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「ボストンコンサルティンググループ」の「全社デジタル戦略 失敗の本質」「日経ムック BCG カーボンニュートラル経営戦略」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ボストンコンサルティンググループ」の「全社デジタル戦略 失敗の本質」「日経ムック BCG カーボンニュートラル経営戦略」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
『BCG 経営コンセプト 市場創造編』統合レポート
― BCGデジタルベンチャーズに学ぶ「市場創造・新規事業創造・組織変革」の体系 ―
対象
内田和成ほか『BCG 経営コンセプト 市場創造編』
添付箇所:BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)、デジタル新事業創造、Allianz/Kaishi事例、大企業におけるビジネスモデル・イノベーション、「場をつくる」等
⸻
0. エグゼクティブサマリー
本書の添付部分を一つの体系として読み解くと、BCGが提示している「市場創造」は、単なる新商品開発やアイデア創出の方法論ではない。
その本質は、
顧客の未充足ニーズを起点に新しい事業機会を発見し、複数の仮説を高速に検証し、経営判断によって資源を再配分し、既存事業・外部企業を巻き込みながら、新しい顧客価値と事業構造そのものをつくり上げること
にある。
BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)は、そのための実行装置として、
①イノベーション
→ ②インキュベーション
→ ③コマーシャリゼーション
という3フェーズを持つ。
しかし、この3フェーズだけを理解してもBCGDVの本質は捉えきれない。
実際には、
* 顧客のフリクション探索
* アイデアの大量生成
* VC的なポートフォリオ管理
* 経営によるInvestment Gate
* Human-Centricな顧客理解
* Design Thinking
* MVP
* Lean
* Agile
* Data Driven Growth
* 多職種混成チーム
* 既存事業との接続
* トップマネジメントの関与
* 外部プレイヤーとのエコシステム形成
* 組織能力の移転
までを一つにつないだ、End-to-Endの事業創造システムとして設計されている。
したがって、BCGDVの競争力は「良いアイデアを生み出す能力」ではない。
より本質的には、
何が正解か分からない状況において、不確実性を高速に減らし、学習結果に応じて人・資金・時間を再配分し、事業を正解へ近づけ続ける能力
にある。
そして大企業においては、それだけでは十分ではない。
新規事業と既存事業、現場と経営、企業と企業を接続する**「場」**を意図的につくらなければ、どれほど優れた事業コンセプトも既存組織の中で止まる。
したがって、本書全体の思想は次の一文に凝縮できる。
市場創造とは、「優れた商品をつくること」ではなく、「顧客・事業・組織・資源・企業間関係を再設計し、新しい価値創造システムを成立させること」である。
⸻
1. BCGが捉える「市場創造」とは何か
一般的な新規事業開発では、
* どんな商品をつくるか
* どの市場へ参入するか
* どう売上をつくるか
といった問いから議論が始まりやすい。
しかし本書では、それよりも川上にある問いを重視する。
すなわち、
「顧客は現在、どのような不便・不満・不安・妥協を抱えているのか」
である。
その「現状」と「あるべき状態」とのギャップを、BCGDVではフリクションとして捉える。
市場創造とは、既存市場の中でシェアを奪うだけではない。
これまで顧客が、
* 仕方ないと思っていたこと
* 不便だが諦めていたこと
* 欲しいと自覚していなかったこと
* 言葉にできなかったこと
を見つけ、それを解消する新しい価値提供の仕組みをつくることである。
したがって、市場創造の起点は、
Product → Market
ではなく、
Human Friction → Opportunity → Business
である。
⸻
2. 市場創造を生み出す「3つの探索窓」
BCGDVは事業機会を主に3方向から探索する。
2-1. マクロ環境変化
* 規制変更
* 社会構造の変化
* テクノロジー進化
* 人口動態
* 消費行動の変化
* 産業構造変化
などを見る。
ただし、環境変化そのものをビジネス機会と短絡しない。
重要なのは、
Macro Change
→ Customer Behavior Change
→ Friction
→ Opportunity
まで落とすことである。
⸻
2-2. 顕在的なペインポイント
顧客が現在明確に困っていることを探す。
例えば、
* 時間がかかる
* 高い
* 分かりにくい
* 面倒
* 不安
* 選択肢がない
といった問題である。
⸻
2-3. 潜在ニーズ・潜在欲求
さらに重要なのが、顧客本人もまだ明確には認識・言語化していない欲求である。
ここには、
* 無意識の行動
* 不自然な回避行動
* 自作の工夫
* 複数サービスの組み合わせ
* 慣れてしまった不便
などがヒントになる。
したがって、市場創造の探索空間は、
マクロ変化 × 顕在課題 × 潜在欲求
の交点にある。
⸻
3. BCGDVの新事業創造モデル
BCGDVの事業創造は大きく3フェーズに分かれる。
フェーズ主目的中心問い主な成果
イノベーション機会発見・事業案選定何をやるべきか2〜3の有望コンセプト
インキュベーション仮説検証・開発本当に顧客価値を生むかMVP/市場投入可能な製品
コマーシャリゼーション事業成長どう成長・収益化するかスケール可能な事業
これをより抽象化すると、
Explore → Select → Build → Validate → Scale
である。
⸻
4. Phase 1|イノベーション
大量探索し、段階的に絞る
イノベーションフェーズは概ね12〜14週間。
この段階では最初から一案へ賭けない。
数十〜100程度のアイデアを出し、その中から有望な事業コンセプトを絞り込む。
ここで重要なのは、
一発必中を狙わない
ことである。
新規事業の未来は不確実であり、机上で成功案を正確に予測することはできない。
したがって、
Idea Portfolio
→ Screening
→ Experiment
→ Resource Reallocation
というVCに近い仕組みを取る。
⸻
5. 「フリクション」がアイデア創出の起点
BCGDVにおけるアイデア創出は、単なるブレインストーミングではない。
まず、
現状と理想状態の間にあるギャップ
を探す。
ここから、
* なぜこの問題が残っているのか
* 誰が最も困っているのか
* 既存サービスはなぜ十分でないのか
* 何が変われば解決できるのか
を考える。
つまり、
Idea First
ではなく、
Friction First
である。
⸻
6. VC的思考
BCGDVの事業選択における大きな特徴が、VC的思考である。
