【感想・ネタバレ】BCG 経営コンセプト 市場創造編のレビュー

あらすじ

日本で設立50年を迎えた
ボストン コンサルティング グループの最新経営手法

本書で解説されているのは、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の経営メソッド。
BCGは1963年にアメリカのボストンに誕生し、初期にはエクスペリエンス・カーブ(経験曲線)、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)など、経営史に残るコンセプトを開発・発表してきた。その後に開発されたBCGの経営手法をそのOBであり、そして、早稲田大学ビジネススクール教授である内田和成氏が解説しているのが本書である。

ビジネスを取り巻く環境の変化は加速し、いくつもの変化が重なり合い、複雑さを増している。
こうした中で求められるのは、飛躍的な成長(イノベーション)を実現する経営手法、そしてそれを実現する組織能力である。
本書は飛躍的な成長を実現する戦略メソッドに焦点を当てている。
グローバル経営、デジタル化、イノベーション、リスクマネジメント、株主価値向上など、企業の本質を変える戦略メソッドがくわしく解説されている。
飛躍的な成長を実現する組織能力については、姉妹本である『BCG 経営コンセプト 構造改革編』(菅野 寛著)に詳しい。

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

『BCG 経営コンセプト 市場創造編』統合レポート

― BCGデジタルベンチャーズに学ぶ「市場創造・新規事業創造・組織変革」の体系 ―

対象

内田和成ほか『BCG 経営コンセプト 市場創造編』
添付箇所:BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)、デジタル新事業創造、Allianz/Kaishi事例、大企業におけるビジネスモデル・イノベーション、「場をつくる」等

⸻

0. エグゼクティブサマリー

本書の添付部分を一つの体系として読み解くと、BCGが提示している「市場創造」は、単なる新商品開発やアイデア創出の方法論ではない。

その本質は、

顧客の未充足ニーズを起点に新しい事業機会を発見し、複数の仮説を高速に検証し、経営判断によって資源を再配分し、既存事業・外部企業を巻き込みながら、新しい顧客価値と事業構造そのものをつくり上げること

にある。

BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)は、そのための実行装置として、

①イノベーション
→ ②インキュベーション
→ ③コマーシャリゼーション

という3フェーズを持つ。

しかし、この3フェーズだけを理解してもBCGDVの本質は捉えきれない。

実際には、

* 顧客のフリクション探索
* アイデアの大量生成
* VC的なポートフォリオ管理
* 経営によるInvestment Gate
* Human-Centricな顧客理解
* Design Thinking
* MVP
* Lean
* Agile
* Data Driven Growth
* 多職種混成チーム
* 既存事業との接続
* トップマネジメントの関与
* 外部プレイヤーとのエコシステム形成
* 組織能力の移転

までを一つにつないだ、End-to-Endの事業創造システムとして設計されている。

したがって、BCGDVの競争力は「良いアイデアを生み出す能力」ではない。

より本質的には、

何が正解か分からない状況において、不確実性を高速に減らし、学習結果に応じて人・資金・時間を再配分し、事業を正解へ近づけ続ける能力

にある。

そして大企業においては、それだけでは十分ではない。

新規事業と既存事業、現場と経営、企業と企業を接続する**「場」**を意図的につくらなければ、どれほど優れた事業コンセプトも既存組織の中で止まる。

したがって、本書全体の思想は次の一文に凝縮できる。

市場創造とは、「優れた商品をつくること」ではなく、「顧客・事業・組織・資源・企業間関係を再設計し、新しい価値創造システムを成立させること」である。

⸻

1. BCGが捉える「市場創造」とは何か

一般的な新規事業開発では、

* どんな商品をつくるか
* どの市場へ参入するか
* どう売上をつくるか

といった問いから議論が始まりやすい。

しかし本書では、それよりも川上にある問いを重視する。

すなわち、

「顧客は現在、どのような不便・不満・不安・妥協を抱えているのか」

である。

その「現状」と「あるべき状態」とのギャップを、BCGDVではフリクションとして捉える。

市場創造とは、既存市場の中でシェアを奪うだけではない。

これまで顧客が、

* 仕方ないと思っていたこと
* 不便だが諦めていたこと
* 欲しいと自覚していなかったこと
* 言葉にできなかったこと

を見つけ、それを解消する新しい価値提供の仕組みをつくることである。

したがって、市場創造の起点は、

Product → Market

ではなく、

Human Friction → Opportunity → Business

である。

⸻

2. 市場創造を生み出す「3つの探索窓」

BCGDVは事業機会を主に3方向から探索する。

2-1. マクロ環境変化

* 規制変更
* 社会構造の変化
* テクノロジー進化
* 人口動態
* 消費行動の変化
* 産業構造変化

などを見る。

ただし、環境変化そのものをビジネス機会と短絡しない。

重要なのは、

Macro Change
→ Customer Behavior Change
→ Friction
→ Opportunity

まで落とすことである。

⸻

2-2. 顕在的なペインポイント

顧客が現在明確に困っていることを探す。

例えば、

* 時間がかかる
* 高い
* 分かりにくい
* 面倒
* 不安
* 選択肢がない

といった問題である。

⸻

2-3. 潜在ニーズ・潜在欲求

さらに重要なのが、顧客本人もまだ明確には認識・言語化していない欲求である。

ここには、

* 無意識の行動
* 不自然な回避行動
* 自作の工夫
* 複数サービスの組み合わせ
* 慣れてしまった不便

などがヒントになる。

したがって、市場創造の探索空間は、

マクロ変化 × 顕在課題 × 潜在欲求

の交点にある。

⸻

3. BCGDVの新事業創造モデル

BCGDVの事業創造は大きく3フェーズに分かれる。

フェーズ主目的中心問い主な成果
イノベーション機会発見・事業案選定何をやるべきか2〜3の有望コンセプト
インキュベーション仮説検証・開発本当に顧客価値を生むかMVP/市場投入可能な製品
コマーシャリゼーション事業成長どう成長・収益化するかスケール可能な事業

