小説 - 志水辰夫作品一覧

  • いまひとたびの(新潮文庫)
    3.7
    ドライブに連れていって。赤いスポーツカーで――。夫を失った事故ののち、車椅子の生活を送ってきた叔母は若い娘のようにそう言った。やがてわたしは、彼女が秘めていた思いに気づく(表題作)。大切な人と共にした特別な一日。その風景は死を意識したとき、さらに輝きを増してゆく。人生の光芒を切ないほど鮮やかに描きあげ、絶賛を浴びた傑作短編集に、新たに「今日の別れ」を加えた完全版。(解説・北上次郎)
  • 飢えて狼
    3.7
    ささやかだが平穏な暮らしが、その日、失われた。怪しい男たちが訪れた時刻から。三浦半島で小さなボート屋を経営していた渋谷は、海上で不審な船に襲われたうえ、店と従業員を炎の中に失う。かつて日本有数の登山家として知られた渋谷は、自らの能力のすべてを投じ、真実を掴むための孤独な闘いを開始する。牙を剥き出し襲いかかる「国家」に、個人はどう抗うことが出来るのか。
  • 狼でもなく
    値引きあり
    3.0
    東京近郊にある共同農場の農場長・尾関譲に、ベトナム人ロアンから電話があった。ウォーリスに狙われているので助けてほしい、という。ベトナム戦争当時、三人はCIAの現地工作員として知り合った。尾関は、指定された都心のホテルに向かった―。何かを忘れ、何かをそらして生きてきたこの十年間を振り返りながら。過去を忘却の淵に沈めてきた男が、今再び過酷で非情な世界に舞い戻る。本格ハードボイルド。
  • オンリィ・イエスタデイ
    3.0
    雨の海辺で、何者かに追われる人妻を救った池内峻介は、彼女を自宅にかくまう。彼女の夫は、重大秘密を握って逃亡中。そのため彼女も、或る勢力の追及をうけているらしい。そして池内の周辺にも、敵方の手が……。意外な伏線を秘めて、事件は目まぐるしく動く! 男の特質を鮮烈巧緻に描く冒険小説。追われる女が握る秘密とは? 男の愛と闘い!
  • 帰りなん、いざ
    3.0
    自称・翻訳家の稲葉が、2年契約で借りた民家は、美しい山里の奥にあった。東京の地上げ屋の魔手が伸びる中で、村人たちの他所者(よそもの)に対する目は厳しい。謎めく稲葉の存在も、彼らには目ざわりのはずだ。やがて稲葉も巻き込み、奇妙な事件が続発する! 恋と冒険の物語を見事な文体で描き、鮮烈な感動を呼ぶ傑作長編。美しい山里が招く冒険と恋!
  • きのうの空
    4.0
    見上げた空は果てしなく高かった。都会での華やかな暮らし、想い続けている人の横顔が、ふわり浮かんだ。だが、この地にしがみつき、一日一日をひたすらに積み重ねなければ、生きてゆけなかった。わたしの帰りを家族が待っていた。親やきょうだいは、ときに疎ましくときには重く、ただ間違いなく、私をささえていた。名匠が自らを注ぎこみ、磨き続けた十色の珠玉。柴田錬三郎賞受賞作。

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  • 裂けて海峡
    3.3
    海峡で消息を絶ったのは、弟に船長を任せた船だった。乗組員は全て死亡したと聞く。遭難の原因は不明。遺族を弔問するため旅に出た長尾の視界に、男たちの影がちらつき始める。やがて彼は愛する女と共にある陰謀に飲み込まれてゆくのだった。歳月を費やしようやく向かいあえた男女を、圧し潰そうとする“国家”。運命の夜、閃光が海を裂き、人びとの横顔をくっきりと照らし出す。
  • 深夜ふたたび
    値引きあり
    4.0
    かつてベトナムの逃亡米兵を国外脱出させた川久保は、極秘依頼を受けた。新型レーダーの機密データを持つ元自衛官を、潜伏先の京都から根室を経て、ソ連に渡してほしいというのだ。警察と謎の一団による追撃を振り切って、一路、北上をつづけた川久保と男だったが、函館到着と同時に、逃亡計画は中止された。なぜだ。二転三転する敵と味方。罠と裏切りの荒野に、男の孤絶の闘いがつづく。圧倒の冒険長篇。
  • 情事
    3.2
    若い女性と燃えあがるような情交を愉しむ。妻の体の奥底まで追求する。男は会社を退き、都市と故郷を往復する気ままな暮しをおくっていた。或る日、河内亜紀と出会う。どこか謎めく女。その躯に惹かれ、逢瀬を重ねた。自宅には、ビジネスの世界で活躍する妻・治子が待つ。彼女も、夫に応じ、開かれてゆく。田園と都会、愛人と妻の間を揺れ動く日々。そして、一片の疑惑。渾身の長編小説。
  • 背いて故郷
    3.3
    第六協洋丸、仮想敵国の領海に接近するためのスパイ船。柏木はその仕事を好まず、親友・成瀬に船長の座を譲った。だが成瀬は当直中に殺されてしまう。撮影済みのフィルムを奪われて。禁忌に触れてしまったとでもいうのか? 柏木は北の大地を餓狼の如き切実さで駆けめぐった。ただ真相に迫りたかったのだ。彼の前に立ちはだかるのは〈国家〉、そして――。日本推理作家協会賞受賞作。
  • 尋ねて雪か
    -
    雪の札幌。佐古田史朗はゴルフ場で盗まれたという数億にのぼる税金逃れの通帳を取り戻す仕事を依頼され、犯人のマンションに侵入。ところが、すでに部屋は荒され、殺害された死体が…。錯綜する過去の愛と憎悪。哀切な長篇ハードボイルド。

