室橋裕和の作品一覧
「室橋裕和」の「おとなの青春旅行」「移住者たちのリアルな声でつくった 海外暮らし最強ナビ アジア編」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
ここ10年ほどでネパール人の経営するインドカレー屋があちこちに散見するようになった。現在日本に4000~5000件ほどあるらしい。「なぜ2000年代以降増えたのか?」「なぜインド人ではなくネパール人のインドカレー屋なのか?」という、アジア専門のジャーナリストである著者の「インネパ(ネパール人のインドカレー屋)」を巡る謎解きの旅が本書である。
ざっくり言えば、国内に農業と観光業以外の主要産業がなく、GDPのうちなんと3割が国外からの送金(つまり出稼ぎ)が占めるネパールと、労働力不足を補填する国策として移民を「輸入」したい日本のお国事情のマッチングがあり、在留資格の取りやすい技能職がコックであること、インド料理が定着していた日本のグルメ事情や、またインド料理店で働いていたのが、カースト制の文化の考え方で決められた職分以外の仕事を一切しないインド人よりも、調理、清掃、ホール仕事までなんでもこなすネパール人が重宝されていたという業界事情などがあり、ネパール人のインドカレーのコックが増え、やがて独立し家族を呼んだりしながら今日に至るというわけだ。ちなみに2000年以降にネパール人が多くやってくるようになったのは、バブル期のいわゆる3K仕事における人手不足を埋めるため、不法滞在の外国人の就労を政府が黙認していたことが問題視され、入管法が改正されきちんと在留資格を発行することになったのだが、ガス抜き対策で「コックの技能」に関する在留資格の審査が緩くなったかららしい。
ネパール人のもともとの気質や、親族から借金して失敗できないという状況から、独自性を打ち出すよりは先人の成功をまるパクリする方針を選ぶ店舗の多いインネパはここまで増えると競合過多で利益が出ない店も多くなる。在留資格更新の際の経営収支の審査の厳しさや資本金の増額などで、一生懸命家族でやっているインネパ店が立ち行かなくなることに関して、価格を下げるのみの経営では生活していけなくなるのは、これは外国人であるがゆえの問題ではないし、カレー店経営よりも儲かるとして、日本での仕事を斡旋するビジネスを起こすネパール人が増え、なかにはブローカー化し仲介料や手数料で同胞を食い物にするようなネパール人も出て来たりすることに関しては、ネパール人側の問題ではあるだろう。一方で国策として外国人労働力を受けいれる日本は、そのホストとしての自覚が問われるだろう。ネパール人家族、とりわけ子どもたちへの教育支援(体制、予算など)などが不十分なことなどは日本に大いに責任がある。まともな教育が受けられなければ就職もできないという、社会に受け入れてもらえないインネパ2世たちを増やしているのはそういう制度にしている日本に責任があるだろう。
移民といいつつ、日本は「在留資格の更新」という形で、外国人労働者とその家族の数を都合よくコントロールするというのが基本姿勢なので、きちんと移民として受け入れようとする意識は低い。さらに物価高や円安の問題もあり、昨今ではネパール人の日本離れが加速しているようだ。安上がりで都合に応じて入れたり切ったりできる労働者として便利に使っていた外国人たちから、いま見切りをつけられる立場になりつつあるのは何もインネパ業界に限らないけど。
本書のように「インネパ」という切り口で絞って見ることで、複雑な思惑や事情の絡む移民問題の本当の姿とその難しさが見えてくるのだなと思う。大枠で移民問題の是々非々を語ろうとしたり、ましてネットの偏った情報を元に、移民に厳しくしろ、移民を追い出せ、などというのがいかに乱暴な発言かわかる。複雑な問題は単純化して答えてはいけないのだ、ということを改めて実感する。
Posted by ブクログ