これをより抽象化すると、

Explore → Select → Build → Validate → Scale

である。

⸻

4. Phase 1|イノベーション

大量探索し、段階的に絞る

イノベーションフェーズは概ね12〜14週間。

この段階では最初から一案へ賭けない。

数十〜100程度のアイデアを出し、その中から有望な事業コンセプトを絞り込む。

ここで重要なのは、

一発必中を狙わない

ことである。

新規事業の未来は不確実であり、机上で成功案を正確に予測することはできない。

したがって、

Idea Portfolio
→ Screening
→ Experiment
→ Resource Reallocation

というVCに近い仕組みを取る。

⸻

5. 「フリクション」がアイデア創出の起点

BCGDVにおけるアイデア創出は、単なるブレインストーミングではない。

まず、

現状と理想状態の間にあるギャップ

を探す。

ここから、

* なぜこの問題が残っているのか
* 誰が最も困っているのか
* 既存サービスはなぜ十分でないのか
* 何が変われば解決できるのか

を考える。

つまり、

Idea First

ではなく、

Friction First

である。

⸻

6. VC的思考

BCGDVの事業選択における大きな特徴が、VC的思考である。

その特徴は次の通り。

① 客観性

自分たちの思い入れではなく、外から見て投資すべきかで考える。

② スピード

完璧に検討してから進むのではなく、早く市場へ接続する。

③ ポートフォリオ

複数案へ小さく賭け、有望案に追加投資する。

④ 早期撤退

失敗を避けること以上に、失敗を早く認識する。

⑤ サンクコスト排除

「ここまで投資したから」という理由で継続しない。

⑥ Learning重視

失敗案件から得た情報を次の事業へ利用する。

この思想をまとめれば、

成功確率を100%に近づけるのではなく、失敗コストを小さくしながら試行回数を増やし、ポートフォリオ全体の成功確率を高める

ということである。

⸻

7. Investment Gate

4回程度の投資委員会による選択

BCGDVでは、事業案を複数回の投資委員会で評価する。

参加者には、

* 親会社CEO
* 経営幹部
* BCGパートナー

などが入り、チームが事業案を短時間でピッチする。

初期段階では特に、

1. その事業にはどんな意味があるか
2. どんなフリクションを解消するか
3. なぜ今なのか
4. 親会社戦略と整合するか

が重視される。

重要なのは、初期から精緻な財務モデルを求めすぎないことである。

不確実性の高い段階で、

* 詳細な売上予測
* 5年後の利益
* 精緻なNPV

を計算しても、実態以上に数字が精密に見えるだけである。

初期段階では、

Financial PrecisionよりStrategic Story

を優先する。

⸻

8. Human-Centric Approach

顧客に「答え」を聞かない

BCGDVのもう一つの柱が徹底した顧客理解である。

主な手法として、

* エスノグラフィック・リサーチ
* デプスインタビュー
* 行動観察
* 生活文脈の観察

などを使う。

重要なのは、

「どんな商品が欲しいですか?」

と顧客に直接答えを聞かないことである。

見るべきなのは、

発言
+ 行動
+ 感情
+ 環境
+ 妥協
+ 回避行動
+ 無意識の工夫

である。

顧客は自分が本当に必要としている新商品を必ずしも言語化できない。

企業の役割は、顧客の言葉の奥にある構造を解釈することである。

⸻

9. Design Thinking

粗く見せて、正しい反応を引き出す

顧客洞察を基に、解決策をラフに描く。

BCGDVでは、あえて完成度の低いスケッチを用いる場合もある。

なぜなら完成品のように見えるプロトタイプでは、顧客が遠慮してしまうからである。

一方、粗いプロトタイプなら、

「ここは違う」
「こうしてほしい」
「これは使わない」

と本音が出やすい。

したがって、

Prototypeの目的は、製品を見せることではなく、顧客から学習することである。

⸻

10. Phase 2|インキュベーション

Lean × Agileで「つくりながら学ぶ」

イノベーションフェーズで残った2〜3案について、開発を進めるか判断する。

進める事業については、

Lean × Agile

が中核となる。

⸻

11. MVP

最小限の価値だけ実装する

MVPとはMinimum Viable Product。

意味するところは、

顧客価値の核を検証するのに必要な最低限の機能だけを持つ製品

である。

重要なのは、

「小さな製品」

ではなく、

「最小の学習装置」

と捉えること。

つまり、

Build → Measure → Learn

を可能にするためにつくる。

⸻

12. Agile

変更を「失敗」ではなく「学習」と捉える

従来型ウォーターフォールでは、

要件定義
→ 設計
→ 開発
→ テスト

と順番に進む。

一方アジャイルでは、

Prototype
→ Test
→ Feedback
→ Pivot
→ Rebuild

を高速で回す。

前提となる思想が異なる。

ウォーターフォール:

最初に正しい要件を決める。

アジャイル:

最初に正しい要件が分かるとは限らない。

したがって、変更は異常ではない。

顧客から学習した結果としての正常な状態である。

⸻

13. Phase 3|コマーシャリゼーション

商品開発からBusiness Buildingへ

プロダクトが市場へ出た後、焦点は「つくる」から「育てる」へ変わる。

主な活動は、

Product Iteration

ユーザー反応に基づき製品を継続改善する。

Data Driven

KPIを定義し、数字を基に改善する。

Growth Hack

顧客行動を分析し、獲得・利用・継続を改善する。

Organization Building

一時的なプロジェクトから恒常的な事業組織へ移行する。

つまり、

Product Development → Business Building

へ変化する。

⸻

14. マーケティングの3段階

コマーシャリゼーションではマーケティングを3段階で捉える。

① Pre-Access

顧客を連れてくる。

* SEO
* SEM
* 広告
* 集客施策

など。

② On-Access

来訪した顧客を購入・利用へ変える。

* UI
* UX
* コンバージョン改善

など。

③ Post-Access

一度利用した顧客との関係を育てる。

* CRM
* リピート率
* LTV
* 顧客単価
* 顧客満足度

など。

これらをデータベースマーケティングが横断する。

したがって成長構造は、

Acquisition → Conversion → Retention → LTV

である。

⸻

15. BCGDVの組織モデル

サイロ化した専門分業へのアンチテーゼ

大企業の新規事業では、

* 戦略:コンサル
* デザイン:デザイン会社
* 開発:SIer
* マーケティング:広告会社

のように分かれやすい。

すると、

* 戦略とUXがずれる
* UXと技術がずれる
* 開発とマーケティングがずれる
* 意思決定に時間がかかる

という問題が生じる。

BCGDVはこれを、

End-to-Endの同一チーム

で解消する。

⸻

16. 多職種混成チーム

BCGDVの代表的な人材構成は次の通り。

人材役割
ベンチャーアーキテクト事業プロデューサー・全体統括
プロダクトマネジャー0→1から成長までを担う
ストラテジックデザイナー顧客洞察から事業コンセプトを設計
エクスペリエンスデザイナーUI/UX・体験設計
エンジニア設計・開発・運用
マーケティング/グロース専門家顧客獲得・サービス成長

これに、

* 独自ツール
* グローバルネットワーク
* 最先端技術へのアクセス
* スタートアップ投資
* 過去案件の経験

を組み合わせる。

したがって競争力は、

Talent × Method × Knowledge × Network × Technology × Capital

から生まれる。

⸻

17. BCGDVは「助言者」ではなく共同事業者

BCGDVは通常のコンサルティングよりも深く事業に入る。

戦略だけでなく、

* デザイン
* 開発
* 成長
* 運用
* 投資

まで関与する。

場合によっては、

* キャッシュ
* 知的財産
* 人材

まで投入する。

つまり、

Advisor
→ Builder
→ Operator
→ Investor

へ役割を広げる。

⸻

18. 顧客企業のコントロールを維持する

BCGDVのもう一つの特徴は、協業企業側が事業の主体であり続けること。

例えば、

* ブランド
* 知的財産
* 資本政策

などについて、協業企業側が一定の自由度を持つ。

したがって、

「BCGDVに新規事業を外注する」のではなく、「BCGDVの事業創造能力を使って、自社の事業を自社主導でつくる」

モデルである。

⸻

19. Capability Transfer

最終成果は「事業1件」ではない

共同開発することで、協業企業はBCGDVの方法論を実地で学ぶ。

蓄積されるものは、

* 顧客観察
* 仮説設計
* プロトタイピング
* MVP
* Agile
* グロース
* 投資判断

など。

その結果、

External Capability
→ Joint Delivery
→ Learning
→ Internal Capability

という知識移転が起こる。

最終的には、

新規事業を継続的につくれる会社になること

が重要になる。

⸻

20. Allianz × Kaishiケース

「保険を売る」から「妊娠・出産体験を支援する」へ

この方法論を具体的に示すのが、Allianzの中国市場における事例である。

Allianzは中国市場への浸透を狙い、インターネットやモバイルアプリによる保険販売を試みたが、十分な成果を得られなかった。

そこで問いを変えた。

従来:

どうすれば中国で保険を売れるか。

新しい問い:

中国の生活者にどんな未充足ニーズがあるか。

⸻

21. 3方向からFrictionを探索

Macro Change

中国で一人っ子政策が廃止。

Pain Point

妊婦や家族が専門家から十分な支援を受ける機会が限られている。

Latent Need

* 妊娠中の不安を減らしたい
* 胎児の状態を知りたい
* 胎児とのつながりを感じたい
* 同じ立場の親とつながりたい

という欲求が見えてきた。

⸻

22. 顧客インサイトを深掘る

デプスインタビューなどを通じ、

* 胎児の心音を聞きたい
* 胎児の発育を学びたい
* 妊娠中の症状について知りたい
* 日々の経験を記録したい
* 他の妊婦・家族と共有したい

といった具体的なニーズを発見した。

重要なのは、

「どんな保険が欲しいですか」とは聞いていない

ことである。

⸻

23. 保険会社なのに、最初に保険をつくらない

顧客課題から考えた結果、生まれたのがKaishiという胎児の心音を家庭で確認するデバイスとアプリである。

つまり、

Insurance Product
→ Customer Experience

へ思考を拡張した。

これが市場創造における非常に重要なポイントである。

自社が何を売っている会社かではなく、顧客に対してどんな価値を提供する会社になるべきかから考える。

⸻

24. 顧客価値 → 技術要件

当時の従来機器には超音波利用に関する懸念があった。

そこで、

家庭で安心して使える、超音波を使わないデバイス

という方向に進んだ。

つまり、

Technology → Use Case

ではなく、

Customer Need → Requirement → Technology

である。

⸻

25. 大量のPrototypeとPivot

開発では、

* ハードウェア試作:約100個
* アプリデザイン:約20種類

などをつくり、フィードバックを優先順位づけしながら改良した。

最終的には素材・安全性・性能に関わる多数の検査も通過した。

ここでも、

最初の設計を正しくするのではなく、試行回数によって正解へ近づく

という思想が一貫している。

⸻

26. DeviceからPlatformへ

Kaishiは単なる胎児心音デバイスではない。

アプリを通じて、

* 心音の録音・共有
* 胎児の発育情報
* 母体の症状情報
* 健康アドバイス
* 栄養ガイダンス
* レシピ
* コミュニティ
* 赤ちゃんダイアリー

などへ拡張された。

結果として、

Device
→ App
→ Content
→ Community
→ Diary
→ Data
→ Customer Relationship

という関係基盤へ発展した。

⸻

27. Point ProductからRelationship Platformへ

Kaishiの戦略的価値は、デバイス販売だけではない。

本当の価値は、

妊娠・出産という重要なライフイベントで顧客との継続的接点を獲得すること

にある。

そこで得た情報を基に、

顧客が最も必要とするタイミングで保険や金融サービスを提供する。

つまり、

Device → Engagement → Data → Insight → Insurance

である。

これは「保険をデジタルチャネルで売る」こととは全く異なる。

顧客関係そのものをデジタル化する戦略である。

⸻

28. LaunchはFinishではない

Kaishiはコンセプト形成から比較的短期間で市場投入され、その後も多数回のアップデートを重ねた。

つまり、

Launch ≠ Project Completion

である。

市場投入とは、仮説検証の終わりではない。

むしろ、

本格的な実市場学習の開始点

である。

⸻

29. 大企業特有の問題

優れた新規事業でも「組織」で止まる

ここから本書の議論は、商品や開発手法から組織へ移る。

大企業では、

* 新規事業部門
* 既存事業部門
* 経営陣
* 関連会社
* 外部企業

などが別々に動いている。

そのため、

顧客にとって正しい新規事業であっても、社内では正しく動かない

場合がある。

BCGがここで強調するのが、

「場をつくる」

ことである。

⸻

30. 「場」とは何か

ここでいう場は単なる会議ではない。

異なる知識・権限・利害を持つ関係者を接続し、事業に必要な意思決定と資源配分を可能にする仕組み

である。

場には3つの次元がある。

⸻

31. 場①|新規事業 × 既存事業

既存事業メンバーは、

* 技術
* 顧客
* ブランド
* 営業網
* オペレーション
* 取引先
* 業界構造

などを深く理解している。

一方、新規事業チームは、

* 新市場
* 新顧客
* 新技術
* 新ビジネスモデル

には強いが、既存資産への理解が浅い場合がある。

そこで、

一定程度新規事業コンセプトができた後に、両者をぶつける

ことが有効になる。

⸻

32. なぜ最初から既存事業を入れないのか

最初から既存部門が強く入ると、

* 既存商品との整合
* 現在の予算
* 現在の営業網
* 現行ルール

などが先に制約となり、発想を小さくする可能性がある。

したがって順序としては、

Customer → Opportunity → Concept

を先につくり、

その後で、

Concept × Corporate Assets

を考える。

これは、

既存資産を「制約」ではなく「優位性」に変えるための順序設計

である。

⸻

33. 場②|新規事業 × トップマネジメント

新規事業には、

* カニバリゼーション
* ブランドリスク
* 長期投資
* 新しい収益モデル
* 部門を超えた資源再配分

などが伴う。

そのため、単一部門の権限では判断できない。

トップマネジメントを巻き込み、

Why this business?
Why us?
Why now?
Where to play?

を議論する必要がある。

トップの役割は単なる「決裁者」ではない。

企業として、どこまで事業ドメインを広げるかを定義する存在

である。

⸻

34. 場③|自社 × 外部プレイヤー

新しい市場では、一社だけで顧客価値を完結できない場合が多い。

そこで、

* 金融
* 小売
* 流通
* テクノロジー
* プラットフォーム
* その他周辺企業

との協働が必要になる。

しかし、

「一緒にやりましょう」

では動かない。

相手にも経済合理性が必要である。

⸻

35. パートナーにもHuman-Centric Approachを使う

例えば小売企業に新しい決済手段を導入してほしい場合、

「便利な決済です」

では十分ではない。

一方、

電子クーポンを配布し、来店や売上増加につなげられる

となれば、小売側のPainと接続する。

つまり、

Partner Pain → Partner Value → Win-Win

まで設計する。

顧客だけでなく、

エコシステム参加者それぞれの未充足ニーズ

を理解することが必要になる。

⸻

36. 大企業の市場創造を支える「3つの場」

以上をまとめると、

場目的
新規事業 × 既存事業新しい機会と既存アセットを接続する
新規事業 × 経営戦略・資源・リスクを決定する
自社 × 外部企業Win-Winのエコシステムをつくる

