中公新書作品一覧

  • カラー版 ドリアン 果物の王
    3.3
    クリームのような甘く濃厚な味といい馥郁たる香りといい、ドリアンこそ果物の王である。しかし、「鼻が曲がるほど臭い」「ビールと一緒に食べると死ぬ」等々、これほど誤解されている果物も珍しい。ドリアンの虜になった植物学者が、その魅力や種類を紹介。さらに、選び方から、羊羹やかき氷などドリアンの様々な食べ方、日本での育て方まで伝授するドリアン三昧の書。ドリアンついでに植物学のイロハも解説する。
  • 「国語」の近代史 帝国日本と国語学者たち
    3.5
    明治維新後、日本は近代的な統一国家を目指し、ことばの地域差・階層差を解消するため「国語」を創始する。「国語」は国民統合の名の下に方言を抑圧し、帝国日本の膨張とともに植民地・占領地にも普及が図られていく。この「国語」を創り、国家の国語政策に深く関与したのが、国語学者であった。仮名文字化、ローマ字化、伝統重視派、普及促進派などの論争を通し、国家とともに歩んだ「国語」と国語学者たちの戦前・戦後を追う。
  • 軍事革命(RMA) 〈情報〉が戦争を変える
    3.0
    ナポレオンによって大兵力の殲滅戦が開始されてから、戦争は火力による殺傷と破壊を意味するようになった。これ以降、工業化時代の戦争は、双方が国力全体を消耗しあう形態となったのである。情報技術や精密誘導技術が極限まで発達したため軍の運用や編成・組織が劇的に変化しつつある今、もはやクラウゼヴィッツの唱えた消耗戦は主流ではなくなりつつある。これからの戦争はどうなるのかをシミュレートする。
  • 問題解決のための「社会技術」 分野を超えた知の協働
    3.2
    問題を解決するには、まず問題を把握しなければならない。だが現代社会において、問題の全体像はきわめて見えにくい。狂牛病やSARSをめぐる騒動、原発トラブルや医療ミスの隠蔽疑惑などを見ても、特定分野の専門家だけでは十全に対処できないことが明らかである。本書は、複雑化する社会問題を解決し、社会を円滑に運営する「社会技術」の概念を提唱。学問分野の枠を超えた、新たな取り組みを紹介する。
  • 地域再生の経済学 豊かさを問い直す
    3.8
    地方自治体は膨大な財政赤字を抱え、地方の都市は均一化して特色を失い、公共事業以外に雇用がない……。地域社会は生活の場としても労働の場としても魅力を失い荒廃している。本書ではその再生に成功したヨーロッパの事例を紹介しながら、中心的な産業や重視する公共サービスなどがそれぞれ異なる、めざすべき将来像を提示する。そして日本型の生活重視スタイルを財政・政策面からどのように構築するかを提言する。
  • 虫たちの生き残り戦略
    3.0
    四億年の歴史をもつ昆虫類は、環境へ巧みに適応し、姿形や生活様式をさまざまに進化させてきた。一見不可解なふるまいにも、生き残りをかけた驚くべき知恵が隠されている。殺虫剤を強壮薬にするゴミムシダマシ、光の輪をつくって卵を守るイリオモテボタル、植物の種を蒔くクロヤマアリ、大雪を予知するオオカマキリなど、最新の知見を交えながら虫たちの行動の謎に迫る。昆虫の世界への興味をかきたてる二四話。
  • カエル 水辺の隣人
    4.0
    「最近カエルの声を聞かないね」という声を耳にするようになって久しい。この、間の抜けて愛嬌のある身近な生きものについては、よく知っているようで知らないことが多い。そこでまず、カエルの属する両生類の祖先から話を始め、日本に生息するカエルのすべてを紹介し、さらに世界中の変わったカエルを取り上げる。また、薄い皮膚を持つ、か弱いカエルが環境変化の犠牲となりつつある現状への警鐘をならす。
  • 老後の生活破綻 身近に潜むリスクと解決策
    4.0
    認知症、病気、詐欺、事故、子どもの失業――老後の生活にはさまざまなリスクが潜んでいる。そして一度問題が生じると、周囲に気づかれないまま生活が破綻してしまうことも、現代の日本社会では少なくない。高齢者を助けるサービスはたくさんあるのに、なぜ十分に活用されないのか。苦しむ高齢者を一人でも減らすため、また、自分や家族がそうした事態に陥らないために、何が必要なのか。豊富な実例とともに考える。
  • 無印ニッポン 20世紀消費社会の終焉
    3.7
    T型フォードの発売からリーマン・ショックまで一〇〇年。自動車の世紀だった二〇世紀が終わり、消費文化は大きな曲がり角を迎えている。大流通グループ「セゾン」を牽引し、無印良品を生み出した堤と、地域の文化の衰退を憂慮する三浦が、消費の未来、日本の将来を語る。「これがいい」ではなく、「これでいい」という「無印」の思想は、企業主導ではない個人主体の生き方を勧めるものである。本当の消費者主権とは何か。
  • 日本文化論の系譜 『武士道』から『「甘え」の構造』まで
    4.0
    奈良・平安のいにしえから、日本人は自らの文化の特質について、さまざまな角度から論じてきた。それは、常に異国文化の影響下で自分たちの考え方やふるまい方を築いてきたことと密接な関係がある。本書は、明治以降、西欧文化が激しく流入する時期に焦点を絞り、一五人の思想家、学者、作家などによる代表的な日本文化論を比較文化的視点から読み解くことによって、近代日本人の自画像を検証する試みである。
  • 日本語のコツ ことばのセンスをみがく
    3.0
    文字、音声、語彙、文法といった基礎知識を習得しても、それだけで日本語がなめらかに操れるわけではない。ことばを扱う場でどうすればよいかという応用技術こそが大切である。本書は、あいまいさや誤解を防ぐために必要な知恵、上下関係が錯綜するなかでの敬語の用法、手紙に込めるちょっとした心遣い、作家たちが紡ぎだしてきた美しい表現など、生活をゆたかにするための、日本語ならではの技を伝える。
  • 市場主義のたそがれ 新自由主義の光と影
    4.0
    ベルリンの壁の崩壊後、世界を席巻した「市場主義」。だが、経済格差や環境破壊を引き起こすなど、欠陥を露呈している。本書では、市場主義の源流に位置するフリードマンの経済思想を、同時代の証言を交えて読み解き、その功罪を明らかにする。第二次大戦後、彼らが勢力を拡大した過程を辿る一方、アメリカの経済思想の多様さにも注意を促す。
  • 英語の質問箱 そこが知りたい100のQ&A
    3.7
    英語学習には、躓きの石がごろごろ。ちょっとした疑問に引っかかって、前に進めなくなることも少なくありません。英語を学ぶ老若男女から寄せられた疑問・質問の中から、英語をマスターする上で有用な事柄を一〇〇選び、明快な回答を付しました。疑問・質問は、「文法・語法」「語義・語源」「口語・俗語」「歴史・文化」「宗教・文化」に大別されるため、各項目にはこれらのカテゴリーも示しました。語学習得のコツも紹介。
