作品一覧

  • 親和力

    親和力

    小説・文芸

    4.0
    1巻1,980円 (税込)
    富裕な男爵エードゥアルト、エードゥアルトの友人の大尉、エードゥアルトの妻シャルロッテ、シャルロッテの姪のオッティーリエ、この4人の男女の織りなす恋愛図式。それは人倫を越えた、物質が化学反応を示して互いに牽きあう親和力に等しい。夫婦や家族の制度を破り出て人を愛するのも自然の力である。しかし、人間は自覚的な強い意志をもってそれに対抗しようとする。
  • ファウスト(上)

    ファウスト

    小説・文芸

    4.3
    1~2巻1,540~1,870円 (税込)
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 (ファウスト)俺の喜びはただこの大地から生まれこの世の太陽だけが俺の悩みを照らすのだ。(メフィスト)それならためらうことはない。さあ契約だ。……地上にある限りの日々……人間がまだ見ぬものを見るのです。神ならぬ人間の身で世界のすべてを究めたい欲求に憑かれたファウストは、悪魔メフィスト―フェレスと契約を結ぶ。文豪ゲーテ畢生の対策が柴田翔の躍動する新訳で甦る。
  • 曠野から―アフリカで考える―

    曠野から―アフリカで考える―

    ビジネス・実用

    -
    1巻1,430円 (税込)
    西アフリカ長期滞在中に出会った、サヴァンナに暮らす人々やとりまく環境を、精緻な描写と豊かな表現で綴る。無文字社会でのフィールドワークを通して人間存在の根源に迫った、人類学の碩学の代表的エッセイ集を復刊!
  • 若きヴェルテルの悩み

    若きヴェルテルの悩み

    小説・文芸

    -
    1巻726円 (税込)
    「彼女はぼくにとって神聖だ。すべての欲望が彼女の前にあっては口をつぐむ。」至福の日々をもたらした恋は、やがてヴェルテルに苦悩を、悲劇の最期を運命づける。激しい感情のうねり。旧社会への反発。ゲーテ自身の絶望的な恋愛体験を題材にしたこの作品は、それまでの小説の常識を覆し、激動期にあった当時の社会に大きな衝撃を与えた。時代と国をこえ、永遠に読みつがれる青春小説の古典。
  • P+D BOOKS われら戦友たち

    P+D BOOKS われら戦友たち

    小説・文芸

    -
    1巻715円 (税込)
    名著「されどわれらが日々」に続く青春小説。 1964年の第51回芥川賞受賞作で、当時、一大センセーションを巻き起こした『されど われらが日々――』。 その続編ともいえる本作では、その時代の新左翼運動にかかわった血気盛んな青年男女の機微を、ダンスパーティーの現金紛失事件とからめてミステリー仕立てで描いている。 登場人物がそれぞれの視点で世界を見つめ、それが一つに収斂されることなく多様性に開かれたまま放置されている点は、『されど われらが日々――』とは対称的な位置づけにある作品といえる。
  • されど われらが日々──

    されど われらが日々──

    小説・文芸

    3.4
    1巻488円 (税込)
    私はその頃、アルバイトの帰りなど、よく古本屋に寄った。そして、漠然と目についた本を手にとって時間を過ごした。ある時は背表紙だけを眺めながら、三十分、一時間と立ち尽した。そういう時、私は題名を読むよりは、むしろ、変色した紙や色あせた文字、手ずれやしみ、あるいはその本の持つ陰影といったもの、を見ていたのだった。(本文より)憂鬱ななかにも若々しい1960年代の大学の青春を描いた、この時代を象徴する歴史的青春小説。第51回芥川賞受賞作。
  • 鳥の影

    鳥の影

    小説・文芸

    4.0
    1巻440円 (税込)
    平穏な日常生活にふとよぎる狂気の影……。大企業の課長代理、テレビ・ディレクター、大学教師など、失われた青春の癒しがたい傷を抱きつつ、現代の第一線で活動する知識人たちが、あることをきっかけとして突如、情念の押えがたい噴出に襲われる。狂気の世界へとつき進んでいく彼等のありさまを通して、捉えどころのない現代の生に、鮮明な光をあてようとする意欲的連作小説集。
  • 贈る言葉