すなわち、

内部横断 × 経営縦断 × 外部横断

の3方向を接続することが重要となる。

⸻

37. 大企業のビジネスモデル・イノベーション「5原則」

本書では、成功の留意点を5つに整理している。

⸻

原則1|既存商品・サービスを超えて考える

自社が現在売っているものを起点にしない。

必要であれば、事業ドメインそのものを変える。

問いは、

「自社商品をどう伸ばすか」

ではなく、

「顧客の問題をどう解決するか」

である。

⸻

原則2|過去の勝ちパターンにとらわれない

過去に成功したビジネスモデルが、未来にも有効とは限らない。

そこで重要な問いが、

「現在のビジネスモデルは顧客にどんな妥協を強いているか?」

である。

顧客が諦めている場所こそ、イノベーション機会になる。

⸻

原則3|短期業績との摩擦を超える

既存事業と新規事業では、評価尺度が違う。

既存事業:

* 売上
* 利益
* 効率
* ROI

新規事業初期:

* 学習量
* 仮説検証
* 顧客理解
* リスク削減
* プロトタイプ
* 検証速度

である。

したがって、

ExploitのKPIをExploreへそのまま適用しない

ことが重要となる。

⸻

原則4|部門の壁を超えて資産を使う

新規事業では、

「この顧客はどの部署のものか」

より、

「会社全体として何を持っているか」

で考える。

すなわち、

Department Asset
→ Corporate Asset

への転換である。

⸻

原則5|Win-Winのエコシステムをつくる

市場創造の初期では、

競争よりも前に、

市場そのものを成立させる協調

が必要になる場合がある。

したがって、

Competitive Advantage

だけでなく、

Collaborative Advantage

が重要となる。

⸻

38. BCGDVモデルを「6層」で捉える

ここまでを統合すると、BCGDVの市場創造モデルは次の6層に分けられる。

Layer 1|Opportunity

* マクロ変化
* Pain
* Unmet Need
* Friction

から機会を探す。

Layer 2|Venture Portfolio

* アイデア大量創出
* Investment Gate
* Kill / Continue
* 投資配分

を行う。

Layer 3|Customer Insight

* Ethnography
* Interview
* Observation
* Design Thinking

によって顧客理解を深める。

Layer 4|Product Development

* Prototype
* MVP
* Lean
* Agile
* Pivot

によって製品をつくる。

Layer 5|Commercialization

* KPI
* Data
* Marketing
* Growth
* CRM
* LTV

によって成長させる。

Layer 6|Corporate Capability

* 多職種チーム
* 経営Gate
* 既存事業連携
* エコシステム
* Capability Transfer

によって継続可能な組織能力にする。

⸻

39. BCGDV型「市場創造OS」の全体プロセス

本書全体を再構成すると、次のプロセスになる。

STEP 1|Observe

市場・技術・制度・社会変化を観測する。

↓

STEP 2|Discover Friction

顧客が抱えるPain、Unmet Need、妥協を発見する。

↓

STEP 3|Expand Domain

既存商品・既存業界の境界を一度外す。

↓

STEP 4|Generate Portfolio

多数の事業アイデアをつくる。

↓

STEP 5|Investment Gate

Why / Why Now / Why Usで絞る。

↓

STEP 6|Human Insight

顧客を深く理解する。

↓

STEP 7|Prototype

粗い解決案をつくる。

↓

STEP 8|Validate

顧客にぶつけ、学習する。

↓

STEP 9|MVP

核心価値だけ実装する。

↓

STEP 10|Agile & Pivot

テスト・修正・方向転換を繰り返す。

↓

STEP 11|Connect Corporate Assets

既存事業の資産を接続する。

↓

STEP 12|Executive Decision

経営がドメイン・リスク・資源配分を判断する。

↓

STEP 13|Ecosystem

外部企業とのWin-Winを構築する。

↓

STEP 14|Commercialize

市場投入する。

↓

STEP 15|Grow

データとKPIに基づき成長させる。

↓

STEP 16|Learn

事業結果から学習する。

↓

STEP 17|Capability Transfer

知識を企業内部へ蓄積する。

↓

STEP 18|Repeat

次の事業創造へ学びを還流する。

⸻

40. BCGDVの本当の競争優位

BCGDVの強さを、

* デザインシンキング
* アジャイル
* エスノグラフィー

といった個別手法に求めると、本質を見誤る。

これらは他社も使える。

真の競争優位は、

探索・投資・開発・成長・学習を一つにつなぎ、各ステージで異なる専門家と意思決定者を適切に配置していること

にある。

つまり、

MethodではなくSystem

である。

⸻

41. 「市場創造」の深層構造

本書の議論をさらに抽象化すると、市場創造とは3つの再定義である。

第1段階|顧客価値の再定義

「何を売るか」ではなく、

「顧客にとって何を解決すべきか」

を定義し直す。

⸻

第2段階|企業境界の再定義

「自社は何業か」という固定観念を外し、

「顧客価値を実現するため、自社はどこまで担うべきか」

を考える。

Allianzが保険から妊娠支援デバイスへ広がったのが典型である。

⸻

第3段階|産業境界の再定義

一社ですべてを行うのではなく、

「誰と組めば新しい価値提供構造が成立するか」

を再設計する。

ここまで進むと、市場創造は、

Product Innovation

ではなく、

Business Model / Ecosystem Innovation

になる。

⸻

42. 本書が教える「市場創造企業」の姿

市場創造に強い企業とは、必ずしも未来を正確に予測できる企業ではない。

むしろ、

1. 顧客の変化を早く捉える
2. 仮説を多数つくる
3. 小さく賭ける
4. 早く試す
5. 失敗を認める
6. 有望案に追加投資する
7. 既存資産を適切に使う
8. 外部企業を巻き込む
9. 経営が資源を機動的に配分する
10. 学習を次の挑戦へ戻す