その特徴は次の通り。
① 客観性
自分たちの思い入れではなく、外から見て投資すべきかで考える。
② スピード
完璧に検討してから進むのではなく、早く市場へ接続する。
③ ポートフォリオ
複数案へ小さく賭け、有望案に追加投資する。
④ 早期撤退
失敗を避けること以上に、失敗を早く認識する。
⑤ サンクコスト排除
「ここまで投資したから」という理由で継続しない。
⑥ Learning重視
失敗案件から得た情報を次の事業へ利用する。
この思想をまとめれば、
成功確率を100%に近づけるのではなく、失敗コストを小さくしながら試行回数を増やし、ポートフォリオ全体の成功確率を高める
ということである。
⸻
7. Investment Gate
4回程度の投資委員会による選択
BCGDVでは、事業案を複数回の投資委員会で評価する。
参加者には、
* 親会社CEO
* 経営幹部
* BCGパートナー
などが入り、チームが事業案を短時間でピッチする。
初期段階では特に、
1. その事業にはどんな意味があるか
2. どんなフリクションを解消するか
3. なぜ今なのか
4. 親会社戦略と整合するか
が重視される。
重要なのは、初期から精緻な財務モデルを求めすぎないことである。
不確実性の高い段階で、
* 詳細な売上予測
* 5年後の利益
* 精緻なNPV
を計算しても、実態以上に数字が精密に見えるだけである。
初期段階では、
Financial PrecisionよりStrategic Story
を優先する。
⸻
8. Human-Centric Approach
顧客に「答え」を聞かない
BCGDVのもう一つの柱が徹底した顧客理解である。
主な手法として、
* エスノグラフィック・リサーチ
* デプスインタビュー
* 行動観察
* 生活文脈の観察
などを使う。
重要なのは、
「どんな商品が欲しいですか?」
と顧客に直接答えを聞かないことである。
見るべきなのは、
発言
+ 行動
+ 感情
+ 環境
+ 妥協
+ 回避行動
+ 無意識の工夫
である。
顧客は自分が本当に必要としている新商品を必ずしも言語化できない。
企業の役割は、顧客の言葉の奥にある構造を解釈することである。
⸻
9. Design Thinking
粗く見せて、正しい反応を引き出す
顧客洞察を基に、解決策をラフに描く。
BCGDVでは、あえて完成度の低いスケッチを用いる場合もある。
なぜなら完成品のように見えるプロトタイプでは、顧客が遠慮してしまうからである。
一方、粗いプロトタイプなら、
「ここは違う」
「こうしてほしい」
「これは使わない」
と本音が出やすい。
したがって、
Prototypeの目的は、製品を見せることではなく、顧客から学習することである。
⸻
10. Phase 2|インキュベーション
Lean × Agileで「つくりながら学ぶ」
イノベーションフェーズで残った2〜3案について、開発を進めるか判断する。
進める事業については、
Lean × Agile
が中核となる。
⸻
11. MVP
最小限の価値だけ実装する
MVPとはMinimum Viable Product。
意味するところは、
顧客価値の核を検証するのに必要な最低限の機能だけを持つ製品
である。
重要なのは、
「小さな製品」
ではなく、
「最小の学習装置」
と捉えること。
つまり、
Build → Measure → Learn
を可能にするためにつくる。
⸻
12. Agile
変更を「失敗」ではなく「学習」と捉える
従来型ウォーターフォールでは、
要件定義
→ 設計
→ 開発
→ テスト
と順番に進む。
一方アジャイルでは、
Prototype
→ Test
→ Feedback
→ Pivot
→ Rebuild
を高速で回す。
前提となる思想が異なる。
ウォーターフォール:
最初に正しい要件を決める。
アジャイル:
最初に正しい要件が分かるとは限らない。
したがって、変更は異常ではない。
顧客から学習した結果としての正常な状態である。
⸻
13. Phase 3|コマーシャリゼーション
商品開発からBusiness Buildingへ
プロダクトが市場へ出た後、焦点は「つくる」から「育てる」へ変わる。
主な活動は、
Product Iteration
ユーザー反応に基づき製品を継続改善する。
Data Driven
KPIを定義し、数字を基に改善する。
Growth Hack
顧客行動を分析し、獲得・利用・継続を改善する。
Organization Building
一時的なプロジェクトから恒常的な事業組織へ移行する。
つまり、
Product Development → Business Building
へ変化する。
⸻
14. マーケティングの3段階
コマーシャリゼーションではマーケティングを3段階で捉える。
① Pre-Access
顧客を連れてくる。
* SEO
* SEM
* 広告
* 集客施策
など。
② On-Access
来訪した顧客を購入・利用へ変える。
* UI
* UX
* コンバージョン改善
など。
③ Post-Access
一度利用した顧客との関係を育てる。
* CRM
* リピート率
* LTV
* 顧客単価
* 顧客満足度
など。
これらをデータベースマーケティングが横断する。
したがって成長構造は、
Acquisition → Conversion → Retention → LTV
である。
⸻
15. BCGDVの組織モデル
サイロ化した専門分業へのアンチテーゼ
大企業の新規事業では、
* 戦略:コンサル
* デザイン:デザイン会社
* 開発:SIer
* マーケティング:広告会社
のように分かれやすい。
すると、
* 戦略とUXがずれる
* UXと技術がずれる
* 開発とマーケティングがずれる
* 意思決定に時間がかかる
という問題が生じる。
BCGDVはこれを、
End-to-Endの同一チーム
で解消する。
⸻
16. 多職種混成チーム
BCGDVの代表的な人材構成は次の通り。
人材役割
ベンチャーアーキテクト事業プロデューサー・全体統括
プロダクトマネジャー0→1から成長までを担う
ストラテジックデザイナー顧客洞察から事業コンセプトを設計
エクスペリエンスデザイナーUI/UX・体験設計
エンジニア設計・開発・運用
マーケティング/グロース専門家顧客獲得・サービス成長
これに、
* 独自ツール
* グローバルネットワーク
* 最先端技術へのアクセス
* スタートアップ投資
* 過去案件の経験
を組み合わせる。
したがって競争力は、
Talent × Method × Knowledge × Network × Technology × Capital
から生まれる。
⸻
17. BCGDVは「助言者」ではなく共同事業者
BCGDVは通常のコンサルティングよりも深く事業に入る。
戦略だけでなく、
* デザイン
* 開発
* 成長
* 運用
* 投資
まで関与する。
場合によっては、
* キャッシュ
* 知的財産
* 人材
まで投入する。
つまり、
Advisor
→ Builder
→ Operator
→ Investor
へ役割を広げる。
⸻