    贈る言葉

    小説・文芸

    4.3
    1巻440円 (税込)
    さまざまな夢と未来への志向をいだきながら学窓を飛び立ったはずなのに、ただ倦怠と惰性をしか見いだせなくなっている十年後の今日の、限りない挫折感を吐露した「十年の後」、“愛の観念”に固執するあまり、ついに結ばれることなく訣別してしまった、過去の恋人に語りかける抒情的作品「贈る言葉」。戦後世代の青春の苦悩を真摯に浮彫りにした、芥川賞受賞作家の中編二編。
  • 燕のいる風景

    燕のいる風景

    小説・文芸

    -
    1巻330円 (税込)
    光が逝き、影は動く。愛が滅ぶとき死者は扉を叩く……。戦中・戦後、私たちは絶え間なく死に、絶え間なく生きた。そして現在――この平穏で欺瞞的な日々がある。だが、そこには、生きられなかった過去が、層をなして張りついている。男女の別れの場に、都会の賑わいに、失われた時と空間を招き寄せ、現実と非現実を二重写しにしながら、未生の現在を照らし出す、柴田翔の新境地。
  • ノンちゃんの冒険

    ノンちゃんの冒険

    小説・文芸

    5.0
    1巻330円 (税込)
    上京して女子短大英文科に籍を置くこと一年余、はたちにもならないノンちゃんに、子供ができた。父親たる哲学君は、“世界が暮れ落ちる今、ぼくらは旅立つのだ”と呟やいて家を出たまま、行方が知れない。生むべきか、生まざるべきか……? 終末観ただようこのアスファルト・ジャングルで、生き難い世を生き続けるすべての人々に、スリリングで心暖まる、都会のメルヘンを贈る。
  • 立ち盡す明日

    立ち盡す明日

    小説・文芸

    4.0
    1巻330円 (税込)
    一流銀行の調査部員・佐室孝策の家に、妻・聡子の従妹・由希子が同居することになり、ふとした出来事から、由希子は孝策に愛を感じ始める。それは、稚い愛ではあったが、十分に、家庭崩壊の危機をはらむものであった――。知識人の胸の奥に巣くう虚無と孤独の心と、それらゆえの愛の挫折とを、明晰かつ抒情的な文体で描きあげた、『されどわれらが日々――』に続く長編第二作。

ユーザーレビュー

  • 贈る言葉

    Posted by ブクログ

    団塊世代の叔父が「学生時代、柴田翔の『贈る言葉』に出てくるような女性と付き合って苦労したよ」と言った。叔父は、友人に「オマエの彼女にそっくりな女子学生が描かれているぞ」と教えられて『贈る言葉』を読んだという。

    『贈る言葉』のページを開くと、とても暗い恋愛が描かれている。
    どうしてこんなに暗いのだろうか?ボンクラ頭を使って、あれこれ推測してみる。
    女性のことはよくわからないが、男性の恋愛感情=性愛感情である。そして、性愛感情の源は性欲である。問題点は、普通、男性の性欲が不特定多数の女性に向かうことである。男性の浮気心は、女性を悩ませている。
    主人公「ぼく」は、友人「I」の読書会で前方に座っている女の子を見てムラムラと劣情を催したり、「君」の承諾を得ないで下着に手をかけて拒否されて恥をかいたりするから、「ぼく」は普通の男性かと思ったら、その後、「ぼく」は二人が納得し合ったこと以外は決して何事もしないと固く決心する。さらに、「ぼく」は初体験の相手の女性は「君」しかいないと頑なに決め込み、お茶の水女子大学卒の「R」の誘惑を受け流す。ただでさえそれほど易しくない性欲の処理の機会を、敢えて「ぼく」は潰すとは、どうしたのか?
    頭が良い「ぼく」は、私にはよくわからない理屈を言う。「ぼく」が恋愛感情=性愛感情=性欲を素直に認めずに、自分をごまかすように理屈をこねているから、自ずと「君」へのアプローチが歪になり、「ぼく」に応える「君」も変に理屈っぽくなる。それが、「ぼく」と「君」の恋愛を暗くしていると思う。
    始めは「君」が冷たい人に思えたが、実はそうではなく、「ぼく」の煮え切らない態度が、次第に「君」を諦めの境地に追い込んでいくように思う。「君」は「ぼく」を待っていたように思える。

