佐藤雫の作品一覧
「佐藤雫」の「行成想歌」「わたしの名店」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
細川忠興とその妻・玉(洗礼名ガラシャ)の物語。約30年前、三浦綾子さんの『細川ガラシャ夫人』で読んでいたので、結末は知っていました。それでも、ラストでは涙が止まりませんでした。
三浦綾子さんの著書は信仰の描写がより深かった記憶がありますが、本書はそれ以上に、忠興と玉という「ひとりの人間」としての苦悩が強く心に残りました。
信仰を得た後の玉は、さらにまっすぐで、強くて、揺るがない。
けれどその強さは、ときに忠興の思いを置き去りにしてしまったのではないか。そんな切なさを感じる場面もありました。
もう少し、忠興の心に寄り添ってあげてもいいのでは?と。
でも、父・明智光秀のことを思えば、玉がどれほど孤独だったかも想像できる。
結局、どちらの気持ちも分かってしまうから苦しい。
作中で何度も語られる、忠興の玉への「歪んだ愛」。確かに玉から見ればそうだったのかもしれない。
けれど、その歪みは時代が作ったものでもあったのかもしれない。愛さえも、時代から自由ではいられないような・・・。
玉の辞世の句が深く心に響きます。
「散りぬべき 時しりてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
この句を前にしたとき、忠興は何を思ったのだろう。玉の死後、正室を迎えることなく83歳まで生きた忠興。その長い年月の中で、彼はどれほど玉を想い続けたのだろう。
読み終わって、当事者としてその時代を生きていたら、私はどうしただろうと、そんな想いが心によぎりました。俯瞰して考える余裕なんて絶対になかったことだけは確か。
そう思うと、遠くから人生を見つめさせてくれる読書という体験の大切さを、しみじみ感じました。そして、だから人は物語を読むのかもしれないなぁと。
Posted by ブクログ
佐藤雫さんのデビュー作『言の葉は、残りて』に感銘を受け、本作を手に取りました。
舞台は戦国、茶々(淀殿)と大野治長の生涯を描いた物語です。 これまで茶々に対しては「気が強く、野心家、悪女」というステレオタイプな、あまり良くないイメージを抱いていました。しかし、本作を読んでその印象が一変。歴史は勝者の視点で語られることが多いため、彼女の否定的な側面ばかりが強調されてきたのかもしれません。
運命に翻弄されながらも、最後まで互いを想い合い、支え合おうとする二人の姿はあまりに切なく、胸を打ちます。
本作で茶々は最後、「豊臣家を必死に守ろうとした一人の人間」としても描かれています。親の命を奪われ、側室とさせられ、憎しみはあったと思うのですが。
豊臣家、というよりは秀頼を、という方が適切かもしれません。となると、彼が大野治長との子であったという説(本作での解釈もまた)を前提にするなら、茶々が守りたかったのは「秀吉の血筋」ではなく、「自分と愛する男の間に生まれた命」ということになります。どうなのだろう?
また、本作でもう一人印象的だったのが真田信繁(幸村)です。これまでいくつかの作品で彼の生き様に触れてきましたが、本書での描かれ方も一本筋が通っており、その格好良さが際立っていました。
Posted by ブクログ
幕臣の中で悪名高く語られる小栗上野介。
勝海舟と比較され、良い印象を持たれていない。その小栗を真正面から描いた一冊としては、最高の作品だと思う。
三河以来のご譜代の旗本ゆえに、愚直なまでに徳川を見捨てることが出来ない生き方も(一種の)武士だな~と。形は違えども消滅する幕府の中で奔走し、何かを残そうとする姿は、勝海舟と通ずるものがある。
作品の性質上、しょうがないんだろうけど、勝と慶喜の描かれ方がかなり悪人で、何もできなそうに読めてしまった。
「百年後に生きる人々のネジ」を目指した小栗の行動は、今まさにそうなってるのではないか。最後の最後まで、お金をどう使うか。それを真に現した生き方だったと思う。