18. 顧客企業のコントロールを維持する
BCGDVのもう一つの特徴は、協業企業側が事業の主体であり続けること。
例えば、
* ブランド
* 知的財産
* 資本政策
などについて、協業企業側が一定の自由度を持つ。
したがって、
「BCGDVに新規事業を外注する」のではなく、「BCGDVの事業創造能力を使って、自社の事業を自社主導でつくる」
モデルである。
⸻
19. Capability Transfer
最終成果は「事業1件」ではない
共同開発することで、協業企業はBCGDVの方法論を実地で学ぶ。
蓄積されるものは、
* 顧客観察
* 仮説設計
* プロトタイピング
* MVP
* Agile
* グロース
* 投資判断
など。
その結果、
External Capability
→ Joint Delivery
→ Learning
→ Internal Capability
という知識移転が起こる。
最終的には、
新規事業を継続的につくれる会社になること
が重要になる。
⸻
20. Allianz × Kaishiケース
「保険を売る」から「妊娠・出産体験を支援する」へ
この方法論を具体的に示すのが、Allianzの中国市場における事例である。
Allianzは中国市場への浸透を狙い、インターネットやモバイルアプリによる保険販売を試みたが、十分な成果を得られなかった。
そこで問いを変えた。
従来:
どうすれば中国で保険を売れるか。
新しい問い:
中国の生活者にどんな未充足ニーズがあるか。
⸻
21. 3方向からFrictionを探索
Macro Change
中国で一人っ子政策が廃止。
Pain Point
妊婦や家族が専門家から十分な支援を受ける機会が限られている。
Latent Need
* 妊娠中の不安を減らしたい
* 胎児の状態を知りたい
* 胎児とのつながりを感じたい
* 同じ立場の親とつながりたい
という欲求が見えてきた。
⸻
22. 顧客インサイトを深掘る
デプスインタビューなどを通じ、
* 胎児の心音を聞きたい
* 胎児の発育を学びたい
* 妊娠中の症状について知りたい
* 日々の経験を記録したい
* 他の妊婦・家族と共有したい
といった具体的なニーズを発見した。
重要なのは、
「どんな保険が欲しいですか」とは聞いていない
ことである。
⸻
23. 保険会社なのに、最初に保険をつくらない
顧客課題から考えた結果、生まれたのがKaishiという胎児の心音を家庭で確認するデバイスとアプリである。
つまり、
Insurance Product
→ Customer Experience
へ思考を拡張した。
これが市場創造における非常に重要なポイントである。
自社が何を売っている会社かではなく、顧客に対してどんな価値を提供する会社になるべきかから考える。
⸻
24. 顧客価値 → 技術要件
当時の従来機器には超音波利用に関する懸念があった。
そこで、
家庭で安心して使える、超音波を使わないデバイス
という方向に進んだ。
つまり、
Technology → Use Case
ではなく、
Customer Need → Requirement → Technology
である。
⸻
25. 大量のPrototypeとPivot
開発では、
* ハードウェア試作:約100個
* アプリデザイン:約20種類
などをつくり、フィードバックを優先順位づけしながら改良した。
最終的には素材・安全性・性能に関わる多数の検査も通過した。
ここでも、
最初の設計を正しくするのではなく、試行回数によって正解へ近づく
という思想が一貫している。
⸻
26. DeviceからPlatformへ
Kaishiは単なる胎児心音デバイスではない。
アプリを通じて、
* 心音の録音・共有
* 胎児の発育情報
* 母体の症状情報
* 健康アドバイス
* 栄養ガイダンス
* レシピ
* コミュニティ
* 赤ちゃんダイアリー
などへ拡張された。
結果として、
Device
→ App
→ Content
→ Community
→ Diary
→ Data
→ Customer Relationship
という関係基盤へ発展した。
⸻
27. Point ProductからRelationship Platformへ
Kaishiの戦略的価値は、デバイス販売だけではない。
本当の価値は、
妊娠・出産という重要なライフイベントで顧客との継続的接点を獲得すること
にある。
そこで得た情報を基に、
顧客が最も必要とするタイミングで保険や金融サービスを提供する。
つまり、
Device → Engagement → Data → Insight → Insurance
である。
これは「保険をデジタルチャネルで売る」こととは全く異なる。
顧客関係そのものをデジタル化する戦略である。
⸻
28. LaunchはFinishではない
Kaishiはコンセプト形成から比較的短期間で市場投入され、その後も多数回のアップデートを重ねた。
つまり、
Launch ≠ Project Completion
である。
市場投入とは、仮説検証の終わりではない。
むしろ、
本格的な実市場学習の開始点
である。
⸻
29. 大企業特有の問題
優れた新規事業でも「組織」で止まる
ここから本書の議論は、商品や開発手法から組織へ移る。
大企業では、
* 新規事業部門
* 既存事業部門
* 経営陣
* 関連会社
* 外部企業
などが別々に動いている。
そのため、
顧客にとって正しい新規事業であっても、社内では正しく動かない
場合がある。
BCGがここで強調するのが、
「場をつくる」
ことである。
⸻
30. 「場」とは何か
ここでいう場は単なる会議ではない。
異なる知識・権限・利害を持つ関係者を接続し、事業に必要な意思決定と資源配分を可能にする仕組み
である。
場には3つの次元がある。
⸻
31. 場①|新規事業 × 既存事業
既存事業メンバーは、
* 技術
* 顧客
* ブランド
* 営業網
* オペレーション
* 取引先
* 業界構造
などを深く理解している。
一方、新規事業チームは、
* 新市場
* 新顧客
* 新技術
* 新ビジネスモデル
には強いが、既存資産への理解が浅い場合がある。
そこで、
一定程度新規事業コンセプトができた後に、両者をぶつける
ことが有効になる。
⸻
32. なぜ最初から既存事業を入れないのか
最初から既存部門が強く入ると、
* 既存商品との整合
* 現在の予算
* 現在の営業網
* 現行ルール
などが先に制約となり、発想を小さくする可能性がある。
したがって順序としては、
Customer → Opportunity → Concept
を先につくり、
その後で、
Concept × Corporate Assets
を考える。
これは、
既存資産を「制約」ではなく「優位性」に変えるための順序設計
である。
⸻
33. 場②|新規事業 × トップマネジメント
新規事業には、
* カニバリゼーション
* ブランドリスク
* 長期投資
* 新しい収益モデル
* 部門を超えた資源再配分
などが伴う。
そのため、単一部門の権限では判断できない。
トップマネジメントを巻き込み、
Why this business?