    恋愛は「岸辺のない海」を漂うようなもの、「海図のない航海」をするようなものである。わけを知っているつもりでも、実際の恋愛において途方に暮れる。「ぼく」もそうだろうが、青春時代に恋愛で苦悩して精神の幅と深みを増すこともあるようだから、「恋愛」は捨てたものではない。

    ここから、「ぼく」と「君」について、もう少し細かく見ます。バカな話をくり返します。

    世間ではよくあることだが、「ぼく」は「君」の承諾を得ないで「君」の下着に手をかけて拒まれてしまい、恥かしいから猛烈に反省する。

    <ただ、ぼくは、一度君から拒否されたことを、二度くりかえそうとはしなかった。自尊心のためではない。ぼくは、二人が納得し合ったこと以外は、何事も、決してするまいと強く決心していたのだ。ぼくは、あの頃は、どうして、あんなにまで自分の決心に忠実であることが、可能だったのだろうか。>

    「自尊心のためではない」と言うが、「ぼく」は自尊心が高いから、恥をかいたことに懲りて「一度君から拒否されたことを、二度くりかえそうとはしない」「二人が納得し合ったこと以外は、何事も、決してするまい」と性的禁忌を強める。そして恋愛(性欲)感情は、「障碍や禁忌がかえって恋愛(性愛)感情の昂揚をもたらす」から、「ぼく」の「恋愛(性愛)感情」は昂進する。やがて「ぼく」は、性的禁忌の強化と恋愛(性愛)感情の昂揚との板ばさみになって心身共に消耗していく。
    それから、「どうして、あんなにまで自分の決心に忠実であることが、可能だったのだろうか」と言うが、それは「ぼく」と「君」が同年齢である(未確認)ことによる「ライバル意識」、「意地の張り合い」の影響もあるだろう。これらは、同年齢のペアの恋愛がうまく行かない場合の大きな原因になる。

    そのような状況においても、「ぼく」は「畜生!」「うおっ、うおっ!」「うー、もやもやする。もう我慢ができん」と即物的に性欲を露わにする男子東大生たちを軽蔑する。そして、お茶の水女子大学を卒業した「R」の誘惑を断って、「R」に恥をかかせる。
    「ぼく」が「あんなにまで自分の決心(性的禁忌の強化)に忠実であること」、つまり「君」の承諾を得て下着に手をかけようと努めるのは、スジが通っているようだが、滑稽であり、ウソのように見える。
    「ぼく」が「一度君から拒否されたことを、二度くりかえそうとはしなかった」のは、同年齢の「ライバル意識」「意地の張り合い」だけでなく、「性的禁忌」の強化と「恋愛(性愛)感情」の昂揚の板ばさみで疲弊している「ぼく」が、これ以上自分にダメージを与えたくないという防衛意識もあるのではないか?さらに、「君」に拒否されても「君」の下着を剥ぎ取るくらいの熱情と度胸が「ぼく」には不足しているのだろうか?

