かなり前に読んだのだが、再読しなくてはならないと思っていた本。読むことに覚悟が必要な本でもある。
戦争とはこういうものなのか、と平和な時代に生き、平和に暮らせている私としては、ただただ信じられぬ想いで読み進める。強制収容所と戦争はまた別ものという気もする。人間の愚かさ、愚劣さ、稚拙さを嫌というほど見
...続きを読むせつけられるが、一方で人間の強さ、精神性の高さもそれを上回る形で見せてくれる。
これ以上の理不尽はあるのかという状況で、黙々と生きる。生きるだけでなく、他者を生かそうとする人々のその精神性を誇らしく思う。ユダヤ人だけでなく、ロマ、同性愛者、ジプシー、社会主義者も収容されていたとのこと。恥ずかしながら、今回読んで初めて気がついた。そして、この本の中で、ユダヤ人という記載は極めて少ない。ナチスの表現も出てこない。それがあの時代だから、あの地域だからという限局的なイメージを抱かずに読ませる。より自分事として読めたのではないかと思う。例えば、日本に置き換えて考えることを可能とする。人間の心理の話だから、国や国籍や人種はもはや関係ないと思う。ある状況下に陥れば、人間は被収容者側にも反対にもなれてしまう恐ろしさ。
戦争を起こしてはならないというのは、ただ殺してはいけないだけではない。ひとたび戦争となれば、こうした状況に人間は陥るということが、戦闘で死ぬことと同じくらい恐ろしいことだからこそ、戦争を起こしてはならない。人と人との間に亀裂を入れてはならないのだ。