Why us?
Why now?
Where to play?
を議論する必要がある。
トップの役割は単なる「決裁者」ではない。
企業として、どこまで事業ドメインを広げるかを定義する存在
である。
⸻
34. 場③|自社 × 外部プレイヤー
新しい市場では、一社だけで顧客価値を完結できない場合が多い。
そこで、
* 金融
* 小売
* 流通
* テクノロジー
* プラットフォーム
* その他周辺企業
との協働が必要になる。
しかし、
「一緒にやりましょう」
では動かない。
相手にも経済合理性が必要である。
⸻
35. パートナーにもHuman-Centric Approachを使う
例えば小売企業に新しい決済手段を導入してほしい場合、
「便利な決済です」
では十分ではない。
一方、
電子クーポンを配布し、来店や売上増加につなげられる
となれば、小売側のPainと接続する。
つまり、
Partner Pain → Partner Value → Win-Win
まで設計する。
顧客だけでなく、
エコシステム参加者それぞれの未充足ニーズ
を理解することが必要になる。
⸻
36. 大企業の市場創造を支える「3つの場」
以上をまとめると、
場目的
新規事業 × 既存事業新しい機会と既存アセットを接続する
新規事業 × 経営戦略・資源・リスクを決定する
自社 × 外部企業Win-Winのエコシステムをつくる
すなわち、
内部横断 × 経営縦断 × 外部横断
の3方向を接続することが重要となる。
⸻
37. 大企業のビジネスモデル・イノベーション「5原則」
本書では、成功の留意点を5つに整理している。
⸻
原則1|既存商品・サービスを超えて考える
自社が現在売っているものを起点にしない。
必要であれば、事業ドメインそのものを変える。
問いは、
「自社商品をどう伸ばすか」
ではなく、
「顧客の問題をどう解決するか」
である。
⸻
原則2|過去の勝ちパターンにとらわれない
過去に成功したビジネスモデルが、未来にも有効とは限らない。
そこで重要な問いが、
「現在のビジネスモデルは顧客にどんな妥協を強いているか?」
である。
顧客が諦めている場所こそ、イノベーション機会になる。
⸻
原則3|短期業績との摩擦を超える
既存事業と新規事業では、評価尺度が違う。
既存事業:
* 売上
* 利益
* 効率
* ROI
新規事業初期:
* 学習量
* 仮説検証
* 顧客理解
* リスク削減
* プロトタイプ
* 検証速度
である。
したがって、
ExploitのKPIをExploreへそのまま適用しない
ことが重要となる。
⸻
原則4|部門の壁を超えて資産を使う
新規事業では、
「この顧客はどの部署のものか」
より、
「会社全体として何を持っているか」
で考える。
すなわち、
Department Asset
→ Corporate Asset
への転換である。
⸻
原則5|Win-Winのエコシステムをつくる
市場創造の初期では、
競争よりも前に、
市場そのものを成立させる協調
が必要になる場合がある。
したがって、
Competitive Advantage
だけでなく、
Collaborative Advantage
が重要となる。
⸻
38. BCGDVモデルを「6層」で捉える
ここまでを統合すると、BCGDVの市場創造モデルは次の6層に分けられる。
Layer 1|Opportunity
* マクロ変化
* Pain
* Unmet Need
* Friction
から機会を探す。
Layer 2|Venture Portfolio
* アイデア大量創出
* Investment Gate
* Kill / Continue
* 投資配分
を行う。
Layer 3|Customer Insight
* Ethnography
* Interview
* Observation
* Design Thinking
によって顧客理解を深める。
Layer 4|Product Development
* Prototype
* MVP
* Lean
* Agile
* Pivot
によって製品をつくる。
Layer 5|Commercialization
* KPI
* Data
* Marketing
* Growth
* CRM
* LTV
によって成長させる。
Layer 6|Corporate Capability
* 多職種チーム
* 経営Gate
* 既存事業連携
* エコシステム
* Capability Transfer
によって継続可能な組織能力にする。
⸻
39. BCGDV型「市場創造OS」の全体プロセス
本書全体を再構成すると、次のプロセスになる。
STEP 1|Observe
市場・技術・制度・社会変化を観測する。
↓
STEP 2|Discover Friction
顧客が抱えるPain、Unmet Need、妥協を発見する。
↓
STEP 3|Expand Domain
既存商品・既存業界の境界を一度外す。
↓
STEP 4|Generate Portfolio
多数の事業アイデアをつくる。
↓
STEP 5|Investment Gate
Why / Why Now / Why Usで絞る。
↓
STEP 6|Human Insight
顧客を深く理解する。
↓
STEP 7|Prototype
粗い解決案をつくる。
↓
STEP 8|Validate
顧客にぶつけ、学習する。
↓
STEP 9|MVP
核心価値だけ実装する。
↓
STEP 10|Agile & Pivot
テスト・修正・方向転換を繰り返す。
↓
STEP 11|Connect Corporate Assets
既存事業の資産を接続する。
↓
STEP 12|Executive Decision
経営がドメイン・リスク・資源配分を判断する。
↓
STEP 13|Ecosystem
外部企業とのWin-Winを構築する。
↓
STEP 14|Commercialize
市場投入する。
↓
STEP 15|Grow
データとKPIに基づき成長させる。
↓
STEP 16|Learn
事業結果から学習する。
↓
STEP 17|Capability Transfer
知識を企業内部へ蓄積する。
↓
STEP 18|Repeat
次の事業創造へ学びを還流する。
⸻
40. BCGDVの本当の競争優位
BCGDVの強さを、
* デザインシンキング
* アジャイル
* エスノグラフィー
といった個別手法に求めると、本質を見誤る。
これらは他社も使える。
真の競争優位は、
探索・投資・開発・成長・学習を一つにつなぎ、各ステージで異なる専門家と意思決定者を適切に配置していること
にある。
つまり、
MethodではなくSystem
である。
⸻
41. 「市場創造」の深層構造
本書の議論をさらに抽象化すると、市場創造とは3つの再定義である。
第1段階|顧客価値の再定義
「何を売るか」ではなく、
「顧客にとって何を解決すべきか」
を定義し直す。
⸻
第2段階|企業境界の再定義
「自社は何業か」という固定観念を外し、
「顧客価値を実現するため、自社はどこまで担うべきか」
