2分冊になっている、弘中弁護士の「生涯弁護人」の2巻目。1巻目、2巻目ともにボリュームがあり、本書は460ページを超える。2冊で、1,000ページ近くなるが、とても面白く短期間で読むことが出来た。
1巻目も興味深い事件が取り上げられていたが、この2巻目も面白い事件が取り上げられている。安倍英医師の薬
...続きを読む害エイズ事件。野村沙知代事件。そして、カルロス・ゴーン事件。その他にも興味深い事件が多く取り上げられている。安倍医師の事件、カルロス・ゴーン氏の事件は、これまで新聞やテレビの報道などで知っていた内容、感じていた印象が大きく変わった。安倍医師、ゴーン氏に対しての検察起訴・逮捕は、全くの冤罪だという考えに変わった。弘中弁護士は、本書の中で、実際の事件での弁護団の弁護方針・戦略、更には、証拠等の具体的な内容についても触れており、本書に描かれているストーリーは信ぴょう性が高い(実際に安倍医師は無罪になっている)。また、ゴーン氏の逮捕・起訴・裁判の進行に関しては、「日本の司法制度は前近代的である」との批判が外国から多く寄せられていたことも、あらためて思い出したし、本書を読めば全くその通りだと思う。
ひとつひとつの事件に真摯に取り組む誠実さ。事件の核心を理解し、それを弁護方針・戦略に生かす弁護士としての腕の良さ。実際の弁護の場面での労力のかけ方や実務的な能力など、実際に事件に巻き込まれて弁護士が必要になった場合には、是非とも弘中弁護士にお願いしたいと感じた。
本書のあとがきに、ご本人が書いている自分に関しての描写は下記の通り。1,000ページ近い本の中で読者が感じるであろうイメージと全く異なるが、こういったつもりで「生涯弁護人」を務めておられたのであろう。
【引用】
私は、そんな考え方なので、とりたてての主義主張もなく、誇るべき専門領域も著書もなく、地位名誉にも縁遠く、財をなすこともなかったが、半世紀の間、そのときどきの事件に首を突っ込んで、私なりに好奇心を満足させてきた。そのうえ、このような形で、それらをひとまとめにできて、一人悦に入っている次第である。
【引用おわり】
とても格好良い。