古谷田奈月の作品一覧
「古谷田奈月」の「うた子と獅子男」「神前酔狂宴」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「古谷田奈月」の「うた子と獅子男」「神前酔狂宴」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
とんでもない本だった……何かに例えたり比べたりすることができそうにない、何を読んだんだ私は……
『結婚披露宴って何?なんでみんなーーねぇ、ほんとにーーなんでみんな、結婚を披露するの?』
幻が大金を生む披露宴の滑稽さに魅了される主人公、そこにのめり込んでやがてとんでもないことになるのではーーと予想しながら読み進めるとガクッと裏切られる、というか最後の最後まで予測がつかない。何度も出てくるどんでん、どんでん!という、披露宴の会場を一気に畳んで次の披露宴に備えるワードが象徴的で効果的。
誰にも見せない脚本を書き続ける主人公。ト書きで語る自分と世界。おれの新郎。神社と神。
もう本当に最初から最後までずっと面白かった。浜野が抱くどの発想も感情も、絶対に私には思いつかないし、思い浮かんだこともないはずなのに、こうして語られるとなぜかすとんと自分の中に落ちてしまう、分かってしまう(気がする)。とんでもない本だ。
Posted by ブクログ
たまたま流れてきた読書アカウントの投稿の中にあった一冊。見たことがない本で、妙に気になったので手に取ったところ大当たり!
主人公である橘の勤務する出版社とオンラインゲーム、「表と裏の顔」「オンとオフ」的に描かれがちな二つの面だが、これがごく当然であるかのようにシームレスに描かれている。自分はここまで本格的にオンラインゲームに取り組んだことはないものの、ごく当たり前にインターネットに生息する身としては非常にすとんと落ちるものがあり、同時にそれを初めて意識した。
赤裸々というのが正しいかどうか分からないけれど、そこまで言っちゃっていいの?そこに触れちゃっていいの?無意識に蓋をしているそこを叩いていいの?と言いたくなるような描写が多々あり、しかしそれは橘をはじめとするさまざまな登場人物にとっては、他の大事な何かや大事でない何かと当たり前に地続きに存在したり考えたりしていることで、生きている思考や感覚ってこういうものだよなぁ、という不思議な納得感がある。
自分は彼らではないのに、あぁそうだこう思ったら次にこう思うんだ、となぜか納得しながら追体験しているような感覚。
オンラインゲームに馴染みがない人にとっては読みづらいかも、というか特有の文脈を掴むのに慣れがいるかも?とは思う。自分にとっては、これを理解できると感じる体験まるごと、とてもインパクトのある一冊だった。偶然に感謝。
Posted by ブクログ
結末を明言しないところも、獅子男がうた子含め周囲の世界と自分の成れ果ての行き着きたかった関係性も、この世の単語にまとめきれずに、ある現象だとか、ただその時に抱いた欲望のまま描写するのがとても良かった
だからこの作品で、私の中に響く言葉ははっきり言ってほとんどなく、唯一、市太が怒りという財産を抱えると表明したシーンだった でも、書かれなかった(書くことが無粋だし、型にはめられるほど私たちはこの世界から見て単純ではなかったし、合法でもなかった)感情が執着が祈りがあった
自分の肉体でないからどうでもいいといううた子の諦めを三花は許せなかった でも獅子男はうた子を傷つけた相手にさえ怒りという感情を手に入れることはできなかった それは変わらずだが全ての人生が間違っていたのかもしれなくてもうた子となら合法非合法曖昧な世界を生きられた希望が獅子男にはあった
この作品の良かったところは名言しないことを最後まで貫いたことだ 獅子男は後悔していたかもしれない、でもお酒の勢いかもしれない 獅子男は正義に生きるべきだったかもしれない、でも肉体は暴力に強かった うた子は暴力を覚えるべきでなかったかもしれない、でも彼女は諦めを知ってしまっていた
そういった要素の掛け合わせが、あの結末を呼び寄せ、そしてその結末さえ明かさないのはこの作品の美点だと感じる これは青春の話であり、ある熱の話というよりは私たちの信念と、それを育んでくれた誰か教育者との関わりであり、そしてその関わりは必ずしも自分を正しい世界に導けるものではなかった
正しくなくても、自分の性質を知って、心の内に衝動と覚悟があって、それが言葉にできないからなんだというのか その表せないすべてこそが、「連帯」というものの根幹になっていて、それが決して善であるという前提ではないことを知っておかなければならない 私たちは、覚えたことを暴力にできる
うた子のいうとおり、反抗するのはめんどくさい 本当のことを言ってしまって自分の好きな自分の秩序崩すのだって億劫だ 全部どうでもいい、めんどくさい、それを間違ってるって外から断言するべきだが、それは自分自身がしなければならない これまで抑圧されてきたその肉体をもってして、抵抗しなければならない
自分の財産を、いかに正しく育て、どのように活かし、生きていくのか 周囲の影響もあるけど、それこそが自由で、意思決定で、人生の博打要素と救いの種になる
Posted by ブクログ
出版社に勤めながらリンドグランドというソシャゲに没入している橘が主人公。最後の、母に監禁されている生活から礼を救う展開が良かった。ゲーム上ではあっても、こんなに日常生活に溶け込んで人との関係性も出来上がっていたらそれはもうリアルの世界でもあると感じた。黒岩を求めてくる他所の子供を愛することと捨て猫を愛する宮田の違いについて考えさせられた。複雑なことを簡略化して間違って伝えることの恐ろしさを改めて感じた。個人戦で礼と競っていたしおんが負けて自殺し、しおんの心疾患のことやこれまでの人生のことも明らかになったあと礼が言った、「遺書がないなんて当たり前なんだよ。人生全部が遺書だから。たぶん、まじで死ぬことばっかり考えてたと思うよ。いつ終わるんだこれって。でね、そういう奴が待ってるのは理由じゃなくて合図なの。」という言葉が印象に残った。