を考える。
Allianzが保険から妊娠支援デバイスへ広がったのが典型である。
⸻
第3段階|産業境界の再定義
一社ですべてを行うのではなく、
「誰と組めば新しい価値提供構造が成立するか」
を再設計する。
ここまで進むと、市場創造は、
Product Innovation
ではなく、
Business Model / Ecosystem Innovation
になる。
⸻
42. 本書が教える「市場創造企業」の姿
市場創造に強い企業とは、必ずしも未来を正確に予測できる企業ではない。
むしろ、
1. 顧客の変化を早く捉える
2. 仮説を多数つくる
3. 小さく賭ける
4. 早く試す
5. 失敗を認める
6. 有望案に追加投資する
7. 既存資産を適切に使う
8. 外部企業を巻き込む
9. 経営が資源を機動的に配分する
10. 学習を次の挑戦へ戻す
ことができる企業である。
つまり、
予測能力より学習能力、計画精度より適応速度が重要
となる。
⸻
43. 特に重要な10の経営示唆
本書から得られる示唆を経営レベルに圧縮すると、以下の10点に集約できる。
1. 新規事業は「アイデアの質」より「探索システムの質」で決まる。
2. 事業機会は自社技術ではなく顧客のフリクションから探す。
3. 一案を精緻化するより、多数案を安く検証する。
4. 新規事業初期に精緻な財務予測を求めすぎない。
5. 顧客には欲しい商品を聞くのではなく、行動と文脈を見る。
6. プロトタイプは成果物ではなく学習装置である。
7. 新規事業はProjectではなくPortfolioとして管理する。
8. 既存事業は初期には制約になり得るが、中盤以降は最大の競争優位になる。
9. 大企業では優れた事業案以上に「場」と「Gate」の設計が重要である。
10. 最終成果は1つの成功事業ではなく「事業を継続的に生み出せる組織能力」である。
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44. 結論
『BCG 経営コンセプト 市場創造編』のBCGDV関連部分が示しているのは、単なる「スタートアップ的な新規事業のつくり方」ではない。
その思想はもっと広い。
市場創造とは、
顧客の未充足ニーズを発見し、そのニーズを満たすために既存商品・既存事業・企業境界を一度外し、最適な価値提供構造をゼロから設計すること
である。
そして、それを大企業で実現するためには、
顧客探索
× VC型投資
× MVP
× Agile
× Growth
× 経営Gate
× 既存事業連携
× Ecosystem
× Capability Building
を一体化しなければならない。
BCGDVの最大の特徴は、これらを断片的なツールとして扱わず、
「探索 → 選択 → 実験 → 投資 → 成長 → 学習」
という一つの閉じたループとして設計している点にある。
したがって、このモデルの本質は、
良いアイデアを生み出すことではなく、良い事業へ到達する確率を組織的に高めること
にある。
さらに大企業では、
新規事業 × 既存事業
新規事業 × 経営
自社 × 外部企業
という3つの「場」をつくり、企業の内部・上下・外部を横断させなければならない。
最終的にBCGが示している市場創造企業とは、
未来を正しく予測する会社ではない。
未来について仮説を持ち、顧客と市場へ小さく接続し、失敗から素早く学び、学習に応じて資源を再配分し、その能力自体を組織へ蓄積し続けられる会社である。
この意味において、本書に描かれているBCGDVは単なる新規事業開発手法ではなく、**大企業が不確実性の中で市場を創造し続けるための「事業創造OS」**として捉えるのが最も適切である。
Posted by ブクログ
『BCG 経営コンセプト 構造改革編』で示されている構造改革の考え方は、単なるコスト削減ではなく、「短期的に経済成果を出す → 組織能力をつくる → 仕組みに埋め込む → 再成長へ投資する」までを一気通貫で設計する変革モデルとして体系化できます。
特に重要なのは、戦略そのものよりも、「戦略を実行できる組織能力」と「その能力が継続的に発揮される経営プラットフォーム」まで設計して初めて構造改革になるという点です。
『BCG 経営コンセプト 構造改革編』体系的まとめ
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1. 全体像――構造改革は「戦略変更」だけでは成立しない
添付内容全体を構造化すると、BCGの構造改革アプローチは大きく次の流れとして理解できます。
① 経済的インパクトを創出する
↓
② 必要な組織能力を特定する
↓
③ 人材のスキルを構築する
↓
④ 組織・制度・プロセス・ITに埋め込む
↓
⑤ 再成長領域へ経営資源を再配分する
↓
⑥ 継続的に企業価値を高める
つまり、
Performance × Capability × Platform
の3つを同時に変えることが構造改革の本質です。
経営戦略だけを変えても、従業員の能力や業務プロセス、権限、評価制度、ITなどが従来のままであれば、組織は結局「昔のやり方」に引き戻されます。
逆に、人材研修だけを実施しても、本人に裁量がなかったり、評価制度が旧来型だったり、意思決定プロセスが複雑であれば、学んだ能力は成果につながりません。
したがってBCGは、構造改革を「組織が新しい行動を取り続けられる状態をつくること」として捉えています。
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2. 変革を定着させる「イネーブルメント・プログラム」
添付で特に重要なのが、
イネーブルメント・プログラムの3つの柱
です。
構造は以下です。
柱問い主な対象
① 組織能力の特定何ができる組織になるべきかCapability
② スキル構築個々人が何をできるようになるべきかSkill
③ ビジネス・プラットフォーム構築その能力を継続的に発揮できる仕組みは何かSystem / Operating Model
この3つが揃うことで、
企業価値への持続的なインパクト
につながります。
具体的には、
* 業績の段階的な改善
* 組織能力の強化
という二つの成果を同時に実現します。
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3. 第1の柱|カギとなる組織能力の特定
最初に行うべきなのは「研修をすること」ではありません。
まず、
戦略を実現するためには、会社として何ができなければならないか
を定義します。
具体的なステップ
① 必要な組織能力のポートフォリオを特定する
まず、現在持っている能力を洗い出します。
そのうえで、
* 現在持っている能力
* 今後必要になる能力
* 不要になる能力
を整理します。
ここでは個々人の能力ではなく、組織として持つべきCapabilityを考えることがポイントです。
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② 達成度・スキルギャップを診断する
