あらすじ
〈私〉の意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会した〈私〉は、回路の秘密を聞いて愕然とする。私の知らない内に世界は始まり、知らない内に終わろうとしているのだ。残された時間はわずか。〈私〉の行く先は永遠の生か、それとも死か? そして又、〔世界の終り〕の街から〈僕〉は脱出できるのか? 同時進行する二つの物語を結ぶ、意外な結末。村上春樹のメッセージが、君に届くか!?
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Posted by ブクログ
村上春樹の作品を初めて読んだ。
前から興味はあったが、好き嫌いが分かれるという声を聞いたのと、なんとなくハードルが高いイメージがありなかなか手が出せないでいたが、意を決して読んでみた。結果、なぜ今まで読まなかったんだと思うくらいとてもよかった。
「世界の終わり」と「ハードボイルドワンダーランド」の話が交互に語られていく形式だが、全く異なる二つの世界の関係が途中で明らかになる。
思考回路のジャンクションの切り替えの話が斬新でとても面白かった。
ハードボイルドワンダーランド(現実世界)で主人公は老博士から第三回路(世界の終わり)に閉じ込められて永遠にそこから出られなくなる(=現実世界での事実上の死)ことを教えられる。それと並行して世界の終わりでは影が日に日に弱っていく。主人公は影と一緒に世界の終わりを抜け出すか、世界の終わりにとどまるかという選択を迫られる。
結局第三回路の主人公は自分は世界の終わりに残り、影を世界の終わりの外へ逃がして生かす道を選択した。この「自分は残る」というのは、現実世界で自分の意思に反して外部から強制的に与えられた「事実上の死」というやるせない状況に対して、自分を納得させるために自身で選択した結果なのだと再定義する意味づけのような選択として描かれている。そして印象的なのは、影を殺さないことに決めたところである。影は生きるうえでのノイズや煩わしい感情として描かれているが、筆者にとってはそういう煩わしく面倒くさい感情が生きる意味なのだと感じた。影は結局ハードボイルドワンダーランドへ逃げたのか?逃げた後どうなったのか?他の人の意識として生きていくのか?など気になった。
また、心情の描写も素晴らしいと思った。物語終盤の主人公の現実世界の終わりが近づいたときの描写がとても心に響いた。「感情のうねり」という表現が本当に的確だし、それを涙もでないままやりすごす苦しさが手に取るように感じられた。
また随所に見られる比喩表現も、独特でとても面白かった。意味ありげな描写やキーワードが沢山出てくるが、ほとんどが明確な意味が明かされることはなく、解釈が読者に委ねられている部分が多いところも魅力的だと思った。(もしかしたら特に意味がないものもあるかもしれない)こういうところは他のメディアではなく小説ならではの魅力だと思うが、本作にはそれがつめこまれており、読書の楽しさを感じられた。
ただ、舞台も見に行ったが、そちらはそちらで舞台ならではの演出がとても素晴らしかった。バレエでの表現が独特の世界観を作り上げていたし、藤原竜也の演技力と存在感がさすがという感じで、とても感動した。
これから村上春樹の作品を読み漁ろうと思う。
Posted by ブクログ
面白かったとも言えるし、そうでもなかったとも言える。でも下巻は没頭した。
起こる現実の出来事を俯瞰的に捉え続けてて良かった。俺も7針縫う怪我をしても達観した思想を持ちたい。
Posted by ブクログ
・1985年に本作は書かれた。まだWebサイト等の我々が慣れ親しむインターネットはない時代だ。たぶん今、私が読後感じたことと、発売当時の読者の読後感は全く異なるだろう。
・心と死がテーマなのだろうか。後、社会批判のようなものも感じた。
・結末が驚きだった。なんだかんだ村上春樹は文学なんだなぁ。まさか「俺」が世界の終わりの街に残ることになるとは思わなかった。期間を開けてダラダラ読んでしまったせいで、何故、最後の最後であのような決断をしたのか、上手く理解できなかった。