今やどの町にもあると言っても過言でないくらいたくさんあるインド料理の店。しかし、そこではたいている人の多くはネパール人である。そんなお店は「インネパ」とも呼ばれる。
で、どうしてネパール人なのか。なんでこんなに店がたくさんあるのかなどがよくわかる。
また、ネパール人同士の攻防やカレー屋の彼らが日本に呼び寄せる家族、特に子供についての現状などそこにある様々な問題についても書かれており、単なるインネパレストランの話にとどまらない。
日本に移住する彼らの地元バグルンでも、彼らが日本に来ることより、過疎化が進んでいるという事態には大変驚いた。何とも皮肉な話である。
また、ネパール人とインド人の違いもよくわかって興味深い。例えば「インド人は男性が稼いで女性を養う。でもネパール人は奥さんも、家族で働く。みんなで商売をする。インド人は男ひとりだから、日本でビジネスが広がらなかったんじゃないかな」(p82)や「「たとえばインドのコックさん、自分の仕事しかやらない。カレーだったらカレーだけ。タンドールだったらタンドールだけ。洗い場だったら洗い場だけ」それはインドのカースト制度の意識が影響した、伝統的な分業制だ。カーストは階層でもあり、また細分化されて職業とも密接に結びついている。このカーストはこの職業、というように仕事と身分が固定化・世襲化されているのだが、だから同じ厨房で働いていても自分の仕事しかやらない人がほとんどだ」「ましてや店の掃除や、お客の対応なんかは全く異なる仕事と認識される。兼務するものではないのだ」(p109)
これらの理由から、インド人よりもネパール人の方が重宝されるのだろう。
また逆に、儲かっているお店のコピペばかりして創意工夫をしなかったり、と教育レベルの問題で失敗してしまうといった側面もある。
インネパを通して、移民の問題やネパールの現状を知ることが出来て、とても有意義だった。読みごたえのある一冊だった。
執筆時期のタイミングからか、本書では言及されていないが、「経営・管理」のビザ要件が厳しくなるようで、それが彼らに与える影響も心配である。
Posted by ブクログ
面白かった!街中にたくさんあるインドカレー屋(インネパ)の実態に迫った本。ネパール国内は産業が少なく海外出稼ぎに行く人も多い、人口の1割は出稼ぎに行くというのは驚いた。ネパール人がインドカレー屋を始めるようになった歴史から、成功した先人達を真似して(何ならメニューも丸パクリしたりして)、現在のように街中に溢れるようになった経緯まで載っていて面白かった。昔は高級路線だったけど、乱立する中でランチなど安価で提供するようになり、そのイメージが定着している。でも、この本を読んで、その苦労とか手間を考えるともっと高い値段をとってもいいように感じた(しかし日本は不景気なのでそれだと売れないジレンマ…)また、カレー屋を始めた親を持つ子の問題というのも興味深かった。激務から愛情不足だったり、いきなり日本に来て適切な教育が受けられなかったり、そのせいでグレてしまったりと中々ダークな一面もあるようだった。でも親もお金を稼いで子どもにいい暮らしをさせたい故なんだろうなとは感じた。そういう意味で、夜間中学に通い日本語を覚え、うまんぱさるを経営したラジーヴさんの話は希望が持てた。また、ビザの問題も中々大変そうで、ビザが一年しかなく先が見通せなかったり、家族滞在故の問題があったりと皆苦労が伝わってきた。よく近くのインドカレー屋さんがチラシを配っていたが、あれは宣伝もあるが、そういうことをするとちゃんと経営実態があると入管に判断してもらいやすいから(曖昧)と聞いて納得した。最近は英語圏への流出が増えているらしいが、不景気といい言語といい、ビザの問題といい、ネパール人がわざわざ日本にいたい理由もないよなと思う。北米圏に行けば給料倍らしいし。そういう意味でも街中のインドカレー屋はどんどん減っていってしまうのかもしれない。とにかく、途中からどんどんインドカレーを食べたくなってきて、近隣のインドカレー屋(インネパ)を調べてながら読んでいた。初めて食べてみようと思う。