ことができる企業である。

つまり、

予測能力より学習能力、計画精度より適応速度が重要

となる。

⸻

43. 特に重要な10の経営示唆

本書から得られる示唆を経営レベルに圧縮すると、以下の10点に集約できる。

1. 新規事業は「アイデアの質」より「探索システムの質」で決まる。

2. 事業機会は自社技術ではなく顧客のフリクションから探す。

3. 一案を精緻化するより、多数案を安く検証する。

4. 新規事業初期に精緻な財務予測を求めすぎない。

5. 顧客には欲しい商品を聞くのではなく、行動と文脈を見る。

6. プロトタイプは成果物ではなく学習装置である。

7. 新規事業はProjectではなくPortfolioとして管理する。

8. 既存事業は初期には制約になり得るが、中盤以降は最大の競争優位になる。

9. 大企業では優れた事業案以上に「場」と「Gate」の設計が重要である。

10. 最終成果は1つの成功事業ではなく「事業を継続的に生み出せる組織能力」である。

⸻

44. 結論

『BCG 経営コンセプト 市場創造編』のBCGDV関連部分が示しているのは、単なる「スタートアップ的な新規事業のつくり方」ではない。

その思想はもっと広い。

市場創造とは、

顧客の未充足ニーズを発見し、そのニーズを満たすために既存商品・既存事業・企業境界を一度外し、最適な価値提供構造をゼロから設計すること

である。

そして、それを大企業で実現するためには、

顧客探索
× VC型投資
× MVP
× Agile
× Growth
× 経営Gate
× 既存事業連携
× Ecosystem
× Capability Building

を一体化しなければならない。

BCGDVの最大の特徴は、これらを断片的なツールとして扱わず、

「探索 → 選択 → 実験 → 投資 → 成長 → 学習」

という一つの閉じたループとして設計している点にある。

したがって、このモデルの本質は、

良いアイデアを生み出すことではなく、良い事業へ到達する確率を組織的に高めること

にある。

さらに大企業では、

新規事業 × 既存事業
新規事業 × 経営
自社 × 外部企業

という3つの「場」をつくり、企業の内部・上下・外部を横断させなければならない。

最終的にBCGが示している市場創造企業とは、

未来を正しく予測する会社ではない。
未来について仮説を持ち、顧客と市場へ小さく接続し、失敗から素早く学び、学習に応じて資源を再配分し、その能力自体を組織へ蓄積し続けられる会社である。

この意味において、本書に描かれているBCGDVは単なる新規事業開発手法ではなく、**大企業が不確実性の中で市場を創造し続けるための「事業創造OS」**として捉えるのが最も適切である。

0
2026年08月17日

Posted by ブクログ

新興国市場に対する対応、デジタル化に対する戦略や、シナリオプランニング等について、BCGでの事例も含めて解説されていた。
特にシナリオプランニングについては、生々しいシナリオにするために、どのような組み立て方をするのかは参考になった。
デジタルやTSRについては、実際の課題に取り組む際は、語られている視点の重要性がわかってくるのだろう。

0
2021年04月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

BCGの経営のコンセプトについての本。
いまのトレンドが反映されており、なかなか面白かった
<メモ>
■グローバルアドバンテージ
新興国で勝てるビジネスモデルの構築
会社におけるポートフォリオマネジメント
グローバルガバナンスの構築
 が必要

・デジタル時代の新規事業開発には一貫して自社で関与しコントロールすることが求められる

・まずは収益性よりストーリーを重視して評価する
開発はMVPミニマムバリューポイントに絞って取り組む。
・ウォーターフォール型ではなくアジャイルで高速ピボットを繰り返して開発する

■ビジネスモデルとは
バリュープロポジジョンとオペレーションモデルの組み合わせ。
誰に対していくらでどんな価値を提供するか。それをどのような体制で実現するか。
バリュープロポジジョンはターゲット 商品サービス 収益モデル
オペレーションモデルは
バリューチェーン、コストモデル、組織構造

■ビジネスモデルイノベーションがうまく行かない理由
1 既存の延長、大胆でない
2 成功体験に牽引され顧客が見えてない
3既存への配慮
4投資が不十分
5 関係者と適切な関係構築できてない

新規事業は既存とは組織を分けつつ、意思決定者は共通させる、適宜連携する会議体を持つなど、既存アセットも活用できるようなバランスをとって進めることが重要

■シナリオプランニングの良いシナリオの条件
非連続で想像力をかきたてられる
複数のシナリオが包含されている
自社事業の将来のあり方を大きく変えている

■トレンドはインパクトのおおきさ、不確実性の大小、自社の準備状況から絞り込む
特にインパクトが大きく不確実性が高いまたは準備ができてないものに優先的に取り組む

0
2017年07月11日

Posted by ブクログ

グローバリゼーション、イノベーション、デジタル化、株主価値経営など、現代の経営課題に対する示唆が豊富。個人的にはシナリオ・プランニングが非常に有用に感じた。

0
2017年01月05日

Posted by ブクログ

 新事業創造のお勉強。かなり教科書的。

 実際、消費者向けビジネスを営む先進グローバル企業は、広告費におけるデジタル(ペイドリサーチ、SNS、モバイル、その他オンライン・マーケティング)の比率を高めている。一般消費財(食品、日用品等)業界の先進グローバル企業は、広告費の30~45%程度をデジタルに費やしている(2014年時点)。これに比べて日本では、大手一般消費財企業でも10%内外といったところだろう。ただし、これら先進的グローバル企業でも、アドテクを使いこなせている広告主はほとんどいないのが実態である。