理想状態と現在地を比較します。
例えば、
* 顧客分析力
* プライシング能力
* データ分析能力
* 営業生産性
* 意思決定能力
* プロジェクトマネジメント能力
などについて、
「どこまでできているか」
を診断します。
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③ Aspiration/目標を設定する
現状把握だけで終わらせず、
「最終的に、どのような能力を持った会社になるのか」
というゴールを設定します。
ここが非常に重要です。
能力開発を「研修計画」ではなく、
経営戦略から逆算されたTo-Be組織能力
として定義するからです。
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④ Enablement Journeyを設計する
次に、
現在地 → 目標能力
までの道筋を設計します。
これが「イネーブルメント・プログラム」です。
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⑤ PMOを設置する
さらに、変革を放置しません。
Project Management Office(PMO)を設置し、
* 進捗管理
* 課題管理
* 成果管理
* 部門間調整
* 意思決定
を継続的に行います。
つまり、
Capability Map → Gap → Aspiration → Journey → PMO
という流れです。
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4. 第2の柱|スキル構築
組織能力を定義したら、それを個人レベルへ落とします。
重要なのは、
全社員に同じ研修をするのではない
という点です。
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4-1. コホート別に必要スキルを定義する
BCGでは、
* 従業員タイプ
* 職種
* 機能
* 階層
* コホート
などによって必要能力を細分化します。
その上で、
「誰が、どの能力を、どこまで持つ必要があるか」
を定義します。
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4-2. カスタムメイドのカリキュラム
一般的な研修プログラムをそのまま導入するのではなく、
* 企業固有の課題
* 得意分野
* 苦手分野
* 戦略
* 業務プロセス
に合わせて研修を設計します。
つまり、
Strategy-specific Capability Building
です。
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5. 「Learn → Do → Teach」が能力を定着させる
ここは今回の添付の中でも特に重要な考え方です。
BCGが推奨するのは、
Learn → Do → Teach
という循環です。
Learn
必要なスキルを学ぶ
↓
Do
実際の業務で使う
↓
Result
成果が出るか検証する
↓
Teach
成果を出した人が他の社員へ教える
という仕組みです。
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5-1. 「研修を受けた」で終わらない
研修の評価を、
「知識を理解したか」
だけでは行いません。
実務で、
* スピード向上
* 売上向上
* 利益改善
* 効率改善
などにつながったかまで確認します。
すなわち、
Training KPIではなくBusiness KPIで能力開発を評価する
という考え方です。
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6. Teachが組織能力を内製化する
さらに重要なのが「Teach」です。
外部コンサルタントや外部講師が永遠に教え続ける状態では、
サステナブルな組織能力とは言えない
と考えます。
そこで最初に育成された社員が、
社内伝道師
となって他の社員を育成します。
これによって、
外部依存型Capability Building
から、
自己増殖型Capability Building
へ移行します。
したがってLearn-Do-Teachには、
「能力の複利化」
という意味があります。
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7. 第3の柱|ビジネス・プラットフォームの構築
そして3つ目が、
Business Platform
です。
ここで初めて、
「人」から「組織の仕組み」へ変革を移します。
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なぜプラットフォームが必要なのか
例えば、社員が新しい能力を身につけても、
* 稟議書を書かなければ進まない
* 会議を何度も通さなければならない
* 担当者に決裁権がない
* 評価制度が古い
* ITシステムが遅い
* 組織構造が複雑
という状態なら、結局以前の仕事の仕方へ戻ります。
つまり、
能力のボトルネックが人から仕組みに移る
わけです。
そのため、戦略や能力開発と同時に、
Operating Systemそのものを変える必要があります。
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8. ビジネス・プラットフォームの5要素
図では主に以下が示されています。
① 意思決定ツール
誰が、何を、どう判断するのか。
判断基準を標準化します。
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② 評価基準・インセンティブ
望ましい行動を定義し、
* KPI
* 評価
* 報酬
* インセンティブ
へ接続します。
つまり、
「新しい行動を取ってください」
ではなく、
「新しい行動を取ることが合理的な制度」
をつくります。
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③ 組織構造とAccountability
* 誰が責任を持つか
* 誰が決定するか
* 誰に権限があるか
を明確にします。
⸻
④ 業務プロセス
「いつ、誰が、どの順番で、何をするか」を再設計します。
⸻
⑤ IT基盤
ITによって、
* 作業時間短縮
* データ共有
* 標準化
* 分析
* 意思決定
を支援します。
添付では、新しいITシステムによって同じ業務を3分の1の時間で行えるようにする、といった例も挙げられています。
⸻
9. 3つの柱を統合すると何が起こるか
以上を統合すると、イネーブルメントは次の構造になります。
Capability
何ができる組織になるか
↓
Skill
誰が何をできるようになるか
↓
Platform
それを日常的に実行できる仕組みをどうつくるか
↓
Behavior
実際の行動が変わる
↓
Performance
売上・利益・効率などが変わる
↓