    一方、「君」の承諾を得て下着に手をかけようと苦慮を重ねる「ぼく」に向かって、「君」は「あなたは男だからわからない。女は男の二倍も四倍も勉強しなければならない。そうでないと、世間は女を認めてくれない」と異次元の言葉で応じる。「ぼく」は、建前は、「自立しようとする女性、男性と対等に生きようとする女性」に理解を示すが、本音は、はぐらかされてシラケた気持になるだろう。
    こうして、二人に残るのは惰性のような性欲だけ。「ぼくらには、もう、行くところも、することもな」くなり、二人は納得し合って一軒の旅館に入る。

    <君はあの時、何も言わず棒のように寝て、身体をぼくにまかし、・・・君の顔にあったのは、不安とか、怖れとかの人間的な感情ではなく、ただ投げ遣りになったものの頑さだけだった。そして、ぼくも、・・・自分の初めての性的体験はこの女とでなければならないという頑な決心に追い立てられて、君に向かって行った。>

    私は、「君」の女心がよくわからない。投げやり気味だが、「君」が「ぼく」に身を任せるのは、まだ「君」が「ぼく」を好いているからだろうが、それだけでなく、そこは理性と知恵を兼ね備えた「君」ゆえ、「未経験」という重荷を早く降ろしたい、それなら慣れ親しんでいる「ぼく」が相手なら初体験の恐怖は少ない、という心算があるのではないか?
    「ぼく」についても、よくわからない。後で「君」が「あっ、今になってから、こんなに……」と反応するほど、旅館で「ぼく」は直ぐに果てずに頑張ったわけだが、普通、それは初体験の男性にとって難しいのではないか?「自分の初めての性的体験はこの女とでなければならない」と決めている「ぼく」とは別人のようだ。

    ともかく、「行くところも、することもな」くなってもなお、惰性的に「君」を旅館に連れ込み、マグロのように転がっている「君」に行為を続ける「ぼく」を「君」は冷笑している、と「ぼく」は後で感じる。
    また、「君」が「何も言わず棒のように寝て」いたのは、「君」は「自立しようとする女性、男性と対等に生きようとする女性」だから男性に心身をコントロールされたくない気持ち、同年齢の「ライバル意識」「意地の張り合い」かもしれない。

    事ここに至って、二人の関係は終りに近づく。

    「君」の立場になって見ると、「君」はわかっているだろうが、女性は受け身である。「君」は「ぼく」を待っていたのだろう。責任は、煮え切らない態度の「ぼく」にあるだろう。
    しかし、わけ知り顔の「I」が忠告するように、「ぼく」が「君」を普通の女の子として優しく遇してやればうまく行っただろうか?それは「君」には通用しないだろう。
    「ぼく」が「君」を普通の女の子として優しく遇したら、自意識過剰の「君」は侮辱されたと感じ、「自立しようとする女性、男性と対等に生きようとする女性」の侮辱と怒るだろう。 同年齢の「ライバル意識」、「意地の張り合い」も刺激するだろう。結局、「君」に相応しい男性は、「君」の自意識過剰を刺激しないように「君」の本来の女らしさを引き出してくれる、経験豊富な中年男性だろうか?

    話がわからなくなったところで、お終いにします。

    **********

    【付録】

    恋愛(性愛)感情について

    小浜逸郎氏は『なぜ人を殺してはいけないのか 新しい倫理学のために』の「第4章 人を愛するとはどういうことか」で次のように述べる。

    <なぜ人間は、恋愛的な情緒にかくも揺さぶられるのか。ショーペンハウアーは、この事情について、次のように考えた。恋愛が人々の心を撹乱するのは、それが種の存続というきわめてシリアスな関心にかかわることだからで、当事者である個体は性の相手の選択を自分の快楽の満足のためと思っているが、それはじつは個体の意識的な理解を超えた自然の意志によって植えつけられた本能に基づく妄想なのだ。彼は、あらゆる恋愛はどんなに霊妙さを装っていても、性本能の特殊化され、個別化された姿にすぎないとした上で、しかしそれはほとんどすべての人間の努力の究極の目標であるとして、性愛がいかに現実の世界で重要な役割を演じているかについて、まことに生き生きと書いている。>

