努力論
角川ソフィア文庫 G117 1
著:幸田 露伴
出版社:KADOKAWA
幸田露伴 1867-1947 幕末から明治、大正、そして戦前の昭和を生き抜き、終戦の2年後の亡くなっている
名前は聞いたことがあるも、どんな作品を書いた人だっけと思ってしまうほど、遠い人でした。
難しい熟語がならびますが、注釈があり、文体も口語にちかく常用漢字になっていて、開いた時ちょっと安心しました。
努力論、意識して努力をしてはいけない。努力とも思わないで、努力をすると努力した以上のことを成すことができるが、本旨です。
努力、分福、そして学問を修めるに4つの標的(原則)が語られています。
気になったのは、次です。
・努力して努力する。それは真のよいものではない。努力を忘れて努力する。それが、真のよいものである。
・好運は七度人を訪う
・福を惜しむということの重んずべきと同様に、福を分かつということもまた、はなはだ重んずべきことである
・分福とはどういうことであるかというに、自己の得るところの福を他人に分かち与うるをいうのである
・有福は羨むべからざるにあらず、しかも福を有するというは、放たれる矢の天い向かって上がる間の状態のごときものであって、力尽くる時は、下り落つるを免れざると均しく、福を致したるゆえんの力が尽きる時は、ただちに福を失うのである
・努力の堆積:努力とは厭な事をも忍んでなし、苦しい思いにも堪えて、しかして労に服し事に当たるという意味である
・努力より他に吾人の未来を善くするものなし
・修学の四標的 正、大、精、深
正とは中道であるとの意
大とは大望であり自らの心境を開拓し智を広くし、自己を大になさんという意
精とは物事を精緻に、そして行き届くようになせという意
深とは深きに努めなければ、いくら井戸をほっても水が得られないという意
・光には、静かな光と、動く光とがある
静かな光とは、密室の中の灯のような光である
動く光とは、風吹く野辺の焚火のような光である
・どうやったら、気が散るのを防げるか
なすべきをなし、なすべからざるをなさぬ
思うべきを思い、思うべからざるを思わぬ、を決行することである
ふたつもみっつもやることがあったら、一番大事なことを、先ず実施し、
終わらせてから次にかかるべきである
つまらないことなどはどうでもよいと、
つまらぬこともできないくせに威張ってはいけない
つまらないことでも、よく行い、そして謙遜しているのが、聖賢の態である
目次
初刊自序
運命と人力と
着手の処
自己の革新
惜福の説(幸福三説第一)
分福の説(幸福三説第二)
植福の説(幸福三説第三)
努力の堆積
修学の四標的(その一)
修学の四標的(その二)
凡庸の資質と卓絶せる事功
接吻宜従厚
四季と一心と(その一)
四季と一心と(その二)
疾病の説(その一)
疾病の説(その二)
静光動光(その一)
静光動光(その二)
静光動光(その三)
進潮退潮
説気 山下語
附録 立志に関する王陽明の教訓
注
解説 努力論について 山口謡司
ISBN:9784044004521
判型:文庫
ページ数:352ページ
定価:720円(本体)
2019年07月24日 初版発行
2023年10月15日 3版発行