  • ユダヤ・エリート アメリカへ渡った東方ユダヤ人
    3.3
    苦難の歴史を生き抜いてきたユダヤ民族には、スペインを中心に広がったセファルディと中東欧に暮らしたアシュケナージの二系統がある。本書は、蔑視や差別をかいくぐりながら、知識人・商人・弁護士・官僚などとして西欧社会の中枢で活躍したアシュケナージの群像を描き出すものである。ポグロムやホロコーストを逃れて米国に移住し、現代史に巨大な足跡を残したユダヤ人たちの出自や業績、交友関係を丹念に追う。
  • 英語達人塾 極めるための独習法指南
    3.9
    英語力は会話力にあらず。文法無視で、「ペラペラ」しゃべる癖がついてしまうと、そこで学習が頭打ちになる。何ごとも、基本をおろそかにした我流では伸びない。本書は、日本が誇る英語達人も実践し、効果が実証されている学習法を、実例を交えて紹介するものである。ハイレベルな英語力がなければ、英語での交渉や口頭発表、さらには通訳・翻訳など望むべくもない。達人レベルを志す方々よ、いざ、当塾の門を叩かれよ。
  • 物語 イランの歴史 誇り高きペルシアの系譜
    4.0
    日本人はイランに対してどのようなイメージをもっているだろうか。革命、戦争、日本に大挙してやってきた労働者……。しかし、それはイランの「非日常」的な一面に過ぎない。古代に広大な帝国を築き、正倉院へガラス器をもたらしたペルシアは、アラブのイスラーム勢力や欧米諸国の侵入や干渉を受けながらも独自の文化を守り抜いた。不安定な世界情勢のなか、現在も模索を続ける人々の真実の姿を伝える。
  • ドット・コム・ラヴァーズ ネットで出会うアメリカの女と男
    3.6
    「オンライン・デーティング」とは、インターネットのサイトを使ってデート相手を探すことである。年齢・職業・人種・地域を超え、今や、アメリカ主流文化の一部となっている。新しい出会いを探すには、ウェブが最も便利ということだろう。大手サイトに登録した著者は、ニューヨーク、そしてハワイで、さまざまなアメリカ男たちと「デート」する。出会い、つきあい、そして別れの中から、人間臭いアメリカが見えてくる。
  • チンパンジー ことばのない彼らが語ること
    4.5
    道具を使い、社会的駆け引きをすることから「賢い」と思われているチンパンジー。しかし、例えば動物園で飼育される場合とは異なり、野生では、賢さ以外のさまざまな姿も見られるようだ。コドモのけんかから小競り合いを始めるメス親もいれば、そんな母親を見て気が大きくなったのか、よせばいいのに、さらに攻撃をしかけるコドモもいる。とても他人事には見えない…。チンパンジーと同じ目の高さで綴られた野生の記録。
  • 長州奇兵隊 勝者のなかの敗者たち
    4.3
    戊辰戦争に勝利し、明治国家の中核となった長州藩。しかし、その栄光の歴史の陰には、好むと好まざるとにかかわらず戦い、斃れていった多くの犠牲者が存在する。高杉晋作が創設し、勝利の原動力となった奇兵隊も、維新後は解隊命令が下され、内戦で多くの命が失われていった。著者は遺された史料や伝承をたんねんにたどり、懸命に生きた人びとの姿に光をあてる。偉人伝や英雄譚ではない、本物の歴史がここにある。
  • 高血圧の医学 あなたの薬と自己管理
    -
    三十歳以上の三人に一人が高血圧である。高血圧を放置すると、突然、脳卒中や心筋梗塞など危険な合併症を引き起こすので「静かなる殺人者」とも呼ばれる。本書は、高血圧を予防し、合併症の発症を抑えるため、生活習慣改善のコツや、降圧薬の特徴・副作用を詳述する。また、降圧薬服用の注意や血圧測定など日常生活の気になる疑問にも答える。処方された薬を漫然と服用するのではなく、自らの体と薬を知るために必読の書。
  • 経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには
    4.0
    「お金がない人を助けるとき、どうやって助けるのですか?」小学5年生からの問いかけに、経済学者ならどう答えるだろうか。女性が背の高い男性を好む理由からオリンピックのメダル獲得数まで、身のまわりには運や努力、能力の違いによって生じるさまざまな格差や不平等がある。本書は、それらを本質的に解消する方法を考えることによって、経済学的に考えるとはどういうことかをわかりやすく紹介する。
  • 教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化
    3.8
    一九七〇年前後まで、教養主義はキャンパスの規範文化であった。それは、そのまま社会人になったあとまで、常識としてゆきわたっていた。人格形成や社会改良のための読書による教養主義は、なぜ学生たちを魅了したのだろうか。本書は、大正時代の旧制高校を発祥地として、その後の半世紀間、日本の大学に君臨した教養主義と教養主義者の輝ける実態と、その後の没落過程に光を当てる試みである。
  • 印象派の誕生 マネとモネ
    3.7
    華も艶もある色彩、柔らかなフォルム、具体的で親しみやすい画題。目にも心にも優しい印象派の作品だが、創作の根底にある「印象」とは何なのだろうか。ルネサンス以来の伝統に支配されてきた西洋の美意識は、マネやモネの登場によって、決定的な変化の時を迎える。本書では、印象派誕生に焦点をあて、その革新性に迫っていく。多彩な人物たちが交錯した一九世紀中葉パリの濃密な空気がここによみがえる。図像資料多数。
  • 仏教、本当の教え インド、中国、日本の理解と誤解
    3.6
    紀元前五世紀のインドで生まれた仏教。中国では布教に漢訳の経典が用いられたのに対し、日本は漢文のまま経典を輸入した。両国においてサンスクリットの原典は、ほとんど顧みられていない。中国は漢訳ならではの解釈を生み出し、日本では特権的知識階級である僧が、意図的に読み替えた例もある。ブッダの本来の教えをサンスクリット原典から読み解き、日中両国における仏教受容の思惑・計算・誤解を明らかにする。
  • 空間の謎・時間の謎 宇宙の始まりに迫る物理学と哲学
    4.2
    空間とは何か、時間とは何か。この最大級の謎の解明には物理学と哲学が取り組んできた。絶対空間と絶対時間を主張したニュートンと、それに対抗して「時空の関係説」を唱えたライプニッツから出発して、最新の宇宙論にいたる物理学の成果を哲学者の目から見ればどうなるか。宇宙の始まりに迫る量子宇宙論へといざない、物理学に隠されていた時空の哲学の潮流を解きほぐす。直観的な理解を助ける図表を多数収載。
  • ヴェルサイユ条約 マックス・ウェーバーとドイツの講和
    3.7
