北条氏はなぜ将軍にならなかったのか、得宗専制とはそもそも何なのかなど素朴な疑問の提起から始まる本書は、「北条氏の鎌倉幕府支配を支えた論理」の解明を課題としている。
フォーカスされるのは、承久の乱で執権の権力集中を成し遂げた義時と、蒙古襲来という未曾有の危機に際して得宗専制体制を構築した時宗である。
...続きを読むあえて北条氏の歴史ではなく、この二人に絞ったことで「支配を支えた論理」とその政治史的意味を明確にすることに成功していると言って良いであろう。初出は『北条氏と鎌倉幕府』(講談社メチエ、2011)。
きわめて真面目な内容なのだが、資料の解釈など現代的な大胆に噛み砕いている部分が多く、初学者にもわかりやすいように配慮がされている。
本書の構成は以下の通り。
はじめにー素朴な疑問
第1章 北条氏という家
第2章 江間小四郎義時の軌跡ー伝説が意味するもの
第3章 相模太郎時宗の自画像ー内戦が意味するもの
第4章 辺境の独裁者ー四人目の源氏将軍が意味するもの
第5章 カリスマ去って後
おわりにー胎蔵せしもの
素朴だが重要な問題の回答については、ネタバレになるので書かないが、第4章後半の全体のまとめ的な部分を読めば、諒とされるであろう。また現在放映中の大河ドラマも面白く観ることができるように思う。