≪2020年12月号≫月刊 書店員すず木

≪2020年12月号≫月刊 書店員すず木
この道10年のプロ書店員・すず木です!
前月に配信された新作マンガで実際に読んで面白かったものの中から<少年・青年マンガ><少女・女性マンガ>それぞれ1作品を勝手に「今月の書店員すず木賞」としてご紹介!

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今月の書店員すず木賞

少年・青年マンガ

      • ダーウィン事変(1)

        ダーウィン事変(1)

        テロ組織「動物解放同盟(ALA)」が生物科学研究所を襲撃した際、妊娠しているメスのチンパンジーが保護された。 彼女から生まれたのは、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーだった。 チャーリーは人間の両親のもとで15年育てられ、高校に入学することに。 そこでチャーリーは、頭脳明...

        「ヒューマンジー」チャーリー。彼は「人」なのか「人を超えた存在」なのか…。

        動物実験などに対し過激な手段をとるテロ組織「動物解放同盟(ALA)」がカリフォルニア州の生物科学研究所を襲撃。
        そこにいた動物を解放している中で見つけたのが、出産間近のチンパンジーでした。
        運び出されたチンパンジーは無事出産をするのですが、驚くべきことに生まれた嬰児は人間とチンパンジーの交雑種「ヒューマンジー」だったのです。
        ヒューマンジーはチャーリーと名付けられ、チンパンジー研究の権威スタイン博士夫婦に引き取られます。
        成長したチャーリーは服を着て二足歩行をし言葉を話し、見た目はチンパンジーっぽさがありますが人間と変わらない生活を送っています。
        高校に通うことになったチャーリーですが、学校では注目の的で…。

        読み始めた最初は、人間を超えた生命体が生まれ人間を脅かす存在になる…といったSFかと思いました。
        しかしこの物語はそんな簡単な構造ではありませんでした。

        それを最初に感じたシーンが、チャーリーが学校で仲良くなった陰キャの優等生ルーシーとの会話です。
        「ヒューマンジーなのってどんな感じ?」
        というルーシーからの質問に対し、チャーリーは
        「人間なのってどんな感じ?」
        と聞き返すのです。

        ルーシーは無意識にチャーリーを人間ではない異物と考えて質問をしてしまったのです。
        正に「潜在的の差別意識」を比喩したシーンだと思います

        また、チャーリーと両親がヴィーガン(動物への搾取と残酷さを排除しようとする考え)である事に対し、スクールメイトがヴィーガンの平等性を揶揄しました。
        その際、チャーリーが平等について考えを述べるのですが、人間の考える「平等」とは異なる「平等」でした。
        それは人間第一主義からするとゾっとする考えだったのです。

        このように、この物語は随所で「差別」と「平等」を考えさせられます。

        そんなある日、町で爆発テロが起きます。
        犯人はチャーリーの産みの親のチンパンジーを解放したALAでした。
        彼らは人間だけを特別視せず、すべての動物の平等を目指し、反する人間に鉄槌をくだすことを知らしめるため、更に過激な手段を選んだのです。
        そんなALAは彼らの戦いにチャーリーを巻き込むことを画策します。

        「人間だけを特別にする理由はあるの?」と問うチャーリーの平等はALAの目指す平等と近しいような気がします。
        しかし、今まで両親としか接してきていなかったチャーリーが色々な人と出会い、多くの人間を観察することでどう変化していくのか…。

        最初はSFかと思いきや、中盤はヒューマンドラマ、後半に至ってはサスペンス要素があり、1巻だけでも充実感が凄いです!!
        序盤でこんなに面白くて、続きはどうなってしまうのか…。

        チャーリーが生まれた意味とは?
        ALAの戦争に巻き込まれてしまうのか?
        気になることがいっぱいです!

少女・女性マンガ

      • 君ノ声 1

        君ノ声 1

        完結

        時は大正。人の心の声が聞こえる京極一成は、その力を活かして商社を経営する敏腕社長だ。 事業は順調だがその力のせいで人を信じることができず、彼はかなりひねくれた性格をしていた。 一成は資産と人脈を目当てに名家である諏訪部家の令嬢に縁談を申し込むが、縁談相手の諏訪部ななからは心の声が聞こえないうえ...

        不器用で幸せなふたりの結婚生活に、心がふわっと温かくなります。

        時は大正。
        他人の心の声が聞こえる京極一成は、その能力を活かして商社を経営し敏腕社長と言われています。
        しかしその能力のせいで人の裏表を見せつけられること も多く、人を信じることができなくなっていました。

        一成は、資産と人脈目当てに大地主の諏訪部家と縁談を結ぼうとするのですが、相手の令嬢は声を出して話すことができませんでした。
        しかし一成は、心の声だけ聞いていれば良いのでむしろ楽なのでは!?と考えて縁談を進めようとするのですが、実際に会ったななからは何の音も聞こえてこなかったのです。
        戸惑う一成は色々な手段でななの心の声を聞こうとしますが、どうしても彼女の心の声は聞こえません。
        心の声が聞こえないと、嘘にも裏切りにも気づけない。そうなると夫婦生活を送るのは難しいと、一旦は婚約破棄をしようと思うのですが、諏訪部家でななが虐げられている姿を目撃し、思わず助け出してしまうのでした。

        しかし、ななは話すどころか文字を書くこともできないことが発覚します。
        唯一自分の名前は書けたのですが、それは「諏訪部 名無」というあまりにも衝撃的なものでした。
        ショックを受けた一成は、
        「粗末に扱われることを許すな 不幸に慣れるな 負けるな」
        と声をかけます。
        そして、「名無」ではなく「七名」という新しい名前を付けてあげたのです。

        勢いではじまった二人の生活ですが、実は七名にも秘密があり…。

        ある意味こじらせ男子の一成ですが、性根は優しいのだな…と思える部分が随所に感じられ、その不器用な優しさにきゅんが止まりません!
        七名の手を引いて連れ出すシーンなんて、まるで白馬の王子様のようですが、照れて赤くなっているのが可愛くてたまりません…!!
        声を出して会話することができず、文字での意思疎通もできず、心の声も聞こえない。八方塞がりでありながら、なんとか七名とコミュニケーションを取ろうとする一成。
        優しさ大洪水です。

        虐げられてきた女性がスパダリ要素のある男性と出会い幸せになる物語は、昨今人気のジャンルです。
        この物語も似た構造ではありますが、コミュニケーションを取れない二人がすれ違いながらもどう距離を詰めていくのかという部分にスポットが当たっており、一味違ったラブストーリーと言えます。

        今まで虐げられてきた七名ですが、一成と一緒にいることで少しでも心が癒えて幸せになって欲しい!!と願います。

こちらもオススメ!!

惜しくも今月の書店員すず木賞からは漏れたものの、オススメの作品をご紹介!!

書店員すず木

2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
年間に読むマンガの冊数は2000冊以上。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。

最近の書店員すず木:今年もついに12月です。みなさんどんな1年だったでしょうか。私はTVに出たり、記事に載ったりと新しいことにチャレンジさせていただいた1年でした。
NewsCrunchさんのサイトでインタビュー記事も公開されておりますので是非チェックしてみてください!
今年1年ありがとうございました!来年も面白いマンガをご紹介していきますので、お楽しみに!!
(リアルなことを言うと『チェンソーマン』最終回予告にショックを受けています)

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