Enterprise Value
企業価値が継続的に上がる
したがって、BCGがいうEnablementとは、
人材育成ではなく、戦略を日常行動へ変換する実装システム
と捉えた方が本質に近いでしょう。
⸻
10. 構造改革フェーズ――「旅の資金を調達する」
添付後半では、構造改革フェーズにおける経済価値創出のレバーが整理されています。
大きく4つです。
構造改革の4大レバー
1. 売上拡大
2. 組織のフラット化
3. 資本効率向上
4. コスト削減
これは言い換えると、
Growth / Organization / Capital / Cost
の4方向から企業価値を改善する考え方です。
⸻
11. レバー①|売上拡大
売上拡大にも3つの主要手段があります。
A. プライシング
具体策:
* 価格設定モデルの見直し
* 値引き抑制
* プライシング能力の強化
想定インパクト例:
売上 +2〜8%
価格は数量を増やさなくても売上・利益を改善できるため、非常に強力なレバーです。
⸻
B. 営業生産性向上
具体策:
* 顧客ターゲティング精度向上
* 営業チームのスキル向上
インパクト例:
売上・利益 +10〜15%
ここでも先ほどのCapability Buildingとの接続が見えます。
⸻
C. マーケティング
具体策:
* コスト最適化
* データアナリティクス導入
インパクト例:
* マーケティングコスト 10〜20%削減
* 売上ボリューム 3〜8%増加
つまりマーケティングを、
「広告費」
ではなく、
ROI最適化システム
として扱っています。
⸻
12. レバー②|組織のフラット化
次が、
組織再設計/デレイヤリング
です。
具体的には、
* 組織階層削減
* 管理スパン拡大
* 意思決定距離短縮
を行います。
効果例:
* 間接労務費 15〜30%削減
* Accountability向上
* 意思決定の質向上
* オペレーション高速化
ここでポイントなのは、
フラット化は単なる人員削減ではない
ことです。
意思決定速度を高め、
Decision Architectureそのものを改善する施策
になっています。
⸻
13. レバー③|資本効率向上
資本効率は主に3つに分かれます。
A. 運転資本圧縮
* 在庫圧縮
* 売掛金管理
* 買掛金管理
インパクト例:
運転資本20〜40%削減
⸻
B. 固定資産生産性向上
* 資産売却
* アウトソース
* 機器効率改善
インパクト例:
* 設備投資 20〜30%削減
* EBITDA 2〜8%拡大
⸻
C. プロジェクトポートフォリオ最適化
* NPV分析
* 投資優先順位付け
* 成果の出ないプロジェクト中止
などを実施します。
重要なのは、
「全部やる」から「価値を生む案件だけに資本を集中する」
への転換です。
これは単なるFinanceではなく、
経営資源配分そのものの改革
といえます。
⸻
14. レバー④|コスト削減
コスト削減は大きく4領域です。
① 売上原価・調達
* カテゴリー最適化
* サプライヤー最適化
* 調達高度化
インパクト例:
* 売上原価 2〜3%削減
* 調達コスト 5〜20%削減
⸻
② サプライチェーン
* 物流改善
* ネットワーク最適化
* 製品ポートフォリオ整理
インパクト例:
オペレーティングコスト10〜30%削減
⸻
③ 人件費
* オフショアリング
* アウトソーシング
* 組織最適化
インパクト例:
人件費20〜40%削減
⸻
④ その他経費
* 交通費
* 水道光熱費
* 設備
* IT
* サービス費
等を見直します。
⸻
15. ただし「削減」で構造改革は終わらない
ここが本書の重要なポイントです。
構造改革によって、
* キャッシュ
* 利益
* 投資余力
を生み出す。
しかしこれは目的ではありません。
図表の表現を借りれば、
「旅の資金を調達する」
フェーズです。
その資金を使って、
会社そのものを再成長軌道へ乗せる
必要があります。
⸻
16. 再成長フェーズの10領域
図表6-5では、中長期的な再成長施策として10領域が整理されています。
① 成長
会社をより大きな成長軌道へ乗せるため、
* 戦略
* オペレーティングモデル
を構築する。
⸻
② 新しいビジネスモデル
* 市場
* Value Proposition
* 商品・サービス提供方法
を再定義し、
ビジネスモデルそのものを変革する。
⸻
③ 組織
組織全体の、
* 意思決定
* 作業プロセス
の有効性・効率性を改善する。
⸻
④ マーケティング・営業
新しい市場に焦点を当て、
* 営業
* マーケティング
機能を再構築します。
単なるコスト削減ではなく、
新しい成長市場に合わせたGTM再設計
です。
⸻
⑤ オペレーション
* 製造
* サプライチェーン
* オペレーション
全体を対象に、
* 収益性
* コスト効率
を改善します。
⸻
⑥ デジタル化
単なるシステム導入ではありません。
新しいテクノロジーを活用して、
* 事業戦略
* Value Chain
* 企業固有の競争優位
そのものを再設計します。
つまり、
Digitalization = Business Model Transformation
として捉えています。
⸻
⑦ グローバル化
新興国・先進国を含めた成長機会を捉えるため、
グローバル市場における自社のポジショニングを再考する。
⸻
⑧ イノベーション・R&D
R&Dの有効性を高め、
* イノベーションの質
* イノベーションの量
の双方を改善します。
⸻
⑨ IT
中核ITインフラを全面的に見直し、
* 迅速な意思決定
* 高度な分析
* 効率的な業務プロセス
* 効率的なオペレーション
を実現します。
⸻
⑩ サポート機能
* 財務
* 経理
* 法務
* 人事
等について、
* コスト削減
* Performance向上
の両面から再設計します。
⸻
17. 添付全体を1つの「構造改革OS」として整理すると
今回の内容は次の5層として整理すると非常に理解しやすくなります。
Layer 1|Economic Impact
何を改善するか
* Revenue
* Organization
* Capital
* Cost
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Layer 2|Strategic Direction
どこへ会社を向かわせるか
* 成長戦略
* 新ビジネスモデル
* グローバル
* デジタル
* イノベーション
⸻
Layer 3|Organizational Capability
何ができる組織になるか
* Capability Portfolio
* Gap Diagnosis
* Aspiration
* Enablement Journey
⸻
Layer 4|People Capability
誰が何をできるようになるか
* Cohort別スキル
* Customized Curriculum
* Learn
* Do
* Result
* Teach
⸻
Layer 5|Business Platform
