東電へ責任を問う術のない事実である。そこでは、弱い立場に立たされた者が、一層弱い立場に立たされる矛盾が内包されているのである。
ここでは、株式会社の矛盾が二重の意味で重くのしかかっている。つまるところ、株式会社が有しているところの責任財産である資本以上の損害を手当てする方法が実質に実現不能になる可能性と、法人である株式会社に対する刑法の適用の不能である。
そして、これがどうピケティと関係するかだが、ここで現在のお金持ちがどのようにお金持ちになったか、である。土地などの不動産については出発点の差として扱われているが、おおくは金融であげた莫大な利益のつくりだした格差であるとする。彼らの多くが会社の経営者であることを考えるとストックオプションなどから相当に利益がもたらされている可能性がある。そもそも、ストックオプションは雇用者の財形に寄与することを意図してつくられたものであったのに、である。思うに、一定以上の利益は、還元する仕組みをつくるべきなのではないか、例えば、会社の資本に還元するとか、そうでなくても、温暖化に備える基金をつくってそこに資金としていれられるようにするとか。株式会社のひきおこす可能性のある将来を考えると、むしろこうしたほうがバランスがよいのではないか。
この本は、ピケティの提示する不等式と、実は対する視点を出しているわけではない。しかし、株式会社のかかえる問題の延長上に格差のある問題もあるようだ。
Posted by ブクログ
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エンロン事件、ワールドコム事件、ライブドア事件、プリンシパルエージェンシー問題、村上ファンド事件、利益相反など、近年の資本主義市場において起こった問題の理論的/歴史的背景を概観できる良書である。ある程度知識があった状態で、知識の体系化として読むのが良い。
主な論点は以下の通りである。
【エンロン
...続きを読む/ワールドコムを粉飾へ駆り立てた構造】
・所有と経営の分離→プリンシパルエージェンシー問題→ストックオプションの導入による投資家と経営者の利害関係の一致(背景にはインベスターキャピタリズムによる株価上昇圧力の問題)→時価総額経営→粉飾へのインセンティブ増大
【各社の粉飾スキーム】
エンロン→SPEを通じた自社株評価益還流
ライブドア→投資事業組合を通じた自社株売却益還流
ワールドコム→オンバランス化を通じたコストの過少計上
山一証券→損失の飛ばし
【会計士事務所がコンサルティング部門をもつことによる利益相反】
アーサーアンダーセンの第2位顧客はエンロンだった。
【ライブドアによる需給逼迫を利用した株価吊り上げスキームの源流は1970年代にもあった】
・(安定株主政策がもとから存在→)株式の時価発行が解禁→プレミアムで第三者割り当て増資することによって需給関係を悪化させず資金調達+調達資金の一部を既存株主に割り当て+安定株主工作による需給逼迫で株価吊り上げ、を組み合わせたスキームが横行。最たるものが三光汽船。証券会社もディーラー部門で多額の利益を得た。
【日本式買い占め(グリーンメーラー)】
株式を買い占めて脅迫して高値で会社に買い取らせるスキーム→1970年代に横行。代表例は豊田自動織機株の買い占め→ライブドア、村上ファンド、楽天で復活。
【アメリカのコングロマリット化からLBOまでの流れ】
コングロマリット(買収により低PERの会社を買っても高PER会社側のマルチプルが適応される歪み)による企業価値増大の拡大→反トラスト法によるコングロマリットの解体→新たに登場したジャンクボンドを活用したLBOスキーム(背景にはジャンクボンド発行による証券会社の利益)→会社の資産を食い物にしてTOBの原資を返済する悪徳な方法
【アナリストとの馴れ合い】
ITバブルのときはアナリストが会社側と馴れ合ってBUY推奨を出し続けた。背景には、IBD部門やディーラー部門との共謀による利益相反関係。
Posted by ブクログ
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「ピィティに欠けている株式会社という視点」という副題がなければ手にしていない本だったかも知れない(笑)。
しかしながら、奥村氏宏氏の経歴を知ることなり、楽しく読めました。
氏が、哲学書青年であった大学時代を過ごし、産経新聞の経済担当記者が「株式会社」をその後研究する市井の学者になっていったという件が
...続きを読む面白かった。
また、一貫して「株式会社」の研究を継続されている真摯な態度に共感するものがありました。
機関投資家資本主義、会社が大きくなりすぎている、そして、法人としての会社が自然人を想定している刑法の枠外に位置することの理不尽さが書かれている。
宇沢弘文氏との接点があり、「シンクネット・センター21」が立ち上がったが、すぐ閉鎖されたということは残念でありません(涙)。
Posted by ブクログ
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レポート資料として読む。
読みやすい。時価会計など、実際使われた手法に関する情報は多く、また、新たに知った問題点もあり、非常に参考になった。ただし、エンロン、ライブドア事件についてを詳しく知りたいのなら、他の本にあたるのが良いだろう。
Posted by ブクログ
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