あらすじ
信長に奪われた貴宝と謎の集団の数奇な運命――松永久秀と三好勢の抗争が激化する中、東大寺の大仏が焼き討ちされ、その後、信長に正倉院の秘宝を奪われる。二度の悲劇に、東大寺の薬師院院主・実祐(じつゆう)は、古(いにしえ)より正倉院の警護を司る呪術集団「遊部(アソベ)」に、秘宝奪還の命を下す。戦乱の世を舞台に、欲望に憑かれた人々の抗争と異形の愛を描く、空前絶後の傑作伝奇長編。<上下巻>
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松永弾正久秀と三好勢の戦で東大寺の大仏殿が消失するところから物語はスタート。
その後織田信長が正倉院を強引に開けさせ、蘭奢待を切り取らせ、さらに分割してばらまいた。怒りを覚えた東大寺の実祐は、古来からひそかに正倉院を護ってきた遊部にその回収を命じる。
一方、信長とともに正倉院に押し入った商人で茶人でもある津田宗及は、その宝物にほれ込み、なんとか入手できないかと目論み、信長に反旗を翻して征伐された松永久秀の家人だった村上新佐に宝物の奪取を頼む。新佐は宗及の妾を寝取る。
前の関白行空は、信長に滅ぼされた美濃の斎藤氏の家臣の娘お通を預かっていて、東宮の妃の侍女にするが、お通は信長の嫡男信忠と恋に落ちて子を身籠る。東宮は信長の振る舞いに怒りを感じている。
遊部のふたり、オトとスガルは京都所司代の村井春長軒のもとへ送り込まれる。
織田信長の専横ぶりが激しくなっていく中、津田宗及は明智光秀と会い、その鬱屈を感じさせられる・・・。
上巻の物語はここまで。
明智光秀の繊細さとそれゆえの鬱屈ぶりの表現が印象に残った。
また、織田信長が蘭奢待を強引に切り取ったのは、それが欲しかったゆえではなく、「それができる」ことを世に示したかったからで、手に入ったらあとの扱いがぞんざいになることでうまく表現しているなと思った。
本能寺の変が近づいてきている。
下巻でどうなるか楽しみ。