    <人間自身は自覚していないが、性愛はやはり「本能」の一種であって、そこには個体の意志を超えた自然の意志が強く働いている。ただし、人間の場合は個体しての性への関心があまりに強いために、この自然の意志は、「種族の保存を目的として自分は恋愛する」というような意識としては現れず、「美しい人との同一化のもたらす幸福感情」という純粋に個体的な「妄想」の形で現れるのだ、とショーペンハウアーは言い切る。たしかに、性愛が、個体の意識や理性の統御を超えた力として働く理由は、これによってうまく説明されている。
    恋愛の情動や欲望の自然の源は、たしかに生殖による種族の維持の本能というところにあるに違いないが、人が実際に生殖の意志とはほとんど無縁に見える恋愛感情にかくも胸を焦がすというそのこと、またそれによって、ショーペンハウアーが指摘する通りの狂気じみた人生の混乱が巻き起されるというそのこと自体は、こうした外側からの根拠づけによってどう宥めようもない、人間に特有な実存的な有り様なのである。>

    ショーペンハウアーによれば、恋愛(性愛)感情における「胸を焦がす」「狂気じみた人生の混乱が巻き起される」という現象は、「外側からの根拠づけ」つまり理屈によってどうにかなるものでもない、「人間に特有な実存的な有り様」である。恋愛(性愛)感情は、「性本能」「生殖による種族の維持の本能」に基づくが、この自然の意志は、「種族の保存を目的として自分は恋愛する」というような意識としては現れず、「美しい人との同一化のもたらす幸福感情」という純粋に個体的な「妄想」の形で現れる、とショーペンハウアーは考える。
    恋愛(性愛)感情が「美しい人との同一化のもたらす幸福感情」という「妄想」の形で現れる、という指摘は面白い。主人公「ぼく」が初体験の相手の女性は「君」しかいないと頑なに決め込んでいることは「妄想」になる。

    **********

    0
    2026年09月27日
  • 親和力

    mac

    ネタバレ 購入済み

    愛情と情熱

    一部ご紹介します。
    ・男の本来の資質は、行為し、働きかけることにある。女は、もっと生活全体の中にあるつながりに目を向ける。
    ・親しく結びつけられた二人の間に少しでも均衡の狂いがあれば、そもそも第三者なるものはほとんど役に立たない。
    ・シャルロッテ「私たちの行く手に待っていることは、もうかなりはっきりしていますわ。あなたはオッティリーエを愛していらっしゃる。あなたはオッティリーエなしでは居られなくなっていらっしゃる。愛情と情熱は、あの子の側からも芽生え育ってきています。刻一刻、目の前ではっきりと起きている事実を言葉にして言ってしまって何故悪いのでしょう。この先どうなるのか、自分たちの心に聞いてみるだけの用意があっては、いけないのでしょうか。私たちを二つに裂き、私からはその夫を、子供たちからはその父親を奪っておいて、それでオッティリーエは幸せになれるのでしょうか」
    ・他者を記念しておきたいという考えは、大抵ただ自己本位のたわむれに過ぎない。それに対し、生きている人たちとの関係をいつもいきいきとした積極的なものにしておこうとすることこそが、神聖で真剣な仕事ではないだろうか。
    ・ある種の欠点なしには、個々人は存在できない。もし古い友人が、ある種の癖を改めたとしたら、私たちは寂しく思うだろう。
    ・愛なしの生活、愛する人を身近に持たぬ生活は、バラバラの挿話を並べただけのつまらぬ引き出しに過ぎない。この引き出し、あの引き出しを、引っ張り出したり押し込んだり、そしてまた急いで次の把手に手をかける。たとえよいこと、意味のあることが見つかっても、皆お互いにほとんどつながりがない。至る所で最初から始め直さねばならず、至る所で中断したくなる。
    ・動かぬ大地の上でも難波することはある。それからいち早く回復して、自己を立て直すことが、立派な賞賛すべきことなのだ。人生においては、最終的な得失が問題なのだから。
    ・現実に満たされることのない欲求は、全て私たちを信仰へと強いるものだ。

