斎藤充功の作品一覧
「斎藤充功」の「小野田寛郎は29年間、ルバング島で何をしていたのか」「消された外交官 宮川舩夫(小学館新書)」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
2025.08.19
まずわわかること。
いま、トランプとプーチンの会談を受けて、ウクライナのゼレンスキーとトランプの会談の結果が報じられている。
残念ながら、ロシア、ソ連、そしてロシアはまったく信用がならないということが、このノンキャリアの優れた外交官の悲劇を通じてよくわかる。このままでは、アメリカとロシアの都合だけで、ウクライナはむしり取られ続け、蹂躙され続ける。
次にわかることは、いわゆるキャリア官僚がどれだけ自分の都合だけでノンキャリアの優秀な人をしゃぶりつくして、最後は見捨てるという人々なのかがよくわかる。宮川氏はキャリアの試験の受験を自分の所属する外務省に邪魔され続け、挙げ句の果てにはシベリア抑留の憂き目にあい、最後はモスクワで無念の死に至る。
歴史の教科書に出てくるような、松岡、広田などという輩は宮川氏のようやノンキャリアの支えがあって仕事ができていた。だから、便利遣いされ続けた。この本の感想を外務省のノンキャリアであった佐藤優氏にもきいてみたいとも思う。日本の組織は本当に人を大事にしないなとつくづく思う。夏の酷暑が続くが、読んでいる間も読み終えても心が冷え冷えとする。
Posted by ブクログ
太平洋戦争開戦時の日米の国力差は、GNP(国民総生産)でアメリカは日本の12倍であった。重工業力、化学力、石油や電気などエネルギー、戦争遂行に必要な能力に於いては、日本側アメリカに勝るものなど何一つなく、何故それでも「勝てるはずのない相手」にケンカを売ったのかは謎が多い。様々な意見を集約すれば、表向きはアジアン解放を謳いながら、植民地を欲した日本が大陸に資源を求めて進出し、脅威に感じたアメリカが石油の輸出を停止した結果、カラカラに干される前にやむ無く開戦した、と言った感じだろうか。それにしても、あまりの国力の開きにとても勝つ見込みなどは見出せないだろうし、事実それに気づいた(勝てないなどとは口に出せないかもしれないが)知米派が海軍にも政財界にも居たことはよく知られている。
戦前、日本もアメリカに対して優秀な人材を派遣して、国力などを詳細に調べさせている。本書がフォーカスを当てるのはその1人である、陸軍主計大佐の新庄健吉である。陸軍主計学校を卒業し、昇進を繰り返しながら晩年はアメリカに数字のスパイとして送り込まれた人物である。晩年といってもまだ40代であった人物だが、開戦直前に亡くなっている。その死因については病死とされているものの、本書を読むと陰謀により殺害された可能性があるのではとも思える。何故彼が取り上げられたかは、本書タイトル「開戦通告はなぜ遅れたか」に理由がある。
日本は戦史上はハワイの真珠湾に対して戦線布告前の奇襲作戦を仕掛けたことで知られる。実際のところアメリカはすでにその情報を得ていたとか、様々な説があるが、開戦やむなしの状態にあった事は間違いない。その戦線布告手続きの遅れは、通説としては外務省の不手際とされる。米国との交渉に当たっていた野村吉三郎や来栖三郎等による通告が遅れた原因は前述の新庄健吉の葬儀に参列していたことも一つの要因となる。
本書はこの日本の開戦通告の遅れを題材に、その中心にいる新庄健吉という人物像に迫る内容となっている。同氏は開戦前の緊迫した状況にあるアメリカ社会に180日以上滞在し、自分の目で触れたアメリカの実情を経理将校らしく数値化して分析した人物である。両国の差は誰の目からも明らかであったが、新庄の分析結果は戦後にアメリカによって賞賛されるなど、かなり精緻なものであったようだ。その情報を得て、なお、それでも開戦に踏み切った日本。同士が「数字は嘘をつかない、嘘が数字を作る」と発言をした様に、石油を止められ追い込まれた日本が楽観的観測を超える、超希望的観測に傾き、やむなしという空気感から誰1人抜け出せなかった。当時の状況を冷静に数字から見つめ、最後自ら結果(開戦という事実)を知らずにこの世を去った新庄。
新庄健吉の人生を辿りながら、結果を知る我々には様々な疑問を投げかけてくる一冊である。