    第一次世界大戦は、アメリカの参戦とドイツ帝国の崩壊を経て休戦が成立し、パリ講和会議が開かれる。だが、「十四箇条」に基づく「公正な講和」を求めるドイツ、「国際連盟」による世界秩序の再編を目指すアメリカ大統領ウィルソン、そして英仏の連合国首脳の思惑には大きな隔たりがあった。それまでの講和のルールになかった「戦争責任」をドイツに求めるべきなのか。人類初の世界戦争の終結をめぐる息詰まる駆引を描く。
  • 物語 チェコの歴史 森と高原と古城の国
    3.8
    九世紀のモラヴィア王国の誕生以来、歴史に名を現わすチェコ。栄華を誇った中世のチェコ王国は、そののち、ハプスブルク家に引き継がれ、さらに豊かな文化を生み出した。二十世紀に至って、近代的な共和国として生まれ変わったのち、第二次世界大戦後の共産化によって沈滞の時代を迎えるが、ビロード革命で再出発した。ロマンティックな景観の背後に刻印された歴史を、各時代を象徴する人物のエピソードを核に叙述する。
  • ブラジルの流儀 なぜ「21世紀の主役」なのか
    4.3
    「21世紀の勝ち組」と言われるブラジル。サッカーW杯、リオ五輪のダブル開催も決まった。長い間、政治的・経済的に不安定で、社会矛盾も根深かったが、ルラという希代の指導者のもと、「風格ある大国」に生まれ変わろうとしている。資源と食料で不安を抱える日本にとって、その双方を豊富に持つこの国は、救世主に違いない。危機に強い国民性から、芸術的サッカーまで、ブラジルの驚きの「流儀」がいま明らかになる。
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義
    4.1
    批評理論についての書物は数多くあるが、読み方の実例をとおして、小説とは何かという問題に迫ったものは少ない。本書ではまず、「小説技法篇」で、小説はいかなるテクニックを使って書かれるのかを明示する。続いて「批評理論篇」では、有力な作品分析の方法論を平易に解説した。技法と理論の双方に通じることによって、作品理解はさらに深まるだろう。多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に議論を絞った。
  • ニューヨークを読む 作家たちと歩く歴史と文化
    4.0
    資本主義の首都ニューヨークには、最先端の現象が露出しつづけてきた。その素顔を捉えることは容易ではないが、この都市を舞台とする文学作品は格好の導き手となってくれるだろう。メルヴィル、ホイットマン、フィッツジェラルド、サリンジャー、オースター……。こうした作家たちは、この都市の魅力と魔力を鋭い感受性で捉え、鮮やかなことばで表現した。ダイナミズムをたたえ混沌としたニューヨークの過去と現在を歩き直す。
  • 日本の樹木 都市化社会の生態誌
    -
    身近な小空間の植栽から信仰の対象となる巨木まで、樹木は日本人の生活に深く関わってきた。花を愛で、実を味わい、根を薬用にし、幹は材に用い・・その利用は多岐にわたる。村おこし、町づくりの中心に樹木を据える例も増えてきた。宅地造成、ゴルフ場建設、リゾート開発で日本の植生が、景観が、大きく変貌しつつある今、樹木との新しい関係が求められている。代表的樹種八十余種の生態誌・文化誌を記述する。挿図七七点付載。
  • 西洋音楽史 「クラシック」の黄昏
    4.4
    一八世紀後半から二〇世紀前半にいたる西洋音楽史は、芸術音楽と娯楽音楽の分裂のプロセスであった。この時期の音楽が一般に「クラシック音楽」の歴史と呼ばれている。本書は、「クラシック」音楽の歴史と、その前史である中世、ルネサンス、バロックで何が用意されたのか、そして、「クラシック後」には何がどう変質したのかを大胆に位置づける試みである。音楽史という大河を一望の下に眺めわたす。
  • 西南戦争 西郷隆盛と日本最後の内戦
    4.0
    明治維新後、佐賀の乱、神風連の乱、萩の乱などに続く、不平士族による最後の反乱となった西南戦争。九州全土で八ヵ月間にわたり行われた近代日本最大の内戦である。それはまた誕生してまもない「日本軍」が経験した最初の本格的戦争でもあった。本書では、反乱軍の盟主である西郷隆盛の動向を柱に、熊本城篭城戦、田原坂の戦いをはじめ、九州各地での戦闘を丹念に追い、日本最後の内戦の実態と背景を明らかにする。
  • 小泉政権 「パトスの首相」は何を変えたのか
    3.7
    21世紀最初の4月、世論を背景に首相に就いた小泉純一郎。靖国参拝、北朝鮮訪問、郵政解散など、政権の5年5ヵ月は、受動的イメージだった日本の首相を、強いリーダーシップを発揮し得る存在に変えた。一方で、政権は「抵抗勢力」=派閥・族議員、官僚と対峙する上で、世論を頼みとし、人々の理性より情念に訴え続ける。新自由主義的政策を強く進めた内政、混迷を深めた外交を精緻に追い、政権の功罪と歴史的意義を記す。
  • ギリシア神話 神々と英雄に出会う
    4.1
    数多い英雄たちの複雑な関係、神々も介在する入り組んだ物語、重複や矛盾に満ちた展開…。アポロンやアテナなどの名前は身近であるものの、実は読みこなしにくいギリシア神話だが、古代人の世界観を探るという視点から見ていくと、意外に理解しやすい。本書は、古代ギリシアの詩や悲劇がどんな話をどのように語っているかを踏まえながら、西欧文明にきわめて深い影響を与えた伝承の数々を紹介する。
  • 北方領土問題 4でも0でも、2でもなく
    3.8
    「北方領土問題」は、日本とソ連の戦後処理をめぐる交渉のプロセスのなかで生まれ、一九五六年の日ソ交渉においても、これを解決することができず、平和条約の締結に至らなかった。以来五〇年、事態が進展しないなか、中国とロシアの間で、同じく第二次世界大戦に由来する国境問題に終止符が打たれた。本書は、この係争地を互いに「分け合う」という政治的妥協に至る道筋を検討し、日ロ間への具体的な応用を探るものである。
  • ハワイの歴史と文化 悲劇と誇りのモザイクの中で
    3.7
    ハワイ――世界中の観光客を魅了する太平洋の美しい島々。十八世紀以来、欧米、そしてアジア諸国から多くの移民が来島し、定着・活動してきた。しかし、異人種、異文化との接触が、ネイティヴ・ハワイアンに苛酷な歴史を強いてきたことも忘れてはならない。本書は、日本との交流に光をあてながら、楽園イメージの奥に横たわる、もう一つの現実を浮かび上がらせ、ハワイ文化の力強い流れを描き出すものである。
  • 経済学の哲学 19世紀経済思想とラスキン
    4.5