どうすれば毎日その行動が起こるか
* 意思決定
* Accountability
* KPI
* Incentive
* Organization
* Process
* IT
という構造です。
⸻
18. 最も重要な因果関係
本書の論理を因果チェーンとして整理すると、
戦略を決める
↓
必要な組織能力を決める
↓
必要な人材スキルを決める
↓
実務で使わせる
↓
成果が出るか検証する
↓
成功者が他者に教える
↓
組織構造・制度・プロセス・ITへ埋め込む
↓
望ましい行動が標準化される
↓
業績が継続的に改善する
↓
企業価値が向上する
となります。
この中で一つでも抜けると、変革は持続しません。
⸻
19. 本書から読み取れる「構造改革」の定義
以上から、本書における構造改革を一文に圧縮すると、
構造改革とは、短期的な業績改善によって投資余力を創出し、戦略実現に必要な組織能力を特定・育成し、それを組織構造・意思決定・評価制度・業務プロセス・ITへ埋め込み、企業が自律的に成果を出し続けられる状態へ移行することである。
と整理できます。
⸻
20. 特に重要な5つの示唆
① 「戦略」と「実行」を分離してはいけない
BCGのEnablementは、戦略策定後の単なるチェンジマネジメントではありません。
戦略そのものに実行能力の構築を内蔵する考え方です。
⸻
② 人材育成は「知識」ではなく「成果」で測る
研修受講率ではなく、
* 売上
* 利益
* スピード
* 生産性
が変化したかまで見る。
これは非常に実務的です。
⸻
③ 能力は「個人」ではなく「組織」に定着させる
Learn → Do → Teachによって、
個人知 → 組織知
へ変換する。
ここまで行って初めてCapabilityになるという考え方です。
⸻
④ 行動変容には「仕組み」が不可欠
社員に「変われ」と言うのではなく、
変わった方が合理的になるOperating Systemを設計する。
* 権限
* KPI
* Incentive
* Process
* IT
が行動を規定します。
⸻
⑤ コスト削減は「目的」ではなく再成長の原資
構造改革は守りではありません。
Cost Transformation → Investment Capacity → Regrowth
という因果関係で捉えます。
したがって、
「何を削減するか」と同時に「そこで浮いた資源をどこへ再投資するか」
を設計しなければ、真の構造改革にはならないということです。
⸻
結論
今回の添付部分で示されているBCG流構造改革の核心は、「数字を変える」「人を変える」「仕組みを変える」を同時に設計することにあります。
特に優れているのは、
短期成果
→ Capability
→ Skill
→ Behavior
→ Platform
→ 再成長
→ 企業価値
という因果関係が一本につながっている点です。
その意味で、イネーブルメント・プログラムは単なる研修制度でもチェンジマネジメントでもありません。
「戦略を実行可能な組織へ変換し、その実行能力を自己増殖・自己更新できる状態まで持っていくための組織変革エンジン」
と捉えるのが最も適切です。
そして図表6-4・6-5まで含めると、本書の構造改革は、
① 4つの経済レバーで資金・余力を創る
→ ② 3つのイネーブルメントの柱で実行能力をつくる
→ ③ 10の再成長領域へ経営資源を振り向ける
という、かなり完成度の高い「企業変革の循環モデル」として理解できます。
Posted by ブクログ
世界の経営環境がどのように変化しているのかを、多角的な視点から整理した一冊。テクノロジー、地政学、エネルギー、サプライチェーンなど、企業を取り巻く環境変化を俯瞰しながら、企業が今後どのような意思決定を求められるのかを考察している。
近年の企業経営の特徴として強く感じたのは、外部環境の複雑さである。地政学リスクの高まり、サプライチェーンの再構築、エネルギー問題など、企業の戦略はもはや市場や競争環境だけではなく、政治や社会の変化とも密接に関係するようになっている。
また、テクノロジーの進化が企業戦略に与える影響の大きさも印象的だった。AIやデジタル技術の発展により、企業は既存の事業モデルを前提にした競争だけではなく、技術を活用した新しい価値創造を考える必要がある。企業の競争優位は、技術、人材、組織といった複数の要素を組み合わせて構築されるものになってきている。
こうした環境の中で、企業は短期的な成果だけでなく、長期的な視点で事業ポートフォリオや組織のあり方を見直すことが求められている。変化の激しい時代において、経営とは環境の変化を読みながら、自社がどの方向に進むべきかを判断していく営みなのだと感じた。
世界の経営環境を俯瞰し、企業を取り巻く大きな流れを整理することができる一冊。毎年読み、その年の世界の変化を理解するための定点観測としていきたい。
Posted by ブクログ
世界の経営環境がどのように変化しているのかを俯瞰し、その中で企業がどのような意思決定を迫られているのかを整理した一冊。テクノロジー、地政学、エネルギー、サプライチェーンなど、企業を取り巻く大きな環境変化を多角的に読み解いている。
近年の経営環境の特徴として強く感じたのは、不確実性の高まりである。技術革新の加速、地政学リスクの拡大、エネルギー転換など、企業の外部環境はこれまで以上に複雑になっている。その中で企業は、短期的な効率性だけでなく、長期的な視点で事業の方向性を判断することが求められている。
また、企業の競争力は単一の要素で決まるものではなくなっている。テクノロジーの活用、組織の柔軟性、人材戦略、サプライチェーンの設計など、複数の要素を組み合わせながら戦略を構築していく必要があるという点も印象的だった。企業は環境の変化を受け身で捉えるのではなく、その変化を前提に事業ポートフォリオを継続的に見直していくことが求められている。
企業経営はもはや一つの分野だけで考えられるものではなく、テクノロジー、政治、社会、環境といった様々な要素が相互に影響する中で判断していくものになっている。経営とは複雑な環境の中で、どの方向に進むべきかを決める営みなのだと改めて感じた。
その年の経営環境を俯瞰することで、企業を取り巻く世界の変化を整理できる一冊。今後も毎年読み、世界の流れを理解するための定点観測としていきたい。
Posted by ブクログ
たまにはこういう本も。
・AIにより情報共有がアジャイル型に(なんでも共有可能に。JCTだと情報共有はピラミッド型なのね。。。)→組織は透明性あがり、フラットにもなるかな
・AIファーストになれるか
・中国の環境問題対策、大きく進展
・DX主権回復(外注依存からの脱却)
・金利があがる世界。PL/BS管理の高度化。ハードルレート上昇、事業ポートフォリオへの影響
・同意なき買収対策(適切な社外取締役選任、フェアバリュー算定)、業界再編を見据える
・農業 担い手の高齢化(平均年齢69歳!)。異業種とのコラボ、スコープ3の排出量削減施策
・行政のデジタル化(国民全体のマインド変更が必要かな。それには教育から。。。)
・GL分析からのコスト適正化プロジェクト(BCGでもこんなんやるんや)