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  • 散る花もあり
    4.0
    水産会社のフィリピン進出の尖兵となった越智は、現地で政治トラブルに巻きこまれ、危うく日本に舞い戻る。醜悪な現実に背を向け、故郷で屏息する彼のもとへ、ある日、刑事が訪れた。フィリピンで越智を救った青年ヒラリオが、ゲリラとしての密命をおび、日本に潜入したという。青年を助けねばと、越智は立ち上がった! 冒険小説の白眉。フィリピンでの恩人を案じて再起した男の死闘。男の友情が燃える鮮烈な長編。
  • 花ならアザミ
    4.0
    湯原直子がある邸から持ち帰った稀覯本(きこうぼん)は、直子の勤める古書店の客・磯部の蔵書から消えた品だった。驚いた直子がその邸を再訪すると、もぬけの殻。住人も家具も花壇もすべて、1日だけのトリックだった。誰が、何のために? 1冊の古書の謎が、やがて過去の惨劇を明るみに出す。練達の筆で描く出色サスペンス。
  • 負け犬
    -
    生き急ぎ、駆け抜けてきた。そんな風にしか生きられなかった人生を振り返ったとき、確かめずにいられない「過去」が浮かび上がる。死んだ友、別れた女、振り切るようにして捨ててきた故郷。今も胸に残る思い出を頼りに、再び訪ねゆく先は……。著者の心情が最も強く投影された、抒情豊かな8編の作品集。捨てたはずの過去、胸に迫る短編集。
  • 負けくらべ
    3.9
    1巻1,980円 (税込)
    伝説のハードボイルド作家、渾身の現代長編。 初老の介護士・三谷孝は、対人関係能力、調整力、空間認識力、記憶力に極めて秀でており、誰もが匙を投げた認知症患者の心を次々と開いてきた。ギフテッドであり、、内閣情報調査室に協力する顔を持つ三谷に惹かれたのが、ハーバード大卒のIT起業家・大河内牟禮で、二人の交流が始まる。大河内が経営するベンチャー企業は、牟禮の母・尾上鈴子がオーナーを務める東輝グループの傘下にある。尾上一族との軛を断ち切り、グローバル企業を立ち上げたい牟禮の前に、莫大な富を持ち90歳をこえてなお采配をふるう鈴子が立ちはだかる。牟禮をサポートする三谷も、金と欲に塗れた人間たちの抗争に巻き込まれてゆく。それぞれの戦いの結末は!? ギフテッドの介護士は、徹頭徹尾、人の心に寄り添える。
  • 行きずりの街
    3.4
    16年の時を経て大ブレイクした、1991年度「このミステリーがすごい!」第1位作品。雅子はわたしのすべてだった。自分の一生を賭けた恋愛だった――。それを、教師と教え子という関係にのみ焦点をあて、スキャンダルに仕立て上げられて、わたしは学園と東京から追い払われた。退職後、郷里で塾講師をしていたわたしは、失踪した教え子を捜しに12年ぶりに東京へ足を踏み入れた。やがて自分を追放した学園がこの事件に関係しているという事実を知り……。事件とともに、あの悪夢のような過去を清算すべき時が来たのか――ミステリー史に残る大傑作。

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  • 夜の分水嶺
    3.3
    元警部補の青野は仕事先でトラブルに巻き込まれ、殺人容疑者として追われる羽目に。逃げ込んだ軽井沢の山荘で、秘密機関と闘争中の男から、彼の妹を脱出させるよう頼まれた。二人の未来は? 逃げろ! 地の果てまで。世界は恋人たちの為にある。

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  • ラストラン
    値引きあり
    -
    封印されていた初期短編集。手配中の恋人を待つ女、未解決殺人事件の容疑者を追い続ける老刑事など、非情かつ哀切な世界。 幻の初期作品集!ミステリ、恋愛ホラーなど多彩な物語!容疑者を追い続ける老刑事、胸を打つ10の物語。

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