    経済と環境保護。分裂し、対立するかのような両者が折り合う思想は可能なのか。このきわめて現代的な問題は、すでに19世紀に提起されていた。産業革命が隆盛を誇るロンドンで、哲学者ラスキンが環境と弱者を犠牲にする経済学に怒りを感じ、新しい経済学の枠組みを構想したのだ。本書は、同時代の経済学者との格闘に光を当てながら、この先駆的な思想を辿る。ありうべき価値体系とは何か。よりよい社会への道を探る。
  • キリストの身体 血と肉と愛の傷
    4.1
    キリスト教にとって大切なのは、身体ではなく精神、肉体ではなく霊魂ではなかったか。しかし、キリストの身体をめぐるイメージこそが、この宗教の根幹にあるのだ。それは、西洋の人々の、宗教観、アイデンティティの形成、共同体や社会の意識、さらに美意識や愛と性をめぐる考え方さえも、根底で規定してきた。図像の創造・享受をめぐる感受性と思考法を鮮烈に読み解く、「キリスト教図像学三部作」完結篇。図版資料満載。
  • インドネシア 多民族国家という宿命
    4.1
    インドネシアでは、三〇〇の民族集団から構成される二億の国民が、四〇〇の母語を使用して生活している。一見平和な風景からは、穏健で寛容な秩序が保たれているように見えるが、多様な混沌を統御するために暴力と暴力がぶつかり合ってきたという厳しい現実もある。本書は、第二次大戦後の独立時に起因する問題が、六人の大統領の時代を経過しながら、どう変質して今に至っているかを、丁寧にリポートするものである。
  • 人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか
    4.0
    二〇〇五年から始まった日本の人口減少。一〇〇年後には半減と予測されている。北・西ヨーロッパに端を発し、いまや世界人口の半分を覆った少子化は、なぜ進むのか――。急激な人口減少が社会問題化するなか、急速に脚光を浴びる人口学だが、戦前の国策に与したと見られ、近年まで疎んじられてきた。本書は、人口学の入門書として、人口の基礎的な考え方、理論、研究の最前線、少子化のメカニズムなどを平易に解説する。
  • 処女懐胎 描かれた「奇跡」と「聖家族」
    4.4
    処女にしてキリストを宿したとされるマリア。処女懐胎はキリスト教の中心に横たわる奇跡であり、夥しい図像を生み出してきた。「無原罪」の「~がない」という否定形の図像化一つとってみても、西洋絵画に与えたインスピレーションは巨大である。また、「養父」ヨセフや、「マリアの母」アンナはどのように描かれてきたのか。キリスト教が培ってきた柔軟な発想と表象を、キリストの「家族」の運命の変転を辿りつつ描き出す。
  • 首相支配―日本政治の変貌
    4.3
    細川連立政権崩壊から一〇年以上が過ぎ、日本政治は再び自民党の長期政権の様相を呈している。しかしその内実は、かつての派閥による「支配」とは全く異なる。目の前にあるのは、一九九〇年代半ばから進んだ選挙制度改革、政治資金規正法強化、行政改革などによって強大な権力を手にした首相による「支配」なのだ。一九九四年以降の改革のプロセスを丹念に追い、浮かび上がった新しい日本の「政治体制」をここに提示する。
  • 物語 食の文化 美味い話、味な知識
    3.8
    長く人類はまずいものを繰り返し食べてきた。「美味しいものをお腹いっぱい食べたい」という欲求が強いのも無理はない。美味、珍味の探求は世界の人々の日常行為となっており、たべものへの関心は高まり続けている。本書は、食材、調理法、食事のしきたり、さらに各地各時代の食文化などを広く紹介するものである。味覚の満足、心躍る会食、そして健康増進のために、たべものについての正確な知識は欠かせない。図版多数。
  • 大学の誕生〈上〉 帝国大学の時代
    4.0
    1~2巻1,034~1,078円 (税込)
    日本の大学はどのような経過をたどって生まれたのだろうか。本書は、その黎明期のダイナミックな展開を二巻にわたって、つぶさに描くものである。上巻では、明治一〇年の「東京大学」の設立と一九年の帝国大学誕生の成立から説き起こす。その後、帝国大学が自己変革していくさまと、帝国大学に対するかのように生まれる官立・私立の専門学校の隆盛へと物語は進んでゆく。人と組織が織りなす、手に汗握るドラマ。
  • シュメル―人類最古の文明
    3.8
    五千年前のイラクの地で、当時すでに文字やはんこ、学校、法律などを創り出していた民族がいる。それが、今までほとんどその実像が明らかにされてこなかったシュメル民族である。本書は、シュメル文明の遺物を一つ一つ紹介しながら、その歴史や文化を丹念に解説するものである。人類最古の文明にして現代社会の礎を築いた彼らの知られざる素顔とは――?多様かつ膨大な記録から、シュメルの人々の息づかいを今に伝える。
  • カラー版 スイス-花の旅
    2.0
    旅人の心をとらえて離さない壮麗な山並み、そこかしこに咲きこぼれる色鮮やかな花々――。山の国スイスは、美しい花の国でもある。自然への配慮を尽くして敷かれた登山鉄道と5万キロに及ぶハイキング・コースは、美しい自然をすべての旅人にと願う、この国の人々からの贈り物なのだ。すがすがしいスイスの風があふれ出すフォト・ガイド・ブック。
  • カラー版 フランス・ロマネスクへの旅
    5.0
    十一~十二世紀にヨーロッパ各地で一斉に開花したロマネスク芸術。その神秘的な美は、千年を経た今も人々を魅了してやまない。本書ではフランスの八地方に残る二十四の教会を選び出し、その建築をとりまく歴史や、細部に秘められた物語をたどる。個性的な各教会の建築、壁画、柱頭彫刻など、それぞれに異なる見どころも紹介。鑑賞に役立つ用語解説を付す。
  • カラー版 スペイン・ロマネスクへの旅
    -
    イベリア半島では、レコンキスタの進展に伴い次々と教会や修道院が建てられた。中世最大の巡礼地サンティヤゴをめざす街道が作られたことも、ヨーロッパ各地の職人や様式の粋が流れ込むのを後押しした。西ゴート、アストゥリアス、モサラベといった魅力的なプレロマネスクの影響も受けながら、11~12世紀、半島独自のロマネスク芸術が花開いていく。複雑で陰影に富んだスペイン・ロマネスクの美を余すところなく紹介する。
  • 日本語の素顔
    3.0
    幕末から明治初年にかけて日本では、西欧の言語の吸収に熱心で素顔の日本語を恥じ、外国ふうの化粧をした日本語が生まれた。さらに敗戦によって日本的なすべてのものに対する否定的な態度が一般的になり、近年は、書く文章だけでなく話しことばもまた激しく変りつつある。幼児にことばを教える母親の役割の重要性を痛感する著者が外国語と比較して、日本語の素顔の美しさや味わいを数々の具体例によって見なおす。
  • 日本の行政 活動型官僚制の変貌
    3.3