 よく見られる例を2つ紹介しよう。ひとつは、リターゲティングで回数多く出しすぎると効果が大幅に低減することである。…インプレッションごとに課金されているが、…全出稿の4割以上が、効果がきわめて低い10回以上の表示だった。この企業に限らず、多くの企業で、広告露出の上限回数を定めることで、無駄な費用を3~4割削減できた。
 もうひとつの例は、表示されていても、実際にはユーザーに見られていないケースだ。たとえば画面をスクロールしないと見えないような場所に広告が表示されているために、実際にはほとんど見られていない。

・大企業のビジネスモデル・イノベーションがうまくいかない5つの要因
①既存ビジネスからのしみ出しの発想で、大胆な発想がない
②成功体験をもとに発想し、消費者や事業者の今のニーズを把握できていない
③既存ビジネスへの配慮から、イノベーションのジレンマに陥る
④リソースの配分やアセットの活用が不十分
⑤関連プレーヤーとWin-Winの関係が構築できない

・大企業においてビジネスモデル・イノベーションを成功させるための留意点
①既存の商品・サービスを超えて広い視野で考え、ドメインの変更も辞さない姿勢で臨む
②過去の勝ちパターンにとらわれず、外向きの視線で、現行ビジネスモデルが顧客に強いている妥協を探求する
③短期的目標・業績との摩擦を乗り越え、中長期的な視点で組織能力を高める
④部門間の壁を超え、中長期的視点で最適なリソース配分とアセット活用を実現する
⑤外部の関連プレーヤーとWin-Winの関係を築き、エコシステムを拡張する

 抽出したトレンドは、事業インパクトの大きさ、自社の準備状況、不確実性の3つの視点で評価して絞り込む。…特に注意すべきトレンドは、自社への影響が大きいことがわかっているのに、企業として備えが不十分なものや、実際に起こるかどうか不確実なものだ。これらを「ブラインドスポット」と呼んでいる。

0
2019年03月30日

Posted by ブクログ

 新事業創造のお勉強。かなり教科書的。

 実際、消費者向けビジネスを営む先進グローバル企業は、広告費におけるデジタル(ペイドリサーチ、SNS、モバイル、その他オンライン・マーケティング)の比率を高めている。一般消費財(食品、日用品等)業界の先進グローバル企業は、広告費の30〜45%程度をデジタルに費やしている(2014年時点)。これに比べて日本では、大手一般消費財企業でも10%内外といったところだろう。ただし、これら先進的グローバル企業でも、アドテクを使いこなせている広告主はほとんどいないのが実態である。

 よく見られる例を2つ紹介しよう。ひとつは、リターゲティングで回数多く出しすぎると効果が大幅に低減することである。…インプレッションごとに課金されているが、…全出稿の4割以上が、効果がきわめて低い10回以上の表示だった。この企業に限らず、多くの企業で、広告露出の上限回数を定めることで、無駄な費用を3〜4割削減できた。
 もうひとつの例は、表示されていても、実際にはユーザーに見られていないケースだ。たとえば画面をスクロールしないと見えないような場所に広告が表示されているために、実際にはほとんど見られていない。

・大企業のビジネスモデル・イノベーションがうまくいかない5つの要因
?既存ビジネスからのしみ出しの発想で、大胆な発想がない
?成功体験をもとに発想し、消費者や事業者の今のニーズを把握できていない
?既存ビジネスへの配慮から、イノベーションのジレンマに陥る
?リソースの配分やアセットの活用が不十分
?関連プレーヤーとWin-Winの関係が構築できない

・大企業においてビジネスモデル・イノベーションを成功させるための留意点
?既存の商品・サービスを超えて広い視野で考え、ドメインの変更も辞さない姿勢で臨む
?過去の勝ちパターンにとらわれず、外向きの視線で、現行ビジネスモデルが顧客に強いている妥協を探求する
?短期的目標・業績との摩擦を乗り越え、中長期的な視点で組織能力を高める
?部門間の壁を超え、中長期的視点で最適なリソース配分とアセット活用を実現する
?外部の関連プレーヤーとWin-Winの関係を築き、エコシステムを拡張する

 抽出したトレンドは、事業インパクトの大きさ、自社の準備状況、不確実性の3つの視点で評価して絞り込む。…特に注意すべきトレンドは、自社への影響が大きいことがわかっているのに、企業として備えが不十分なものや、実際に起こるかどうか不確実なものだ。これらを「ブラインドスポット」と呼んでいる。