    0
    2022年09月30日
  • ファウスト(下)

    mac

    ネタバレ 購入済み

    情熱の果てに

    一部ご紹介します。
    ・運命の女神たち「踊り愉楽に身を任せ、陶酔に我を忘れるその時は、この糸にも限りがあることを思いだし、用心するこそ大事です。切れることもあるのです。」「どうにも無駄な糸を引き出し、それに長々光、大気を恵む一方、未来に輝く希望の糸をぷっつり切って墓の穴へと繋ぐのです。」「糸が伸びてくる。糸が車に巻き付いてくる。どの筋も廻る車に合わせねばならぬ。私の心がお留守になったら世界はいったいどうなるのだろう。」
    ・メフィスト「先人がまだ考えていないほど馬鹿げたこと、賢明なことが、いったい誰に思いつけるものかね?」
    ・ネレウス「助言が人間に役立ったことがあるかね?賢明な言葉も、聞く気のない耳の中では石になる。今まであれほど繰り返し惨憺たる結果が大本の間違いを指弾してきたのに、人間は相も変わらず自分勝手な意地を張っている。」
    ・プロテウス「考え込むばかりでは駄目だよ。まず広い海に出て、そこから始めるのだ!そこでは、みなが小さなところから踏み出して、ちっぽけなものでも喜んで、わが身に呑み込み、次第次第に育っていって、やがて大きな仕事のできる自分になる。」
    ・ファウスト「俺は世界を駆け抜けた。快楽だったら、むんずと掴み、つまらぬものは突っ放し、逃げたものは勝手にさせた。熱望、成就、更にまた、望みを重ね、力でもって、わが人生を嵐と生きた。まずは勢いと力にまかせ、いまでは分別、落ち着きを忘れない。地上のことは、もう充分に知り尽くし、天上は所詮、われらが視線の届く場所ではない。」
    ・ファウスト「日々、自由と生活を新たに獲得するべく戦う者のみが自由と生活に値する。」
    ・ファウスト「留まれ!お前はあまりに美しい」
    ・天使たち「愛の世界の高貴な一員が、悪から救われました。誰であれ、求めつつ努める人なら、われらは救い出すことができます。そして、この人には更に、上方からの愛さえも加わって天上の軍勢が、心からの歓びをもって出迎えるのです。」
    神秘の合唱「なべて過ぎ行くものは、比喩に過ぎず。地上にては至らざりしもの。ここにまったきものとして現れ、およそ言葉に絶したること、ここに成就す。永遠なるものにして、女性的なるもの、われらを彼方へと導き行く。」

    0
    2022年09月30日
  • ファウスト(上)

    mac

    ネタバレ 購入済み

    欲望の果てに

    一部ご紹介します。
    ・神「求め続けている限り、人間は踏み迷うものだ。」
    ・ファウスト「胸に感じるものがなければ、人の心を得ることはできぬ。本当に胸の底から涌き出たものでなければ、胸から胸へと伝えることはできない。」
    ・ファウスト「祖先から遺されたものは、自らの手で獲得し直してこそお前のものとなる。」
    ・ファウスト「俺に欠けているものが、こんなところで見つかるとでもいうのか?この上幾千もの本を読み散らせというのか?いつの世もどこの国でも人間はわれとわが身を苦しめてきたことを知り、時としては幸福者もいたことを知るためだけに」
    ・ファウスト「俺が仮にも将来ある瞬間に向い、留まれ!お前はあまりに美しい!と言ったなら、もう俺はお前のものだ。」
    ・メフィスト「あの娘を破滅させたのはどなたでしたっけ?私かな?あなたかな?」
    ・メフィスト「女は裁かれた!」
    声(上より)「救われた!」

    0
    2022年09月30日
  • ファウスト(上)

    Posted by ブクログ

    人間という不可思議な生き物について、悪魔が世界を交えて物語っていく。
    なんて興味深い作品なんでしょう。

    人は、命を維持し学び生殖していく欲望の陰に、衰退堕落し死へ向かう願望を持つ。なぜこんな矛盾を抱えて生きるのか。

    メフィストはただ、動く世界と生きる人間を物語るだけであって、不思議なのは生命それ自体なのではないだろうか。

    0
    2013年03月12日

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