    近代国家を担う立法・司法・行政三権のうちでも行政は政治の中枢に位置する。とりわけ日本においては、追いつき型近代化を遂行する過程で行政の果たしてきた役割は大きかった。しかし明治以来の国家目標が達成され、自民党単独政権が崩壊した今日、行政もまた変革を迫られている。即ち、各省間の競争エネルギーを駆り立てた最大動員システムはセクショナリズムの弊害を露呈しているのである。新しいシステムはいかにあるべきか。
  • 大君の使節 幕末日本人の西欧体験
    3.5
    「西洋世界の挑戦に対してこの国が発した返答」の鮮やかなモデル・ケースとして、幕末日本のエリートの西欧文明に対するさまざまの知的・心理的・感性的反応と外国側の彼らに対する反響を探り出し、一八六二年の遣欧使節団の行動を評価し直す。従来、外交史家にしか顧みられなかった使節一行の諸記録は、ここに初めて興味深い記録文学としての姿を現わす。新文明に接して急激に自己変革を迫られる幕末日本の鼓動を伝える、比較文学徒の労作。
  • 幕末維新と佐賀藩 日本西洋化の原点
    4.0
    明治維新の原動力となった「薩長土肥」の雄藩だが、肥前=佐賀藩の影は薄い。しかし西洋の先進技術を最も蓄積した佐賀藩は、英明な藩主・鍋島閑叟のもと鉄製大砲を製造。幕末期、技術力で幕府や他藩を圧倒し、閑叟は新政府のトップに躍り出る。また開明的な藩士が多数輩出し、江藤新平は教育・司法に「西洋丸写し」とまで称される大胆な制度を導入する。佐賀の乱以降、薩長政権下、活躍が軽視された同藩の真の価値を描く。
  • チンギス・カン “蒼き狼”の実像
    3.8
    一二〇六年、モンゴル高原の諸部族はチンギス・カンのもとに統一された。強力な騎馬軍団と豊富な鉄製武器を誇る「大モンゴル国」は、西夏や金、ホラズムなどの強国を攻略し、ユーラシアの東西にまたがる世界帝国へと成長した。だが、偉大な足跡を残したチンギス・カンの生涯は謎に満ちている。近年の発掘調査で得られた成果から何が見えてきたのか。モンゴルの大地を駆けめぐる考古学者が、「世界征服者」の実像に迫る。
  • 戦国時代の終焉 「北条の夢」と秀吉の天下統一
    3.5
    織田信長と友好関係を保ち、領地を拡大させてきた北条氏。しかし、本能寺の変によって、この状況は一変する。北条氏と佐竹・宇都宮氏など関東諸勢力との戦いは熾烈をきわめ、両陣営の背後では、羽柴秀吉、徳川家康が蠢き、激しい外交合戦が繰り広げられる。戦国時代末期、「関東統一」を夢見る北条氏とそれにあらがう戦国武将たちとの戦いを追いながら、次第に秀吉の圧力に抗しきれなくなっていく北条氏の挫折を描く。
  • 算数トレーニング 思考を鍛える50問
    4.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 希望に胸を膨らませて入社した田中君。しかし配属された営業課は、仕事や生活の話題すべてが算数の問題として出題されるのだった!道の長さ、折り紙を折った角度、焼酎の度数…田中君は無事に正しい答えを導き出すことができるのか?計算、図形、文章題を解いていくことで、知らず知らずのうちに「確かな根拠に基づいて、正しい推論をする」算数思考が身につきます。親子で一緒に、チャレンジしよう。
  • 三国志 演義から正史、そして史実へ
    4.1
    日本人をも魅了し続ける、三国志。しかし、『三国志演義』や、それを下敷きにした小説・ゲームの世界は「虚構」に満ちている。また、「正史」と呼ばれる歴史書の『三国志』も書き手の偏向がつきまとう。本書は、一般に親しまれている『演義』を入り口に、「正史」の記述を検討。そして、史実の世界へと誘う。暴君董卓の意外な美点、曹操が文学に託したもの、劉備と諸葛亮の葛藤-あなたの知らない三国志がここにある。
  • 中世の東海道をゆく 京から鎌倉へ、旅路の風景
    4.0
    弘安三年(一二八〇)十一月、ひとりの貴族が馬に乗り、わずかな随伴者とともに東海道を京から鎌倉へと向かっていた――。中世の旅路は潮の干満など自然条件に大きく左右され、また、木曾三川の流路や遠州平野に広がる湖沼など東海道沿道の景色も、現在とはかなり異なっていた。本書は鎌倉時代の紀行文を題材に、最新の発掘調査の成果などを取り入れ、中世の旅人の眼に映った風景やそこに住む人々の営みを具体的に再現するものである。
  • 贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ
    4.0
    贈与は人間の営む社会・文化で常に見られるものだが、とりわけ日本は先進諸国の中でも贈答儀礼をよく保存している社会として研究者から注目を集めてきた。その歴史は中世までさかのぼり、同時に、この時代の贈与慣行は世界的にも類を見ない極端に功利的な性質を帯びる。損得の釣り合いを重視し、一年中贈り物が飛び交う中世人の精神を探り、義理や虚礼、賄賂といった負のイメージを纏い続ける贈与の源泉を繙く。
  • 長州戦争 幕府瓦解への岐路
    3.5
    どんな戦争も後世へのメッセージを残している。長州戦争は徳川幕府の命取りとなった戦争である。勝利した長州藩は、後に『防長回天史』を編纂し、この戦争を明治維新への大きな一歩と位置づけた。しかし、幕府側はこの敗戦を総括するに至らず、敗戦の責任者すら明確ではない。幕府はなぜ戦争に踏み切り、どう戦って負けたのか。開戦前夜から敗戦処理までを克明に描き、長州戦争が現代に残したメッセージを読む。
  • 信長と消えた家臣たち 失脚・粛清・謀反
    3.4
    信長は天下統一の過程で多くの配下の者を粛清した。反逆が疑われる者は無論のこと、抜擢に応えられなかった者も容赦なく切り捨てた。なぜ信長は周囲の理解を超えた過酷な処分を行ったのか。一方、趨勢が明らかにもかかわらず、結果的に少なくない数の武将が反旗を翻したのはなぜなのか。着々と進む天下統一の裏で続いていた信長と家臣、そして恭順した大名たちとの駆け引き。その生々しい局面から、信長の戦略と素顔に迫る。
  • 物語 上野動物園の歴史 園長が語る動物たちの140年
    4.0
    明治五年、湯島の展覧場にオオサンショウウオなどが展示されて以来、140年の歴史を持つ上野動物園。明治期には、ニホンオオカミやトキが飼われ、徳川慶喜がナポレオン三世からもらったウマも暮らしていた。戦中には猛獣殺害という悲劇もあったが、いまでは飼育種数では世界有数の動物園に育ち、教育・環境保全などでも重要な役割を担っている。園長自身が激動の歴史を、代表的な動物たちのエピソードとともに案内する。
  • バルセロナ 地中海都市の歴史と文化
    3.8