0
2021年08月08日

Posted by ブクログ

デジタル分野における事業創造の流れは次の3つである。

1. イノベーションフェイズ
2. インキュベーションフェイズ
3. コマーシャリゼーションフェイズ

現状とあるべき姿のギャップに着目する。そうしたギャプにこそイノベーションのチャンスが潜んでいる。

ビジネスモデル・イノベーションのケーススタディとして、オーストラリアの航空会社の競争が上げられている。

2000年にヴァージン・グループが、オーストラリアの国内線に参入した。プレミアム長距離路線のような乗り心地を低価格で提供し、またたくまに30%のシェアを獲得した。それに対して、カンタスは別組織で低コストの新しいビジネスモデルを立ち上げた。2004年に運行を開始した新しい会社はジェットスターであり、顧客が自分で食事や歯ブラシの有無などを選択できるアラカルト方式を導入することで低コストを実現したということである。2007年にヴァージン・ブルーはディスカウントモデルを諦め、ビジネス路線に主軸を移したという。

ここでのポイントは、低価格のニーズを持つ層にターゲットを設定し、それに適した商品、サービスを展開するなどバリュープロポジションの実現のためのバリューチェーンをつくり直した事、さらにはカニバリを恐れずに別組織を設立して、自律的に運営させたことによる。いわゆるイノベーションのジレンマを乗り越えたのである。

0
2020年05月25日

Posted by ブクログ

デジタル分野における事業創造の流れは次の3つである。

1. イノベーションフェイズ
2. インキュベーションフェイズ
3. コマーシャリゼーションフェイズ

現状とあるべき姿のギャップに着目する。そうしたギャプにこそイノベーションのチャンスが潜んでいる。

ビジネスモデル・イノベーションのケーススタディとして、オーストラリアの航空会社の競争が上げられている。

2000年にヴァージン・グループが、オーストラリアの国内線に参入した。プレミアム長距離路線のような乗り心地を低価格でていきょうし、またたくまに30%のシェアを獲得した。それに対して、カンタスは別組織で低コストの新しいビジネスモデルを立ち上げた。2004年に運行を開始した新しい会社はヘットスターであり、顧客が自分で食事や歯ブラシの有無などを選択できるアラカルト方式を導入することで低コストを実現したということである。2007年にヴァージン・ブルーはディスカウントモデルを諦め、ビジネス路線に主軸を移したという。

ここでのポイントは、低価格のニーズを持つ層にターゲットを設定し、それに適した商品、サービスを展開するなどバリュープロポジションの実現のためのバリューチェーンをつくり直した事、さらにはカニバリを恐れずに別組織を設立して、自律的に運営させたことによる。いわゆるイノベーションのジレンマを乗り越えたのである。

0
2018年10月08日

Posted by ブクログ

BCG元日本代表の内田和成氏の本。著書多いイメージ。「仮説思考」とか。

感想。うーん、頭のいい人は、こうビジョンで全体感を語り、そこで網羅されてるでしょということなのか。話が大きすぎて、市場創造の素人の私にはなんだかピンと来ず。

備忘録
・アジア全体で同じ売上高あげる場合、少数の国に集中してしてシェアをあげる形の方が収益性が高い。
・S字カーブの前倒し。
・新興市場に挑む場合には、成熟市場の日本と同じような成長スピードで事業計画を考えていると、主に供給面で見誤る。
・海外M&Aのガバナンスでは、任せすぎても、手を入れすぎても失敗する。信頼と透明性が大事。
・シナリオ検討時にはメガトレンドを抑える。
・TSR(株主総利回り)とその分解は初見。
TSR=キャピタルゲイン+インカムゲイン。
キャピタルゲイン=利益成長+マルチプル変化。
利益成長→PL、マルチプル→戦略やIR。
インカムゲイン→フリーCFや財務戦略。

0
2017年07月17日

Posted by ブクログ

特にこの本固有の何かはなかった。流行りものとジャーゴンどばーっという感じ。こんなにカタカナで書くなら英語で書けばよろしいのでは。

0
2017年06月04日

Posted by ブクログ

BCG日本支社設立50周年の区切りとして纏められた経営コンセプト書。「新規市場編」と銘打っており、事業開発や新規市場を主とした論点でよく纏まっている。が、全体的に尖りのない一般的な話、それこそ浅い新書で拾えるレベルの話題が続く。(それでもBCGにはノウハウやナレッジの蓄積があり強いのだと伝わってくるが)しかしながらケーススタディとTSRの章はBCGの切り口や分析手法、視点などは非常に参考となる。

それほど新しい発見に気付かされるものがある本ではないが、時代とともに役割と立ち位置を柔軟にリポジションしリノベーションしていく戦コンファームのしたたかさが感じ取れる本である。

0
2017年05月11日

Posted by ブクログ

【市場創造】

A.今日、既存大企業の課題の1 つにデジタル化がある。デジタル事業を開発するには、次の機能をリンクさせる必要がある。
Think(戦略立案)→ Design(コンセプト企画・サービス設計)→ Make(開発)→ Run(運用・成長)→ Risk Share(投資)
既存大企業は、これらの機能のほとんどを外部リソースに頼っている。そのため、各機能が分断され、開発が遅れている。

B.インターネット発のプレーヤー、例えばYahooやDeNA であれば、これらの機能をすべて社内に抱えており、各機能が連携して進める。
ところが、既存大企業の場合、これらの機能のほとんどを自社で保有しておらず、外部リソースを利用している。しかも、全機能を一貫して提供するプレーヤーは国内外にほとんど存在せず、機能ごとに異なる専門企業と組むことになる。その結果、各機能が分断され、伝言ゲームのような状況になってしまう例が多く見られる。途中で本来の戦略とは異なる思惑が入って、当初の戦略目的とは異なる商品・サービスができたり、スピードが損なわれタイミングを逸したりする。

0
2016年12月26日

「ビジネス・経済」ランキング