    ガウディ、ピカソ、カザルスら多くの芸術家を育んだバルセロナ。地中海貿易で繁栄したこの都市は、一六世紀以降、マドリッドの中央政府から抑圧を受ける。だが一九世紀、産業が発展、セルダによる大胆な都市計画のもと独自の文化が開花し、カタルニアの中心地として独立を志向していく。本書は、スペイン国家の中で、王制、内戦、フランコ独裁を経ながら、芸術・文化・スポーツを育み、新しい「かたち」を模索する都市を描く。
  • 物語 タイの歴史 微笑みの国の真実
    3.9
    一三世紀以降、現在の領域に南下し、スコータイ、アユッタヤーといった王朝を経て、一八世紀に現王制が成立したタイ。西欧列強の進出のなか、東南アジアで唯一独立を守り、第二次世界大戦では日本と同盟を組みながらも、「敗戦国」として扱われず、世渡りの上手さを見せてきた。本書は、ベトナム、ビルマなどの周辺諸国、英、仏、日本などの大国に翻弄されながらも生き残った、タイ民族二〇〇〇年の軌跡を描くものである。
  • 黄金郷(エルドラド)伝説 スペインとイギリスの探険帝国主義
    4.0
    コロンブスの新世界到達を契機として、ヨーロッパ人は南米へと進出した。黄金郷という見果てぬ夢を追い、己の全財産、全人生をかけて、彼らは探険を決行。その黄金にかける情熱は、やがて南米北部におけるスペインとイギリスの覇権争いにつながっていく。緑の秘境として知られるギアナ高地。そこは黄金の争奪戦が繰り広げられ、探険を侵略の道具とする「探険帝国主義」の舞台だった。黄金と領土争奪の五百年のドラマを追う。
  • 皇族 天皇家の近現代史
    4.2
    古代より「天皇の血族」として存在した皇族。明治維新後、最も近親で天皇を支える階級として、軍人の義務と多くの特典を獲得し成立した。だが、自らの権威・特権を背景に、長老の皇族軍人や直宮は、天皇を脅かす存在でもあった。本書は、古代から現代の皇族を概観し、近代以降存在した十五宮家、皇族軍人たちの動向、新たな位置づけを求めた戦後の「皇室」を中心に、皇族の全貌を明らかにする。巻末に詳細な「近代皇族一覧」付。
  • カラー版イタリア・ロマネスクへの旅
    3.5
    華やかなルネサンスの舞台として語られることの多いイタリアは、豊饒なロマネスクの地でもある。白い大理石に包まれたピサやルッカ、黄金のモザイクが輝くムラーノ、ローマ帝国と中世のバシリカが重層するミラノなど、どの都市もロマネスク芸術と共に生き、その歴史を重ねてきた。イタリアの各地方に残る、二四の個性豊かなロマネスク教会を巡る。
  • 日本語が見えると英語も見える 新英語教育論
    4.0
    日本人にとって英語はなぜ苦手なのか。アメリカ人は「日本人は先ず世界観を変えなければならない」と言う。これを著者は、英語で書くとき話すとき、日本人が「やまとことば」で情動的、感覚的に未整理のままで切り取っていた対象世界を、論理的に整理した「中間日本語」で切り取る訓練が必要であると言いかえる。本書は日本人の英語苦手意識の原点に探針をおろして克服の方策を示し、日本の英語教育にコペルニクス的転換を迫る。
  • ぼちぼち結論
    4.0
    「理性」に振り回される現代世界を憂い、社会「常識」の怪しさを指摘し、虫捕りの時間がないことをぼやく…。養老孟司の時評シリーズもついに完結篇。ホリエモン・村上ファンド騒動、NHK受信料、データ捏造問題、中国の経済脅威、自民党総裁選、団塊世代の定年…。さらに、幸せについて、文明についても考える。
  • 東京裁判〈上〉
    3.8
    1~2巻770~792円 (税込)
    ニュールンベルク国際軍事裁判とともに歴史上前例のない戦争犯罪人を裁く極東国際軍事裁判は、戦争に敗れた日本人に何を問うたか。昭和二十一年五月三日の開廷以来二年半余、三百七十回に及ぶ公判で「平和、人道、戦争に対する罪」の名のもとに、満州事変から太平洋戦争に至る“侵略”の事実を問い、七人の絞首刑を含む二十五人全員に有罪を宣した東京裁判の全容を、厖大な公判速記録、公刊資料、関係諸国・内外関係者の取材から解明する。
  • 会津落城 戊辰戦争最大の悲劇
    3.7
    慶應四年春、幕府軍は鳥羽伏見の戦いで敗れて瓦解した。江戸城無血開城を経て戦場は東北に移る。長岡での激戦、白河の攻防、日光口での戦い……、会津藩をはじめ奥羽越列藩同盟軍は各地で戦いつづけるが、薩長軍はついに国境を破り会津若松に突入、一カ月に及ぶ籠城戦がはじまる。なぜこれほどまで戦わねばならなかったのか。会津藩の危機管理、軍事・外交、人材育成を検証しつつ、戊辰戦争最大の悲劇を浮き彫りにする。
  • 百人一首 恋する宮廷
    3.8
    鎌倉時代初期、藤原定家によって編まれた「百人一首」は、カルタとしての普及もあって、私たちが最も親しんでいる和歌のアンソロジーである。時代ごとにさまざまな読まれ方を許容する奥深い世界は、現代においてもまた、今日ならではの社会環境や情報の上に立った読みを可能にするはずである。本書は、現代詩の第一人者が、海外の詩歌にも思いを馳せながら、百首について、豊かな読みの可能性を示すものである。
  • 入門!論理学
    3.8
    論理の本質に迫る、論理学という大河の最初の一滴を探る冒険の旅! あくまでも日常の言葉を素材にして、ユーモアあふれる軽快な文章で説き明かされていく。楽しみ、笑いながらも、著者とともに考えていく知的興奮。やがて、「考え、話し、書く」という実際の生活に生きている論理の仕組みが見えてくる。論理学ってなんだかむずかしそう、と思っているあなたにこそ、ぜひ読んでほしい「目からうろこ」の入門書。
  • 生命世界の非対称性 自然はなぜアンバランスが好きか
    4.3
    地球上の動物は、外観上、おおむね左右のバランスがとれているが、それをアミノ酸や核酸といった分子のレヴェルで見ると、そのバランスは完全に崩れているのである。このアンバランスは、身近なこととしては薬の効果や食物の味・香りの違いなどに現われ、一方、生命の起源や宇宙の非対称といった、より根元的な問題を解く鍵をも握っている。本書は、生命体だけが持つ、この非対称性が何に由来しているのかを探る壮大な試みである。
  • 中国義士伝 節義に殉ず
    4.0
    人士に求められる節義とは何だろうか。蘇武、顔真卿、文天祥は、それぞれ漢、唐、南宋にあって、過酷な運命に身を置きながら己の節を貫き通した。匈奴に捕らわれ、二十年間、服従を拒み続けた蘇武。安禄山の乱に際し義兵を挙げ、捕殺された顔真卿。モンゴルに追われた南宋の亡命政権を支えようとして抵抗するも、幽閉、処刑された文天祥。己の生きた時代の価値観に殉じ、ノブレス・オブリージュを体現した男たちの生き様とは。
  • マグダラのマリア エロスとアガペーの聖女
    3.9
    聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な〈娼婦=聖女〉が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。図像資料多数収載。
  • 続・発想法 KJ法の展開と応用
    3.6
    前著『発想法』で公開したKJ法の実技をさらに発展させ、加えて実例・応用例・図解等を豊富にとりいれた本書は、自己革新のために、会議運営の効率化のために、新製品開発のために、チームワークのために、あるいはカウンセリングにと、その効用は著しいものがある。情報化社会といわれる今日、ソフトウェアのなかのもっともソフトな部分をうけもつKJ法の効力が再確認されている。『発想法』との併読をとくにおすすめしたい。
  • ケネディ-「神話」と実像
    3.6
    一九六一年、四三歳で米大統領に就任し、三年後、凶弾に倒れたジョン・F.ケネディ。名家に生まれ、海軍士官、下・上院議員として活躍し、一気に頂点に登り詰めた彼は、理想を追い求めた政治家として「神話」化されている。だがその一方で、家族、宗教、女性、病魔といった問題に常に苛まれていた。本書は、虚弱だった成長期から繙き、米ソ冷戦下、政治家としてどのように時代と対峙し、生きようとしたか、その実像を描く。
  • イラク建国 「不可能な国家」の原点
    4.3
    サッダーム・フセインを放逐し、イラクに救済者として降り立ったアメリカは、民主主義という福音がこれほど無力とは思っていなかったろう。なぜ戦後復興は泥沼に陥ったのか。宗派や民族の対立、いびつな国土という混乱の種は、イラク誕生時すでに蒔かれていた。一九二一年、暴発した排外運動を封じ込めようと、苦肉の民政移管でこの人工国家を生み出したガートルード・ベルの苦悩を軸に、イラクが背負う困難を照らし出す。
  • 日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ
    4.4
    独特の官僚内閣制のもと、政治家が大胆な指導力を発揮できず、大統領制の導入さえ主張されてきた戦後日本政治。しかし一九九〇年代以降の一連の改革は、首相に対してアメリカ大統領以上の権能を与えるなど、日本国憲法が意図した議院内閣制に変えた。本書は、国会、内閣、首相、政治家、官僚制、政党など議院内閣制の基盤を通し、その歴史的・国際的比較から、日本という国家の統治システムを明らかにするものである。
  • アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界
    4.3
    政府による市場の規制を撤廃し、競争を促進することによって経済成長率を高め、豊かで強い国を作るべきだ-「経済学の祖」アダム・スミスの『国富論』は、このようなメッセージをもつと理解されてきた。しかし、スミスは無条件にそう考えたのだろうか。本書はスミスのもうひとつの著作『道徳感情論』に示された人間観と社会観を通して『国富論』を読み直し、社会の秩序と繁栄に関するひとつの思想体系として再構築する。
  • 丸山眞男の時代 大学・知識人・ジャーナリズム
    3.8
    戦後の市民による政治参加に圧倒的な支配力を及ぼした丸山眞男。そのカリスマ的な存在感の背景には、意外なことに、戦前、東大法学部の助手時代に体験した、右翼によるヒステリックな恫喝というトラウマがあった。本書は、六〇年安保を思想的に指導したものの、六〇年後半には学生から背を向けられる栄光と挫折の遍歴をたどり、丸山がその後のアカデミズムとジャーナリズムに与えた影響を検証する。
  • 物語 数学の歴史 正しさへの挑戦
    3.8
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 古代バビロニアで粘土板に二次方程式の解法が刻まれてから四千年、多くの人々の情熱と天才、努力と葛藤によって、人類は壮大な数学の世界を見出した。通約不可能性、円周率、微積分、非ユークリッド幾何、集合論-それぞれの発見やパラダイムシフトは、数学史全体の中でどのような意味を持ち、どのような発展をもたらしたのか。歴史の大きなうねりを一望しつつ、和算の成果や19世紀以降の展開についても充実させた数学史決定版。
  • 戦後世界経済史 自由と平等の視点から
    4.0
    第二次大戦後の世界は、かつてない急激な変化を経験した。この六〇年を考える際、民主制と市場経済が重要なキーワードとなることは誰もが認めるところであろう。本書では、「市場化」を軸にこの半世紀を概観する。経済の政治化、グローバリゼーションの進行、所得分配の変容、世界的な統治機構の関与、そして「自由」と「平等」の相剋-市場システムがもたらした歴史的変化の本質とは何かを明らかにする。
  • カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩
    3.8
    文明開化、関東大震災、空襲、高度成長…建設と破壊が何度も繰り返された東京だが、思わぬところに過去の記憶が残っている。日比谷公園の岩に刻まれた「不」の記号、神田三崎町に残る六叉路、明大前駅の陸橋下の謎のスペース、一列に並ぶ住宅など、興味深い構造物、地形を紹介し、その来歴を解説する。カラーで掲載した新旧の地図を見比べ、現地を歩いて発見すれば、土地の記憶が語りかけてくるだろう。
  • 能力構築競争 日本の自動車産業はなぜ強いのか
    3.9
    日本の自動車産業は、製品の品質、世界市場でのシェアなど現在も世界トップレベルにある。またカンバン方式、TQCなど日本発の生産システムが「グローバルスタンダード」となっている。これほど国際競争力があるのはなぜなのか。その強さの秘密に、企業が生産・開発現場で総合的な実力を競いあう「能力構築競争」という観点から迫り、長期不況下にあって自信喪失に陥っている日本企業の再生に向け、明確な指針を提示する。
  • 安田講堂1968-1969
    3.6
    一九六九年一月、全共闘と機動隊との間で東大安田講堂の攻防戦が繰り広げられた。その記憶はいまもなお鮮烈である。青年たちはなぜ戦ったのだろうか。必至の敗北とその後の人生における不利益を覚悟して、なぜ彼らは最後まで安田講堂に留まったのか。何を求め、伝え、残そうとしたのか。本書は「本郷学生隊長」として安田講堂に立てこもった当事者によって、三七年を経て、はじめて語られる証言である。
  • 太平記 鎮魂と救済の史書
    4.0
    足利尊氏や新田義貞、楠木正成ら名だたる部将が活躍する『太平記』。しかしこの名高い戦記物がめざしたのは、英雄譚と言うよりも、南北朝動乱を生きた、名もなき人々への鎮魂と救済ではなかったか。怨霊の跋扈する、不条理にも見える物語世界が内包する『太平記』の精神とは。また、登場人物たちの体現する儒教的道義論や因果応報論が担ったものとは何なのか。単なる戦記物の枠を超えた『太平記』の世界への招待。
  • こころの作法 生への構え、死への構え
    4.0
    こころが定まらない――。こうした思いを抱きながら、わたしたちは日々を送っている。日本人のこころに衰えが兆しているのではないか。他者と共感する力。人間の背後に隠されている〈崇高さ〉あるいは〈凶悪さ〉への感受性。死に対する態度。定まらぬこころがこれらを不確かなものとしている。本書は、長年日本人のこころを見つめ思いを巡らせてきた著者による、揺るぎないこころを持つためのレッスンなのである。
  • 民俗学の熱き日々 柳田国男とその後継者たち
    3.5
    柳田国男は、歿後四〇年を過ぎても、いまだに日本の学問・思想界に絶大な影響力を保っている。しかし、彼が独力で開拓したと言っても過言ではない民俗学は、その後、独創的な継承者を得られず、彼一代の学問として燦然と輝いているのである。本書は、民俗学の黎明期にあった柳田の詩的な精神が、民俗学者ではなく、むしろ異分野の研究者、思想家、作家などに受け継がれていった経過を、丹念に追跡する試みである。
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史
    4.3
    高い学歴を求める風潮と、それを可能にした豊かさに支えられ、戦後日本の教育は飛躍的な拡大をとげた。一方で、受験競争や学歴信仰への批判も根強くあるが、成績による序列化を忌避し、それこそが教育をゆがめる元凶だとして嫌う心情は、他国においてはユニークであるとみなされている。本書は、このような日本の教育の捉え方が生まれた経緯を探り、欧米との比較もまじえ、教育が社会の形成にどのような影響を与えたかを分析する。
  • 自然再生 持続可能な生態系のために
    4.0
    二十世紀後半、人類は多量の資源を消費し、廃棄物を自然界にまき散らすライフスタイルをエスカレートさせた。そのため自然の多様性は失われ、固有種の絶滅、異常気象の発生など、多大な影響が地球規模で発生している。環境を改変する力を持つ唯一の生物であるヒトは、今こそ、持続可能な生態系を再生させるために叡智を結集しなければならない。里山再生や淡水生態系の復活など、自然再生の思想と方法をやさしく解説する。
  • 医学の歴史
    3.5
    医学は人類の歴史とともに古い。呪術にたよっていた古代人の薬草発見を医学のあけぼのとすれば、ヨーロッパにおける大学の誕生と人体解剖こそ近代医学の第一歩である。東洋医学の伝統をうけついできた日本の医学はまた、蘭学の伝来によって急速に近代医学へと発展した。本書は、日本の医学の歩みを東洋と西洋との接点としてとらえながら、異なる人命観によって独自の道を進んだ東洋医学と西洋医学の歴史を説く。毎日出版文化賞受賞。
  • 男性の育児休業 社員のニーズ、会社のメリット
    3.8
    多くの企業では男性社員が子育てに携わることを想定してこなかった。しかし、結婚・出産後も仕事を継続する女性が増えた現在、男性も子育てに関わりたいと希望し、従来型の雇用や処遇の仕組みは新たなストレスを生む要因ともなっている。本書は、少子化対策としてのみ論じられがちな男性の育児休業を、社員が勤労意欲を高水準で維持し、能力を最大限に発揮するための選択肢の一つとして捉え、取得促進への具体案を提示する。
  • 心の起源 生物学からの挑戦
    4.3
    心はどのようにして誕生したのか。この難問を解くキーワードは「記憶」。記憶を持つことで過去と現在の照合が可能となり、それまで瞬間のみを生きてきた生物が時間と空間を獲得した、と著者は仮説を立てる。さらには快・不快という原初の感情が芽生え、物事の因果関係を把握することで、本能によらず自らの意志で行動する自由を得た――。これまで人文科学の領域とされてきた「心」に、生物学の観点からアプローチを試みる。
  • ОDA(政府開発援助) 日本に何ができるか
    3.5
    ODA(政府開発援助)は、日本の対外援助の主力として、一九九三年以降世界最大規模の支出額を誇ったが、国民の不信と批判にさらされ、大幅な削減を余儀なくされている。一方、欧米諸国は同時多発テロ以降、貧困をなくす手段としてむしろODAを重視する傾向にある。開発途上国側の課題が多様化したいま、ODAはどうあるべきか。現状と課題を平易に解説しながら、日本が国際社会のなかで果たすべき役割を考察する。
  • アジア政治を見る眼 開発独裁から市民社会へ
    3.7
    二〇世紀後半のアジア諸国の政治を眺めると、七〇年代に始まる開発独裁の時代と、民主化運動の爆発や民主的政権交替が起こった八〇、九〇年代との対照が際立つ。なぜ、アジアに開発独裁政権が生まれ、その多くが八〇年代後半以降に終焉を迎えたのか。「市民」はどのような役割を果たしてきたのか。韓国、台湾、インドネシア、マレーシア、シンガポールの政治と社会の構造的変容を概観し、アジア政治の今後を展望する。
  • 物語 スペインの歴史 人物篇 エル・シドからガウディまで
    3.6
    国土回復のイスラム掃討戦で勇名を馳せた伝説の騎士エル・シド、皇帝カルロスの生母ながら幽閉の半世紀をすごした悲劇の女王フアナ、新大陸支配における同胞の悪行を告発した修道士ラス・カサス、不朽の名作『ドン・キホーテ』の著者セルバンテス、数多の傑作を描き残した宮廷画家ゴヤ、そして未完の聖堂サグラダ・ファミリアの建築家ガウディ。時代や出身地、活躍した分野もさまざまな六人の生涯を通して千年の歴史を描く。
  • 漱石が聴いたベートーヴェン 音楽に魅せられた文豪たち
    4.0
    ドイツ留学中にオペラの世界に魅了された森鴎外は帰国後、日本での歌劇上演を夢み、幸田露伴は最初期の女流音楽家を妹に持っていた。夏目漱石はヴァイオリンを弾く弟子寺田寅彦に誘われて奏楽堂通いをし、永井荷風はニューヨークやパリで劇場三昧の日々……。本書は、怒濤のように流入する西洋文明・西洋文化と格闘した明治期の文学者たちが、クラシック音楽にどのようにかかわったかをいきいきと描くものである。
  • アメリカの大学院で成功する方法 留学準備から就職まで
    3.9
    これからアメリカの大学院に留学を考えている方々に、具体的なヒントを与えることが本書の目的である。アメリカの大学院はどんなところで、学生には何が期待されているのか。体系化・専門化が進んでいるアメリカの大学の仕組みをふまえ、「プロ養成機関」としての大学院を最大限に活用するための手段と心構えを説く。ブラウン大学に学び、ハワイ大学に職を得た著者による、実践的・現実的な留学成功のためのガイダンス。

最近チェックした本